年齢を重ねるにつれて、
「首や腰が痛い」
「動かすと違和感がある」
といった症状を感じる方は少なくありません。
その原因のひとつとしてよく耳にするのが
「変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)」
です。
この病気の名前を聞くと、
「骨が変形した」
「もう治らないのでは」
と不安になる方も多いでしょう。
しかし、変形性脊椎症は
誰にでも起こりうる“加齢現象”のひとつ
であり、適切に理解し、上手に向き合うことが大切です。
今回は、頸椎(けいつい)や腰椎(ようつい)を中心に、
その仕組みや症状、対処法をわかりやすく解説します。

人の背骨は「脊椎(せきつい)」と呼ばれ、
頭のつけ根から骨盤までを縦に支える大切な構造です。
脊椎は、いくつもの小さな骨(椎骨)が積み重なってできています。
上から順に、
「頸椎」
「胸椎」
「腰椎」
「仙椎」
「尾椎」
という部分に分かれています。
それぞれの椎骨の間には
「椎間板(ついかんばん)」
と呼ばれるクッションのような組織があり、
体をしなやかに動かす役割を果たしています。
「変形性脊椎症」とは、その名の通り、
脊椎の骨や椎間板が加齢や負担によって変形してしまう状態
のことを指します。
この「脊椎の変形」は、首(頸椎)、胸(胸椎)、腰(腰椎)
のどの部位にも起こりえます。
つまり、「変形性脊椎症」という言葉は総称であり、
発生する場所によって呼び方が変わります。
このように、
「頸椎症」
「腰椎症」
といった言葉は、変形性脊椎症の一種として理解できます。

変形性脊椎症でよく見られるのが、「骨棘(こつきょく)」という現象です。
レントゲン写真で、骨の端がトゲのように飛び出して見えることがあります。
これを見て
「このトゲが神経を刺して痛みを起こしているのでは?」
と心配される方が多いのですが、
実際には、骨棘そのものが痛みの直接原因とは限りません。
骨棘は、長年にわたる姿勢のクセや加齢による負担で、
骨が自らを守ろうとして増殖した結果です。
つまり、
「体が修復しようとしてできた変化」
でもあります。
レントゲンで骨棘が見つかったとしても、
それはこれまでの負担の記録であり、今の痛みの原因ではないことが多いのです。
脊椎の間には、衝撃を吸収するための椎間板があります。
この椎間板は、年齢とともに水分量が減り、弾力を失っていきます。
するとクッション性が低下し、**椎間板がつぶれて薄くなる(狭小化)**ことがあります。
この状態が長く続くと、骨と骨の間隔が狭くなり、骨棘などの変形を引き起こします。
ただし、椎間板の変化も「老化の一部」であり、誰にでも起こる自然な現象です。
レントゲンで変形が確認されたとしても、
必ずしも強い痛みを伴うわけではない
という点を理解しておきましょう。

腰や首の痛みを感じると、多くの方は
「レントゲンで変形があるから痛いのだ」
と考えがちです。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
医療の現場では、
**腰痛の約85%は原因が特定できない「非特異的腰痛」**
に分類されます。
つまり、レントゲンで見える骨の変形や
骨棘が痛みの直接の原因ではないことが多いのです。
では、何が痛みを引き起こしているのでしょうか?
実際には、筋肉のこわばりや血流の滞り、姿勢の歪み、
ストレスなどが複合的に関係していると考えられています。
■ よく合併する病気
変形性脊椎症が進行すると、次のような疾患を併発することがあります。
これらの病気になると、単なる腰痛だけでなく、歩行時のしびれや
足の力の入りにくさなどが現れることがあります。
症状が強い場合は、整形外科での精密検査(MRIなど)を受けることが大切です。
変形性脊椎症の治療は、ほとんどの場合「保存的治療」が中心です。
手術が必要になることは稀で、痛みをやわらげ、
体の動きを保つことを目的に治療が行われます。
リハビリは、痛みの軽減と再発防止のための基本的な治療です。
内容としては次のような方法があります。
これらの治療を継続することで、腰や首への負担が減り、痛みの再発を防ぐことができます。
変形性脊椎症と上手に付き合うためには、日常生活の工夫が欠かせません。
体の使い方を少し見直すだけでも、腰や首への負担は大きく減らせます。
「変形性脊椎症」と診断されると、
どうしても不安に感じてしまうかもしれません。
しかし、レントゲンで見える“骨の変化”は、
長年頑張ってきた体の「年輪」のようなもの。
それ自体が痛みを起こすとは限らず、多くの場合はリハビリや
生活習慣の改善で十分にコントロールできます。
もし痛みやしびれが強い場合でも、焦らずに専門医に相談し、
自分の体と丁寧に向き合っていきましょう。
「変形」とうまく共存しながら、
快適に動ける体を保つことが大切です。