変形性脊椎症の話


年齢を重ねるにつれて、

「首や腰が痛い」
「動かすと違和感がある」

といった症状を感じる方は少なくありません。
その原因のひとつとしてよく耳にするのが

変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)


です。

この病気の名前を聞くと、

「骨が変形した」
「もう治らないのでは」

と不安になる方も多いでしょう。

しかし、変形性脊椎症は

誰にでも起こりうる“加齢現象”のひとつ

であり、適切に理解し、上手に向き合うことが大切です。

今回は、頸椎(けいつい)や腰椎(ようつい)を中心に、
その仕組みや症状、対処法をわかりやすく解説します。

■ 脊椎とは? まずは体の仕組みを知ろう

■ 脊椎とは? まずは体の仕組みを知ろう

人の背骨は脊椎(せきつい)と呼ばれ、
頭のつけ根から骨盤までを縦に支える大切な構造です。

脊椎は、いくつもの小さな骨椎骨が積み重なってできています。
上から順に、

「頸椎」
「胸椎」
「腰椎」

「仙椎」
「尾椎」

という部分に分かれています。

  • 頸椎(けいつい):首の骨(7個)
  • 胸椎(きょうつい):背中の骨(12個)
  • 腰椎(ようつい):腰の骨(5個)

それぞれの椎骨の間には

椎間板(ついかんばん)

と呼ばれるクッションのような組織があり、

体をしなやかに動かす役割を果たしています。

■ 変形性脊椎症とは?

「変形性脊椎症」とは、その名の通り、

脊椎の骨や椎間板が加齢や負担によって変形してしまう状態

のことを指します。

この「脊椎の変形」は、首(頸椎)、胸(胸椎)、腰(腰椎)
のどの部位にも起こりえます。

つまり、「変形性脊椎症」という言葉は総称であり、
発生する場所によって呼び方が変わります。

  • 頸椎 → 変形性頸椎症(けいついしょう)
  • 胸椎 → 変形性胸椎症(きょうついしょう)
  • 腰椎 → 変形性腰椎症(ようついしょう)

このように、

「頸椎症」
「腰椎症」


といった言葉は、変形性脊椎症の一種として理解できます。

■ 骨棘(こつきょく)とは? ― 骨の“とげ”の正体

■ 骨棘(こつきょく)とは? ― 骨の“とげ”の正体

変形性脊椎症でよく見られるのが、骨棘(こつきょく)という現象です。
レントゲン写真で、骨の端がトゲのように飛び出して見えることがあります。
これを見て

「このトゲが神経を刺して痛みを起こしているのでは?」

と心配される方が多いのですが、
実際には、骨棘そのものが痛みの直接原因とは限りません。

骨棘は、長年にわたる姿勢のクセや加齢による負担で、
骨が自らを守ろうとして増殖した結果です。

つまり、

「体が修復しようとしてできた変化」


でもあります。

レントゲンで骨棘が見つかったとしても、
それはこれまでの負担の記録であり、今の痛みの原因ではないことが多いのです。

■ 椎間板の変化 ― “背骨のクッション”がすり減る

脊椎の間には、衝撃を吸収するための椎間板があります。

この椎間板は、年齢とともに水分量が減り、弾力を失っていきます。
するとクッション性が低下し、**椎間板がつぶれて薄くなる(狭小化)**ことがあります。
この状態が長く続くと、骨と骨の間隔が狭くなり、骨棘などの変形を引き起こします。

ただし、椎間板の変化も「老化の一部」であり、誰にでも起こる自然な現象です。
レントゲンで変形が確認されたとしても、

必ずしも強い痛みを伴うわけではない


という点を理解しておきましょう。

■ 「今の痛み」はどこから来ているの?

■ 「今の痛み」はどこから来ているの?

腰や首の痛みを感じると、多くの方は

「レントゲンで変形があるから痛いのだ」

と考えがちです。
しかし、実際にはそう単純ではありません。

医療の現場では、

**腰痛の約85%は原因が特定できない「非特異的腰痛」**

に分類されます。

つまり、レントゲンで見える骨の変形や
骨棘が痛みの直接の原因ではないことが多いのです。

では、何が痛みを引き起こしているのでしょうか?

実際には、筋肉のこわばりや血流の滞り、姿勢の歪み、
ストレスなどが複合的に関係していると考えられています。

■ よく合併する病気

変形性脊椎症が進行すると、次のような疾患を併発することがあります。

  • 腰部脊柱管狭窄症:神経の通り道が狭くなり、脚のしびれや痛みを伴う。
  • 腰椎すべり症:腰の骨が前後にずれて神経を圧迫する。
  • 腰椎変形側弯症:背骨が左右に曲がり、姿勢のバランスが崩れる。

これらの病気になると、単なる腰痛だけでなく、歩行時のしびれや
足の力の入りにくさなどが現れることがあります。
症状が強い場合は、整形外科での精密検査(MRIなど)を受けることが大切です。

■ 変形性脊椎症の治療法

変形性脊椎症の治療は、ほとんどの場合保存的治療が中心です。

手術が必要になることは稀で、痛みをやわらげ、
体の動きを保つことを目的に治療が行われます。

● リハビリテーション

リハビリは、痛みの軽減と再発防止のための基本的な治療です。
内容としては次のような方法があります。

  • ホットパック:温めて血流を改善し、筋肉の緊張をやわらげます。
  • 低周波治療:電気刺激で筋肉を動かし、痛みを軽減します。
  • 温熱療法:深部を温めて代謝を促進し、回復をサポート。
  • 腰痛体操:腹筋・背筋をバランスよく鍛え、姿勢を整えます。

これらの治療を継続することで、腰や首への負担が減り、痛みの再発を防ぐことができます。

■ 日常生活で気をつけたいこと

変形性脊椎症と上手に付き合うためには、日常生活の工夫が欠かせません。

  • 長時間同じ姿勢を続けない
  • 重い荷物を持つときは腰をひねらない
  • 適度に運動(ウォーキングやストレッチ)を取り入れる
  • 冷えを防ぐ(特に腰まわりを温める)
  • 正しい姿勢を意識する(猫背や反り腰に注意)

体の使い方を少し見直すだけでも、腰や首への負担は大きく減らせます。

■ まとめ:変形=すぐに痛みではない

「変形性脊椎症」と診断されると、
どうしても不安に感じてしまうかもしれません。

しかし、レントゲンで見える“骨の変化”は、
長年頑張ってきた体の「年輪」のようなもの。

それ自体が痛みを起こすとは限らず、多くの場合はリハビリや
生活習慣の改善で十分にコントロールできます。

もし痛みやしびれが強い場合でも、焦らずに専門医に相談し、
自分の体と丁寧に向き合っていきましょう。

「変形」とうまく共存しながら、
快適に動ける体を保つことが大切です。