「がん」が暴れ出す理由3つ:癌細胞が眠りから覚めて急に成長し、全身に転移するメカニズムを紹介

一度落ち着いていた「がん」が、あるとき突然大きくなったり、別の場所に転移したりすることがあります。しばらくは静かにしていたのに、まるで眠りから覚めたように“暴れ出す”――。

治療を続けている人やその家族にとっては、とても不安な出来事です。
実はこの「がんが暴れ出す」現象には、最新の研究で少しずつ明らかになってきた複雑なメカニズムがあります。ここでは、その主な3つの理由を紹介します。

1.がんは「進化」する生き物

1.がんは「進化」する生き物

がん細胞というと、同じ種類の細胞が集まっているように思われがちですが、実際にはそうではありません。ひとつのがんの中にも、遺伝子の変化や働き方が異なる“多様な細胞たち”が混ざり合っています。

抗がん剤による治療を行うと、多くのがん細胞は死滅しますが、薬に強いタイプの細胞が一部残ることがあります。その残った細胞が再び増え、より強力ながんへと進化してしまう――。これが、再発や転移を引き起こす大きな要因のひとつです。

さらに、がん細胞は分裂を繰り返すたびに新しい遺伝子変異を生み出します。その結果、治療前とはまったく性質の違う、よりしぶとく成長の速いがんに変化することもあります。

つまり、がんは静かに見えても常に進化を続けているのです。

2.免疫の「疲れ」ががんを勢いづける

私たちの体には、異常な細胞を見つけて排除する「免疫」という防御システムがあります。免疫細胞は、日々生まれている小さながん細胞を早期に発見し、攻撃する働きをしています。

しかし、加齢やストレス、睡眠不足などが続くと、免疫の力は次第に落ちてしまいます。さらに、がんそのものが免疫を弱らせることもあります。がん細胞は免疫を鈍らせる物質を分泌して、自分への攻撃を避けるのです。

免疫の主役である「T細胞」は、長くがんと戦ううちに“疲弊”して攻撃力を失います。この状態を「免疫疲弊」と呼び、がんが再び増殖・転移しやすくなる要因のひとつです。

最近では、この免疫の疲れを回復させる「免疫チェックポイント阻害薬」が登場し、治療の新たな希望となっています。

3.がんの「微小環境」が味方にも敵にもなる

3.がんの「微小環境」が味方にも敵にもなる

がんは単独で存在しているわけではなく、血管や線維芽細胞、免疫細胞など、周囲のさまざまな要素に囲まれています。これを「がん微小環境」と呼びます。

この微小環境は、がんの進行を抑えることもあれば、逆に助長することもあります。血管ががん細胞に栄養や酸素を運ぶと、がんは一気に成長します。さらに、がん自身が周囲の細胞を操り、自分に都合のよい環境を作り出すこともあります。

最近の研究では、この「がんを取り巻く環境」こそが再発や転移を左右する重要な要素であることが明らかになってきました。

がん研究の最前線 ― 眠るがんを“見える化”する

近年では、休眠状態のがん細胞を見つけ出す研究が急速に進んでいます。
血液中を流れる微量なDNA断片(ctDNA)を解析し、がんの再発リスクを早期に察知できる可能性が示されています。血液1滴から「がんの目覚めの兆し」を捉える未来が、現実になりつつあるのです。

また、AIを活用した画像解析で、がん細胞が“目を覚ましそうな状態”を予測する試みも進んでいます。こうした技術が実用化されれば、「再発する前に手を打つ」治療が可能になります。

がんを消し去るのではなく、眠らせたまま静かに保つ――これがこれからのがん医療の新しい考え方になりつつあります。

がんを“暴れさせない”ためにできること

がんを“暴れさせない”ためにできること

最先端の医療技術と同じくらい、私たち自身の体の状態も大切です。がんの再発や進行の背景には、免疫の低下や慢性的な炎症が関係していることがわかっています。

免疫を整えるために、次のような生活習慣を心がけましょう。

● 睡眠をしっかりとる
免疫細胞は夜の深い眠りの中で修復されます。睡眠不足が続くと、がん細胞の監視力が弱まります。

● バランスの取れた食事
野菜・果物・発酵食品を多く取り、腸内環境を整えましょう。腸内細菌の働きが免疫力を高め、炎症を抑えます。

● ストレスをためない
強いストレスは免疫を抑えるホルモンを増やします。深呼吸や軽い運動、趣味の時間などでリラックスする時間をとりましょう。

● 適度な運動
1日20〜30分のウォーキングは血流を促し、がん微小環境の改善にも役立ちます。

こうした生活習慣は、がんだけでなく他の慢性病の予防にもつながります。

未来のがん治療へ ― 共存という選択肢

医療の世界では、「がんを取り除く」から「がんと共存する」時代へと発想が変わり始めています。休眠しているがんを刺激せず、免疫と生活習慣で体のバランスを保ちながら見守る――そんな治療のあり方が模索されています。

医療の進歩と日々の生活改善。この二つがかみ合えば、がんを恐れる時代から、がんと穏やかに共存できる時代へ。
科学の力と人の力、その両方が、がんの“暴走”を防ぐ希望の光になっています。