【最新研究】若い人のがんの原因をついに発見?腸内細菌が分泌する毒素「コリバクチン」と遺伝子変異、食事、大腸がんとの関係

今回は「若い人に増えている大腸がんの原因がついに見えてきた」というお話です。

はじめに

近年、40歳未満という若い世代で大腸がんを発症する人が増えていることが問題になっています。かつては高齢者の病気という印象が強かった大腸がんですが、なぜ若い人たちにも増えてきているのでしょうか。
その大きな手がかりとなる研究結果が、2025年4月に発表されました。日本も参加した国際共同研究の成果で、世界的な医学誌『Nature』に掲載されたものです。
今回は、その内容をできるだけわかりやすく解説していきます。

大腸がんの“新たな原因”が見えてきた

大腸がんの“新たな原因”が見えてきた

この研究では、世界11カ国、合計981人の大腸がん患者さんの遺伝子を詳しく調べました。どのような遺伝子の変化(=変異)が起きているかを分析し、国や年齢ごとの違いを比較したのです。

すると、大腸がんの発症率が高い国ほど、「SBS88」と「ID18」と呼ばれる特徴的な変異パターンが多く見られることがわかりました。
特に注目すべきは、日本人の患者さんのデータです。日本では、この2つの変異パターンが患者さんの約半数に見つかりました。ほかの国では2割弱しか見られないため、日本では特にこのタイプの変異を起こしやすいことが示唆されます。

さらに、これらの変異パターンは70歳以上の高齢者よりも、40歳未満の若い人の大腸がんに3倍以上多く見つかっており、「若年性大腸がん」の増加と関係している可能性が高いことが明らかになりました。

変異の原因は「腸内細菌の毒素」だった

では、この遺伝子の変異を引き起こしているのは何なのでしょうか。
研究チームが注目したのは「腸内細菌」です。

腸の中には、健康を支える善玉菌もいれば、体に悪い影響を与える悪玉菌もいます。その中のひとつに「大腸菌」があります。大腸菌と聞くと悪い印象を持つかもしれませんが、ほとんどの大腸菌は私たちの体の中で共存している無害な菌です。

ところが、ごく一部には「コリバクチン」という毒素を作り出す“悪玉の大腸菌”が存在します。このコリバクチンが大腸の細胞にダメージを与え、遺伝子の変化を起こしてしまうことがわかってきたのです。
つまり、腸内細菌が作る毒素が大腸がんの原因のひとつになっている、ということです。

コリバクチンを作る大腸菌はなぜ増えるのか?

では、なぜこの毒を出す大腸菌が腸の中で増えてしまうのでしょうか。
その鍵は「食生活」にあると考えられています。

アメリカで13万人以上を対象にした大規模な研究では、「西洋型の食事」をしている人ほど、便の中にコリバクチンを作る大腸菌が多く見つかるという結果が出ました。

ここでいう「西洋型の食事」とは、赤身肉やハム・ソーセージなどの加工肉、バターやチーズなどの高脂肪乳製品、フライドポテト、卵、甘いデザート、白いパンや白米などの精製された穀物、バターやマーガリンを多く摂る食事スタイルのことです。

こうした食事は、腸の中の環境を乱し、悪玉菌が増えやすくなるといわれています。その結果、コリバクチンを作る大腸菌が増えてしまい、大腸がんのリスクを高めている可能性があるのです。

「緑茶」や「植物性食品」が予防のカギに?

「緑茶」や「植物性食品」が予防のカギに?

一方で、このコリバクチンを出す大腸菌を減らす食べものもあるようです。
2020年に日本人を対象に行われた研究では、健康な人223人の便を調べたところ、27%の人からコリバクチンを作る大腸菌が見つかりました。

興味深いのは、食生活との関係です。
緑茶をよく飲む人や、ミネラルの一種「マンガン」を多く含む食品を摂っている人では、この菌が40~50%も少なかったのです。

マンガンは、植物性の食品に多く含まれています。
とくに、

  • 玄米などの全粒穀物
  • 大豆や小豆などの豆類
  • アーモンドやクルミなどのナッツ類
  • 茶葉(とくに緑茶)
    などに多く含まれています。

つまり、野菜や穀物、豆類を中心にした食事や、日常的に緑茶を飲む習慣は、腸内環境を整え、悪玉の大腸菌が増えるのを防いでくれる可能性があるのです。

若い人に増える大腸がんへの警鐘

若い人に増える大腸がんへの警鐘

今回の研究は、「がん=遺伝や老化によるもの」という従来の考え方に新たな視点を加えるものとなりました。
つまり、腸の中にいる細菌や日々の食生活が、がんの発症に深く関わっているということです。

実際、欧米や日本では若い世代での大腸がんが年々増加しています。
その背景には、食の欧米化や加工食品の摂りすぎ、野菜不足などの生活習慣が関係していると考えられます。

大腸がんは、初期のうちに見つけることができれば、ほとんどが治る病気です。しかし、若い人ほど「自分は関係ない」と思って検査を受けない傾向があります。
食生活を見直すこと、そして定期的に検診を受けることが、何よりも大切です。

まとめ

・若い人の大腸がんの一因として、「腸内細菌が作る毒素(コリバクチン)」が関わっている可能性が高い。
・肉や脂肪の多い「西洋型の食事」は、この毒を作る悪玉菌を増やす。
・一方で、緑茶やマンガンを含む植物性食品を多く摂ると、この菌を減らせる可能性がある。
・食事のバランスと腸内環境を整えることが、若い世代の大腸がん予防の鍵になる。

がんのリスクは、遺伝だけでなく、日々の食事や生活習慣によっても変えられます。
腸をいたわる食生活を意識することが、未来の健康を守る第一歩になるかもしれません。