【最新情報】あの「ホルモン」が、すい臓がん(膵癌)の引き金に!太った人(肥満)や糖尿病患者に多い理由が判明

すい臓がん(膵臓がん)は、日本でも年々増加しているがんの一つです。発見が難しく、治療が難しいがんとして知られています。その発症の背景には、遺伝的な要因だけでなく、食生活や代謝異常など、生活習慣に関わる要因も深く関係していることが分かってきました。中でも近年注目されているのが、「高インスリン血症(こういんすりんけっしょう)」とすい臓がんの関係です。

高インスリン血症とはどのような状態か

高インスリン血症とはどのような状態か

インスリンは、膵臓のβ細胞(ベータ細胞)から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きを持っています。私たちが食事をして血糖値が上昇すると、インスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉や肝臓、脂肪組織に取り込ませることで血糖を正常に保っています。

しかし、肥満や運動不足などが続くと、細胞がインスリンの働きに鈍く反応する「インスリン抵抗性」という状態になります。すると、膵臓はそれに対応するためにより多くのインスリンを分泌しようとします。その結果、血液中のインスリン濃度が慢性的に高くなる状態が「高インスリン血症」です。

高インスリン血症は、初期の2型糖尿病やメタボリックシンドロームでよくみられます。血糖値が正常でも、インスリンが過剰に分泌されている人は珍しくありません。実は、この「高インスリン状態」こそが、がんの発症と深く関わることが分かってきています。

インスリンが細胞に与える影響

インスリンは単に「血糖を下げる」だけのホルモンではありません。細胞の成長や増殖を促す「成長因子様の働き」も持っています。インスリンが過剰な状態が続くと、この成長刺激が過剰になり、細胞が異常に増えやすくなってしまうのです。

また、インスリンは体内の「IGF-1(インスリン様成長因子-1)」という物質の働きにも影響を与えます。IGF-1は細胞の増殖を促し、自然に死ぬはずの細胞(アポトーシス)を抑える作用を持っています。高インスリン血症になると、肝臓でIGFを結合するたんぱく質が減少し、血液中の遊離型IGF-1が増加します。これにより、がん細胞が増えやすい環境が作られてしまうと考えられています。

すい臓はインスリンの影響を最も受けやすい臓器

すい臓はインスリンの影響を最も受けやすい臓器

インスリンを作り出している臓器がすい臓です。高インスリン状態が続くと、すい臓は自らが大量のインスリンを分泌し続けることになります。このとき、膵臓内部のインスリン濃度は極めて高くなり、すい臓の細胞が常にインスリンの刺激を受ける状態になります。

研究によると、インスリンは膵臓の導管上皮や外分泌細胞にも作用し、細胞増殖を促す可能性があります。また、長期間の高インスリン血症は、酸化ストレスや慢性炎症を引き起こし、それがDNAの損傷やがん化の引き金になると考えられています。

つまり、「インスリンの分泌源である膵臓」こそが、インスリン過剰の影響を最も受けやすい臓器なのです。

研究で明らかになっているリスク上昇

多くの疫学研究によって、高インスリン血症やそれに関連する状態(肥満、糖尿病など)がすい臓がんのリスクを高めることが確認されています。

たとえば、アメリカ国立がん研究所(NCI)の研究では、空腹時インスリン値が高い人は、正常値の人に比べて膵臓がんの発症リスクが明らかに高いことが示されました。また、血糖値やインスリン抵抗性を示す指標(HOMA-IR)が高い人でも、同様の傾向が報告されています。

興味深いことに、一部の研究では、「糖尿病が発症する前の段階」、つまり血糖値がまだ正常でもインスリンが高い状態の人で、すでに膵臓がんのリスクが上がっていることが指摘されています。
このことは、単に「糖尿病だから膵臓がんになりやすい」というよりも、「高インスリン状態そのもの」が発がんリスクに関係している可能性を示しています。

高インスリン血症を防ぐための生活習慣

高インスリン血症を防ぐための生活習慣

高インスリン血症を防ぐには、血糖値の急上昇を抑え、インスリン分泌を穏やかに保つことが重要です。以下の生活習慣が有効とされています。

① 食生活の工夫

  • 低GI食品を選ぶ:白米や砂糖を多く含む食品よりも、全粒穀物や野菜、豆類など血糖をゆるやかに上げる食品を中心に。
  • 食物繊維を十分に摂る:野菜やきのこ、海藻は血糖上昇を抑える働きがあります。
  • たんぱく質を適度に摂取する:筋肉の維持に必要で、インスリン感受性の改善にもつながります。
  • 間食・夜食を控える:膵臓を休ませる時間を作ることが大切です。

② 運動習慣を身につける

筋肉はブドウ糖を取り込む最大の器官です。定期的な有酸素運動や筋力トレーニングによって、インスリンに対する感受性が高まり、インスリン分泌が減少します。1日30分程度のウォーキングでも十分に効果があります。

③ 体重・内臓脂肪の管理

内臓脂肪が多いとインスリン抵抗性が強まり、膵臓に負担がかかります。BMIだけでなく、ウエスト周囲径(男性85cm、女性90cm以上)にも注意を払いましょう。

医学的な対応と今後の研究

すでに糖尿病や高インスリン血症がある場合には、医師の指導のもとで適切な治療を行うことが重要です。
一部の研究では、糖尿病治療薬の中でも「メトホルミン」という薬が膵臓がんのリスクを下げる可能性があると報告されています。メトホルミンは肝臓での糖新生を抑え、インスリンの分泌を増やさずに血糖を改善する薬であり、インスリン負荷を軽減する点で理にかなっています。

ただし、薬に頼る前に、生活習慣の改善によってインスリン分泌を穏やかに保つことが最も重要です。すい臓がんの予防には、日常の積み重ねが何よりも大切です。

おわりに

すい臓がんは、早期発見が難しく、症状が出たときには進行していることが多い病気です。そのため、「がんを防ぐ」ための生活習慣が何よりも重要になります。

高インスリン血症は、食事や体重、運動など日々の習慣と密接に関係しています。そして、単なる糖尿病の前段階にとどまらず、がんを含めた多くの病気のリスクを高めるサインでもあります。

もし健康診断で「インスリン抵抗性」「空腹時インスリン高値」などを指摘された場合、それは将来の病気を防ぐための貴重な警告です。生活を少しずつ見直すことで、すい臓を守り、がんのリスクを下げることができます。

食事、運動、睡眠、そしてストレスの管理——。これらの基本を丁寧に整えることが、すい臓をいたわり、長く健康に生きるための最も確実な方法なのです。