普段なんとなく聞いたことはあるけれど、実際にはよく知られていない「注射」についてお話ししていきたいと思います。整形外科の外来では、痛みの治療や炎症の軽減を目的として、さまざまな注射が行われています。
一口に「注射」といっても、その種類や目的はさまざまです。整形外科では主に次の4種類が行われることが多いです。
それぞれの特徴と目的について、順を追って丁寧に解説していきましょう。

まず最初にご紹介するのは「関節内注射」です。
私たちの体には骨と骨が連結して動きを作る「関節」があります。この関節は、関節包と呼ばれる袋状の組織で覆われており、その中には「関節液」という潤滑液が満たされています。この関節液があるおかげで、骨同士がスムーズに動くことができるのです。
関節内注射では、この関節液がある空間に直接針を入れて薬剤を注入します。主に使用されるのは次の3種類の薬です。
また、関節内注射の一種として「椎間関節注射」もあります。
背骨は小さな骨が積み木のように連なってできていますが、その連結部分を「椎間関節」と呼びます。この関節が炎症を起こすと腰痛などの原因になります。椎間関節注射は、わずか2〜3mmしかない関節の隙間に局所麻酔薬を注入し、痛みを和らげる治療です。非常に繊細な技術を必要とする注射ですが、効果的に痛みを軽減することができます。

次にご紹介するのは「ブロック注射」です。
この注射は、神経の痛みを“ブロック”することで痛みを和らげる治療法です。特に椎間板ヘルニアや坐骨神経痛など、神経の圧迫によって痛みが起きている場合に用いられます。
脊椎(背骨)の真ん中には「脊柱管」というトンネルのような空間があり、その中を「脊髄」という太い神経が通っています。椎間板ヘルニアでは、この椎間板が後方に飛び出して神経を圧迫し、強い痛みを引き起こします。
ブロック注射は、この圧迫された神経の近くに局所麻酔薬を注入し、一時的に神経の伝達を遮断して痛みを抑える治療です。主な種類としては以下の2つがあります。
どちらのブロック注射も、根本的な治療ではなく「一時的に痛みを取り除く」ための対症療法です。しかし、激しい痛みを抑えることで、体が自然に回復する時間を確保できるという重要な役割を果たしています。実際、椎間板ヘルニアの痛みは、数日から数週間で自然に軽減していくケースも少なくありません。
続いて「トリガーポイント注射」です。
トリガーとは「引き金」という意味で、痛みの引き金となる部位、つまり“痛みのもと”に直接注射を行う治療法です。
代表的な例としては、肩こりや首のこり、腰痛など筋肉の緊張による痛みがあります。痛みを感じる筋肉に局所麻酔薬を注入し、筋肉のこわばりをほぐすことで、痛みを軽減させます。重症の場合にはステロイド剤を少量併用することもあります。
この注射は、骨の中ではなく筋肉などの軟部組織に行うため、比較的安全に実施できる治療法です。効果が現れると、筋肉が柔らかくなり、動かしやすくなるのを実感できる方も多くおられます。
最後に「腱鞘内注射」についてご紹介します。
私たちが指を曲げたり伸ばしたりできるのは、指の中に「腱(けん)」という筋のような組織が通っているからです。この腱は「腱鞘(けんしょう)」というトンネルの中を滑るように動いており、日常生活で何千回も動かすことで摩擦が生じます。
この摩擦が原因で腱鞘に炎症が起こると、「ばね指」と呼ばれる症状が現れます。指を曲げた際に引っかかるような動きが出たり、痛みを伴ったりします。
腱鞘内注射では、腱と腱鞘の間に局所麻酔薬やステロイド剤を注入し、炎症を鎮めて滑りを改善します。症状によっては1回の注射で改善することもありますが、炎症が強い場合には数回の治療が必要になることもあります。

今回は、整形外科で行われる代表的な4種類の注射について解説しました。
注射というと「痛い」「怖い」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、整形外科で行う注射の多くは、患者さんの痛みをやわらげ、生活の質を保つための大切な治療です。
痛みが強いときには我慢せず、医師に相談してみてください。注射をうまく活用することで、体が本来持っている回復力を引き出し、より快適な日常を取り戻すことができるでしょう。