転倒して手をついたときや、肩から地面に
倒れたときに
「ズキン」と肩が痛み、腕が上がらなくなる。
そんなときに起こりやすいのが
**上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)**
です。
この骨折は、特に
高齢者の方に多い骨折
のひとつで、
日常生活のちょっとした転倒
がきっかけで発生することがあります。
今回は、この上腕骨近位部骨折について、原因から治療、
リハビリまでをやさしく解説していきます。
上腕骨とは、肩から肘までをつなぐ長い骨のことです。
そのうち、肩の関節に近い部分(骨頭・頸部・結節部など)
を「上腕骨近位部」と呼びます。
この部分は、肩関節を形成する重要な場所で、腕を
上げたり回したりといった動きを支えています。
しかし構造的に細く、筋肉が多く付着しているため、
外力が加わると折れやすい部位
でもあります。

上腕骨近位部骨折は、若い人にも起こることはありますが、
圧倒的に多いのは高齢の女性です。
その背景には、「骨粗しょう症」が大きく関係しています。
加齢に伴って骨密度が低下すると、骨がスカスカになり、
ちょっとした転倒でも骨折しやすくなるのです。
特に女性は閉経後、
女性ホルモン(エストロゲン)の減少
により骨の代謝バランスが崩れ、骨がもろくなります。
そのため、手をついただけ、あるいは軽く肩をぶつけた
だけでも骨折してしまうことがあります。
また、高齢になるとバランス感覚や
筋力も低下し、転倒のリスクが高まります。
「骨が弱くなる」
と
「転びやすくなる」
のダブルパンチで、
上腕骨近位部骨折が起きやすくなるのです。
上腕骨近位部骨折を起こすと、以下のような症状が現れます。
痛みが強いため、
「五十肩(肩関節周囲炎)」
と間違えられることもありますが、
転倒や打撲の直後に症状が出た場合は、
骨折の可能性を疑う必要があります。
整形外科でレントゲンを撮ることで、
骨折の有無やズレの程度が確認できます。

上腕骨近位部骨折は、折れた部位やズレ(転位)
の程度によって治療法が異なります。
大きく分けると、
保存的治療(手術なし)と手術的治療
の2つがあります。
骨のズレが少なく、骨片(折れた骨の断片)が安定している場合には、
手術を行わずに自然に骨がくっつくのを待つ方法が選ばれます。
治療の流れは次の通りです。
ただし、リハビリを怠ると
「拘縮(こうしゅく)」
といって、関節が固まってしまうことがあるため、
医師や理学療法士の指導のもとで根気強く動かすことが大切です。
骨のズレが大きい場合や、関節面がずれている場合は、
自然に治すのが難しいため手術が必要です。
主に次のような方法が選ばれます。
折れた骨の外側に金属プレートをネジで固定する方法です。
ズレた骨を元の位置に戻し、しっかり固定することで、
早期のリハビリが可能になります。
比較的若い方や、骨質がある程度保たれている方に向いています。
骨の内部(髄腔)に
細い金属棒(髄内釘)を通して固定
する方法です。
骨の外側を大きく切らずに済むため、
手術の負担が少ない
という利点があります。
中程度のズレや複数箇所の骨折に適しています。
骨折が粉砕して形を保てない場合や、
骨の血流が途絶えてしまった場合には、
折れた部分を人工の骨頭(関節)に置き換える手術
を行います。
特に高齢者で骨がもろい場合や、
頭の血流が損なわれている場合
に選択されることが多い方法です。
手術後は、比較的
早い段階でリハビリを始めること
ができます。
上腕骨の近位部は、血流が限られた場所です。
特に骨頭部分は、血液を供給する血管が細いため、
骨折によって血流が途絶えると
骨頭壊死
という合併症を起こすことがあります。
そのため、治療法を選ぶ際には
「骨の血流が保たれているかどうか」
が重要な判断基準となります。
血流が保たれていれば保存療法や固定術が選ばれますが、
途絶している場合は人工骨頭置換術が必要になることもあります。

上腕骨近位部骨折の治療では、リハビリが非常に大切です。
骨折が治っても、長期間の固定により肩関節が硬くなり、
腕が上がらなくなることがあります。
そのため、痛みの程度を見ながら、
できるだけ早い時期から関節を動かす訓練
を始めることが推奨されます。
リハビリでは、以下のような内容を段階的に行います。
焦らず、少しずつ動かすことが回復への近道です。
医療スタッフと相談しながら、無理のない範囲で続けましょう。
年齢や骨の状態によって回復スピードは異なりますが、
しっかりと治療とリハビリを行えば、日常生活に
支障がない程度まで回復するケースが多いです。
上腕骨近位部骨折は、
高齢者にとって非常に身近で、生活の質を左右する骨折
です。
しかし、早期に正しい治療とリハビリを行えば、
多くの方が元の生活に戻ることができます。
再発防止のためには、次のような日常的な工夫も大切です。
肩の骨折は痛みも不安も大きいですが、正しい理解
とケアによって必ず前進できます。
焦らず、確実に、体と向き合いながら回復を目指しましょう。