今回は、「5度のがんでも折れないメンタルの作り方」というテーマでお話しします。
がんという病気を経験すると、心が折れそうになることが何度もあります。しかし、そんな中でも希望を失わずに立ち上がり続ける人がいます。そうした方々の考え方や行動には、病気を乗り越える大きなヒントが隠されています。

今回ご紹介するのは、高山知朗(たかやま・ともあき)さんという方の著書『5度のがんを生き延びる技術』です。
この本のタイトルを見ただけで、思わず驚く方も多いでしょう。高山さんは、なんと40歳のときに最初のがんを発症して以来、53歳になるまでに脳腫瘍・悪性リンパ腫・白血病・大腸がん・肺がんと、合計5つのがんを経験されています。
5つのがんの中には、治療がとても難しく、生存率が低いものもありました。すべてを合わせたときの「5年後に生きていられる確率」は、わずか約2%だったそうです。
それでも高山さんは、手術や抗がん剤治療、放射線治療、そして白血病では臍帯血移植(赤ちゃんのへその緒から採った血液を使う治療)まで受け、現在はどのがんも治まり、元気に生活されています。
しかしその道のりは決して平坦ではありません。
とくに白血病の治療中は、あまりのつらさに「もう終わらせたい」と思うほどだったと語っています。強い不安、苦痛、絶望に押しつぶされそうになり、副作用で命の危険にさらされたこともありました。それでも彼は、何度もどん底から立ち上がり、前を向き続けたのです。

高山さんは、5度にわたる闘病を通して学んだ一番大切なこととして、「不安や苦痛に負けない、折れないメンタルの大切さ」を挙げています。
では、彼はどうやってその強い心を保ち続けたのでしょうか。
本の第4章では、「がんを乗りこえるためのフレームワーク」として、4つのステップが紹介されています。ここからは、その内容をわかりやすくご紹介します。
がんを告知された瞬間、誰もが大きなショックを受けます。
「なぜ自分が」「これからどうなるのか」と、頭の中が真っ白になり、目の前が真っ暗になるものです。
しかし高山さんは、「できるだけ早く現実を受け入れること」が大切だと言います。
がんという事実から目をそらさず、「自分はがんになった」と認めること。そこから初めて、「どう生きるか」「どう治療と向き合うか」を考えられるようになります。
逃げたい気持ちは誰にでもありますが、まずは現実を受け入れ、覚悟を決めること。それが、立ち直りへの第一歩なのです。
次のステップは、「目標を定める」ことです。
高山さんにとっての目標は、「娘の20歳の誕生日に、家族3人でおいしいお酒で乾杯する」というものでした。
この目標は、単なる願いではなく、「自分が生き続けなければならない理由」だったのです。
生きる目的を持つことは、治療に向かう大きな原動力になります。
私の経験でも、家族のため、夢のためなど「何としても生きたい理由」がある人ほど、前向きに治療に取り組む傾向があります。
目標は大きくなくても構いません。
「孫の卒業式を見たい」「もう一度、桜を見たい」——そんな小さな希望でも、心の支えになります。
高山さんは、「先生にお任せします」という姿勢を捨てることの重要性を語っています。
もちろん医師を信頼することは大切ですが、自分の命を他人任せにしてはいけない、と。
「主体的な患者」になるためには、病気のことを自分で学び、医師に質問をし、治療方針を一緒に考える姿勢が必要だといいます。
医師との信頼関係を築き、自分もチームの一員として治療に関わる。
また、彼は「イメージトレーニング」を活用して、治療の効果を高めようとしたそうです。たとえば「薬ががん細胞をやっつけている」とイメージすることで、気持ちの面でも前向きになれるのです。
こうした「自分も治療に参加している」という感覚が、希望を持ち続ける力になります。
がんを経験すると、多くの人は「この先どうなるのか」という不安や、「もっと早く気づいていれば」という後悔にとらわれます。
しかし、高山さんは「今ここに集中する」ことを強く勧めています。
これはマインドフルネスという考え方にも通じます。
「過去の後悔や未来の不安」からいったん離れ、「今日できること」「今の自分にできること」に意識を向けるのです。
たとえば、彼は「リフレーミング」という方法を紹介しています。
これは、物事の受け止め方を変えるという考え方です。
「もっと早くがんが見つかっていれば」と後悔するかわりに、「早く見つかっても結果は変わらなかったかもしれない」「でも今、生きていることが何よりの幸運だ」と考え直す。
見方を変えるだけで、心の重荷が少し軽くなるのです。

高山さんは本の中で、「がんになる前と同じ自分を目指さなくていい」とも語っています。
病気を経験すると、体も心も以前とは変わります。でも、それを「失った」と考えるのではなく、「新しい生き方を得た」と捉えることが大切だといいます。
闘病を通して、人の温かさや日常のありがたさに気づいた。
生きる意味を深く考えるようになった。
そうした“がんが教えてくれた幸せ”が、彼の人生をより豊かにしたのです。
5度ものがんを乗り越えた高山さんの生き方は、すべてのがん患者さんにとって大きな励ましになります。
「折れないメンタル」とは、特別な人だけが持つ力ではありません。
それは、「現実を受け入れる」「生きる目標を持つ」「自分で選ぶ」「今を生きる」——この4つを少しずつ意識することで、誰でも育てていける心の力です。
病気と向き合う中で、不安や涙は避けられません。
でも、どんな苦しい時でも希望を見失わず、今この瞬間を大切に生きること。
それこそが、折れない心をつくる最も確かな方法なのではないでしょうか。
今回は、「5度のがんでも折れないメンタルの作り方」についてご紹介しました。
あなたの心にも、前を向くための小さな力が届けば幸いです。