ある日突然、肩に激しい痛みが走り、腕が上がらない――。
それが
「石灰腱炎(せっかいけんえん)」
の典型的な発症パターンです。
中高年の方を中心に、
「夜中に目が覚めるほど肩が痛い」
「肩を動かせないほどの激痛がある」
といった訴えで受診される方が少なくありません。
今回は、そんな
石灰腱炎の原因・症状・治療法
を、わかりやすく解説します。

中高年以降になると、肩の痛みを訴える方が増えてきます。
その主な原因として、整形外科では次の3つがよく知られています。
このうち、痛みの強さが特に激しいのが「石灰腱炎」です。
■ 「腱板」とはどんな組織?
石灰腱炎の話に入る前に、まず
「腱板(けんばん)」
について理解しておきましょう。
肩関節は、腕を前後・上下・回転など
あらゆる方向に動かせる関節です。
その自由な動きを支えているのが、
「腱板」
と呼ばれる4つの筋肉の集合体です。
腱板は、
・棘上筋(きょくじょうきん)
・棘下筋(きょくかきん)
・小円筋(しょうえんきん)
・肩甲下筋(けんこうかきん)
の4つの筋肉で構成されており、肩の安定
とスムーズな動きを担っています。
また、上腕の前側には
「上腕二頭筋腱(じょうわんにとうきんけん)」
という腱も走っており、これも石灰が
沈着しやすい部分のひとつです。
石灰腱炎とは、
腱板や上腕二頭筋腱などの腱の中に
「リン酸カルシウム(石灰)」
がたまる病気です。
この石灰は、チョークの粉のような白く
ドロッとした物質で、レントゲンや超音波検査で白く写ります。
腱の中にこの石灰が沈着すると、炎症反応が
強く起こり、突然の激痛を引き起こします。

石灰腱炎の症状には、次のような特徴があります。
実は、石灰腱炎の根本的な原因は
まだ明確には解明されていません。
いくつかの仮説がありますが、主な
説としては以下のようなものが挙げられます。
また、発症の傾向として、20代から50代の女性に多いことが知られています。
これは、女性ホルモンや代謝バランスの影響が
関係しているのではないかと考えられています。
石灰腱炎の診断は、問診と画像検査で比較的容易に行うことができます。
また、腱板断裂など他の病気と
区別するためにMRI検査を行うこともあります。
石灰腱炎の治療は、痛みの強さや症状の持続期間に応じて選択されます。
多くのケースでは、数日〜数週間で自然に
軽快するため、手術が必要となることはほとんどありません。
痛みが強い発作期には、以下のような治療が行われます。
痛みが落ち着いた後も、石灰が残っている場合や
再発を防ぐために次のような治療が行われます。

石灰腱炎の痛みは非常に強烈ですが、
ほとんどのケースで自然に回復
します。
数日で激痛が和らぎ、数週間以内には
日常生活に支障がない程度まで回復することが多いです。
また、レントゲンで確認された石灰が、
数か月後には完全に消失しているケースも珍しくありません。
ただし、まれに石灰が慢性的に残り、再発を
繰り返すタイプもあるため、その場合は
医師と相談しながら治療を継続することが大切です。
五十肩や腱板断裂と混同されることも多いですが、
発症のしかたや経過には明確な違いがあります。
| 病名 | 発症の特徴 | 痛みの強さ | 治癒までの期間 |
| 五十肩 | 徐々に痛みと動かしづらさが進行 | 中等度 | 数か月~1年 |
| 腱板断裂 | 力を入れると痛い、夜間痛あり | 中~強 | 治療により改善 |
| 石灰腱炎 | 突然の激痛、数日で軽快することも | 非常に強い | 数日~数週間 |
石灰腱炎は、ある日突然、肩に激しい痛みを
起こす病気ですが、多くは自然に治る一過性の炎症です。
原因はまだはっきりしていないものの、正しい診断と
早めの治療によって、短期間で回復するケースがほとんどです。
もし
「夜眠れないほど肩が痛い」
「急に腕が上がらなくなった」
という症状が出たときは、
無理をせず整形外科を受診してください。
適切な診断と対処を受けることで、痛みを
早くやわらげ、再発を防ぐことができます。