腰椎分離症の話

私たちの体を支える

「背骨(せぼね)」

は、首のあたりから骨盤まで
たくさんの骨が積み重なってできています。

その中でも、腰の部分にある5つの骨を
「腰椎(ようつい)」と呼びます。

腰椎は上から第一腰椎、第二腰椎…
と番号が振られ、最も下の第五腰椎の下に

「仙骨(せんこつ)」

さらにその下に

「尾骨(びこつ)」


が続きます。
この構造が、私たちが立ったり、
体をひねったり、前かがみになったりするときに
大きな役割を果たしています。

■ 背骨の構造を簡単に知っておこう

■ 背骨の構造を簡単に知っておこう

背骨(脊椎)は、中央に
「椎体(ついたい)」

という円柱状の骨があり、

その後ろに

「椎弓(ついきゅう)」

がアーチのように伸びて、
脊髄を守る“トンネル”を作っています。

このトンネル部分を

「脊柱管(せきちゅうかん)」

といい、
その中には神経の束である

「馬尾(ばび)神経」

が通っています。

椎弓の後方には

「棘突起(きょくとっき)」

という突起があり、
背中を触ると感じられる

“背骨の出っ張り”

がそれです。

また、上方と下方には

「関節突起」


があり、上下の骨と関節を作って
背骨全体が滑らかに動けるようになっています。

このように、腰椎は複雑で精巧な構造を持つ骨なのです。

■ 腰椎分離症とは?

「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」

とは、腰椎の中の“椎弓という部分が、左右どちらか
または両方で骨としてつながらず、分離して
しまった状態を指します。

本来であれば成長期に骨がしっかりと固まり、
一体化していくのですが、繰り返される運動の

負荷などによって骨の成長軟骨(骨の伸びる部分)
が傷つき、骨として完成しないまま残ってしまうのです。

つまり、

「骨が完全にくっつく前にストレスが
かかりすぎて、分離した状態で固まってしまった」


――これが腰椎分離症です。

■ 誰に起きやすいのか?

■ 誰に起きやすいのか?

腰椎分離症は、特に

10代の成長期の子どもや、スポーツを頑張っている中高生

に多く見られます。
一般の人での発症率はおよそ5%程度ですが、
スポーツ選手では30~40%にもなるという報告があります。

バレーボール、サッカー、野球、体操、陸上など、ジャンプや
腰の反り返し、ねじり動作が多い競技に多く見られます。

成長期は骨の中に

「成長軟骨帯」

という柔らかい部分があり、
ここで骨が伸びていきます。

しかし、この部分はまだ十分に強くないため、
繰り返し強い力がかかると、ひびのような
損傷が起こってしまうことがあります。

このひびが修復されないまま骨として
固まってしまうと、「腰椎分離症」として残るのです。

■ 症状 ― どんな痛みが出るの?

多くの場合、症状は腰の痛みです。

特に以下のような特徴があります。

  • スポーツの最中や後に腰が痛む
  • 前かがみや後ろに反る動作で痛みが強くなる
  • 安静にしていると痛みが軽くなる
  • 長く続く慢性的な腰痛

骨が分離していると、その部分が
少しぐらついたり、周囲の筋肉が
過度に緊張したりすることで痛みが出やすくなります。

ただし、神経を圧迫するほどではないため、しびれや
脚の痛みが出ることはほとんどありません。

■ 診断はどうやって行うの?

診断の基本はレントゲン検査です。
腰を前後左右に傾けることで、椎弓が
分離しているかどうかがわかります。

ただし、初期段階ではレントゲンでは

見つかりにくい場合もあり、その際には
CTMRI検査を行ってより正確に確認します。

MRIでは、分離部に炎症が起きているかどうか、
骨が修復される可能性があるかどうかも
判断できるため、治療方針を立てる上でとても重要です。

■ 治療法 ― 成長期かどうかがカギ

■ 治療法 ― 成長期かどうかがカギ

腰椎分離症の治療は、年齢や分離の程度によって大きく変わります。

① 成長期で、まだ骨が完全に固まっていない場合

この段階では「骨がくっつく」可能性があります。

  • スポーツの一時中止(2~3か月)
  • コルセットなどで腰を固定し、安静を保つ
  • 物理療法(温熱やストレッチ)で筋肉の緊張を緩める

これにより骨の修復が進み、完全にくっつく例も少なくありません。
焦らずに治療を続けることが大切です。

② 成長が終わった後の成人の場合

この場合は、分離した骨が再びくっつくことは難しくなります。
そのため、痛みを抑えながら腰に
負担をかけない生活を続けることが基本です。

  • 腰の筋肉を鍛えて支える
  • コルセットなどを適度に使用
  • 長時間の前屈や反り動作を避ける

それでも痛みが強く、日常生活に支障がある場合には、

**手術(腰椎椎体間固定術など)**

が検討されることもあります。

■ 分離が進むと「すべり症」に発展することも

腰椎分離症の一部では、分離した部分が
不安定になり、腰の骨が前方にずれてくる

「腰椎分離すべり症」

へと進行することがあります。

この状態になると、腰の神経(馬尾神経)が圧迫され、
坐骨神経痛のような

脚のしびれや痛み

を引き起こすことがあります。

このような場合は、安静や装具療法に加えて、神経の
圧迫を取り除く手術が必要になることもあります。

■ 日常生活で気をつけたいこと

腰椎分離症は、適切な治療とリハビリを
行えば、ほとんどの方が回復できます。

ただし、再発防止のためには以下の点が大切です。

  • 無理な練習を避け、体を温めてから運動を始める
  • 腹筋・背筋をバランスよく鍛える
  • 長時間同じ姿勢を続けない
  • 痛みが出たら早めに整形外科を受診する

成長期の体は日々変化しており、
少しのケアがその後の健康を左右します。

■ まとめ

腰椎分離症は、成長期の子どもに多い

「腰の疲労骨折」

ともいえる病気です。

原因は過度な運動や
繰り返しの負荷による骨の疲労であり、早期に
見つけて安静を保てば、多くは自然に回復します。

しかし、放置すると慢性腰痛や
腰椎すべり症に進行することもあります。

腰の痛みが長く続く、スポーツ中に痛む――
そんなときは

「成長痛だろう」


と自己判断せず、
整形外科でしっかりと診てもらうことが大切です。

体を支える「腰」を大切に守りながら、
無理のないスポーツライフを続けていきましょう。