私たちの体を支える
「背骨(せぼね)」
は、首のあたりから骨盤まで
たくさんの骨が積み重なってできています。
その中でも、腰の部分にある5つの骨を
「腰椎(ようつい)」と呼びます。
腰椎は上から第一腰椎、第二腰椎…
と番号が振られ、最も下の第五腰椎の下に
「仙骨(せんこつ)」
さらにその下に
「尾骨(びこつ)」
が続きます。
この構造が、私たちが立ったり、
体をひねったり、前かがみになったりするときに
大きな役割を果たしています。

背骨(脊椎)は、中央に
「椎体(ついたい)」
という円柱状の骨があり、
その後ろに
「椎弓(ついきゅう)」
がアーチのように伸びて、
脊髄を守る“トンネル”を作っています。
このトンネル部分を
「脊柱管(せきちゅうかん)」
といい、
その中には神経の束である
「馬尾(ばび)神経」
が通っています。
椎弓の後方には
「棘突起(きょくとっき)」
という突起があり、
背中を触ると感じられる
“背骨の出っ張り”
がそれです。
また、上方と下方には
「関節突起」
があり、上下の骨と関節を作って
背骨全体が滑らかに動けるようになっています。
このように、腰椎は複雑で精巧な構造を持つ骨なのです。
「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」
とは、腰椎の中の“椎弓という部分が、左右どちらか
または両方で骨としてつながらず、分離して
しまった状態を指します。
本来であれば成長期に骨がしっかりと固まり、
一体化していくのですが、繰り返される運動の
負荷などによって骨の成長軟骨(骨の伸びる部分)
が傷つき、骨として完成しないまま残ってしまうのです。
つまり、
「骨が完全にくっつく前にストレスが
かかりすぎて、分離した状態で固まってしまった」
――これが腰椎分離症です。

腰椎分離症は、特に
10代の成長期の子どもや、スポーツを頑張っている中高生
に多く見られます。
一般の人での発症率はおよそ5%程度ですが、
スポーツ選手では30~40%にもなるという報告があります。
バレーボール、サッカー、野球、体操、陸上など、ジャンプや
腰の反り返し、ねじり動作が多い競技に多く見られます。
成長期は骨の中に
「成長軟骨帯」
という柔らかい部分があり、
ここで骨が伸びていきます。
しかし、この部分はまだ十分に強くないため、
繰り返し強い力がかかると、ひびのような
損傷が起こってしまうことがあります。
このひびが修復されないまま骨として
固まってしまうと、「腰椎分離症」として残るのです。
多くの場合、症状は腰の痛みです。
特に以下のような特徴があります。
骨が分離していると、その部分が
少しぐらついたり、周囲の筋肉が
過度に緊張したりすることで痛みが出やすくなります。
ただし、神経を圧迫するほどではないため、しびれや
脚の痛みが出ることはほとんどありません。
診断の基本はレントゲン検査です。
腰を前後左右に傾けることで、椎弓が
分離しているかどうかがわかります。
ただし、初期段階ではレントゲンでは
見つかりにくい場合もあり、その際には
CTやMRI検査を行ってより正確に確認します。
MRIでは、分離部に炎症が起きているかどうか、
骨が修復される可能性があるかどうかも
判断できるため、治療方針を立てる上でとても重要です。

腰椎分離症の治療は、年齢や分離の程度によって大きく変わります。
この段階では「骨がくっつく」可能性があります。
これにより骨の修復が進み、完全にくっつく例も少なくありません。
焦らずに治療を続けることが大切です。
この場合は、分離した骨が再びくっつくことは難しくなります。
そのため、痛みを抑えながら腰に
負担をかけない生活を続けることが基本です。
それでも痛みが強く、日常生活に支障がある場合には、
**手術(腰椎椎体間固定術など)**
が検討されることもあります。
腰椎分離症の一部では、分離した部分が
不安定になり、腰の骨が前方にずれてくる
「腰椎分離すべり症」
へと進行することがあります。
この状態になると、腰の神経(馬尾神経)が圧迫され、
坐骨神経痛のような
脚のしびれや痛み
を引き起こすことがあります。
このような場合は、安静や装具療法に加えて、神経の
圧迫を取り除く手術が必要になることもあります。
腰椎分離症は、適切な治療とリハビリを
行えば、ほとんどの方が回復できます。
ただし、再発防止のためには以下の点が大切です。
成長期の体は日々変化しており、
少しのケアがその後の健康を左右します。
腰椎分離症は、成長期の子どもに多い
「腰の疲労骨折」
ともいえる病気です。
原因は過度な運動や
繰り返しの負荷による骨の疲労であり、早期に
見つけて安静を保てば、多くは自然に回復します。
しかし、放置すると慢性腰痛や
腰椎すべり症に進行することもあります。
腰の痛みが長く続く、スポーツ中に痛む――
そんなときは
「成長痛だろう」
と自己判断せず、
整形外科でしっかりと診てもらうことが大切です。
体を支える「腰」を大切に守りながら、
無理のないスポーツライフを続けていきましょう。