はじめに:まさか自分が「がん」になるとは…
「まさか自分ががんになるとは…」
これは、多くのがん患者さんが最初に口にする言葉です。
しかし現実には、今や2人に1人が一生のうちにがんになる時代です。決して他人事ではありません。
とはいえ、怖がる必要はありません。
というのも、「がん」はすでに“治る病気”になってきているからです。
日本人全体の5年生存率は60%を超え、現在は約65%に達しています。
つまり、がん患者さんの3人に2人は「治る」あるいは「がんがあっても長く生きられる」時代になったのです。
がんで死なないための3つの原則
がんを正しく恐れるためには、まず「死なないための原則」を知ることが大切です。
- がんにならない(一次予防)
生活習慣を整え、発症リスクを下げること。
- 早期発見する(二次予防)
検診やセルフチェックを怠らず、早い段階で見つけること。
- 備えを持つ(三次予防)
たとえがんになっても、慌てず治療・生活に向き合う準備をしておくこと。
がんが増える理由:高齢化だけではない
日本の死因の第1位は「がん」です。
確かに高齢化によって患者数は増えていますが、近年では若い世代のがん増加が世界的な問題になっています。
特に注目されているのが50歳未満の大腸がんや乳がんの増加。
日本でも同様の傾向があり、20〜30代でがんを発症するケースも珍しくありません。
その背景には、遺伝的要因と環境要因の両方が関係しています。
遺伝子とがん:親から受け継がれるリスク
代表的なのがBRCA遺伝子です。
これはDNAの修復を担う重要な遺伝子で、異常があると乳がん・卵巣がん・前立腺がん・すい臓がんなどのリスクが高まります。
親にBRCA異常がある場合、50%の確率で子へ遺伝します。
実際、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんはこの遺伝子異常を持つことがわかり、がん予防のために両側乳房と卵巣を予防的に切除しました。
今では、こうした「予防的切除」も世界的に一般的な選択肢になりつつあります。
増加の背景にある「環境要因」
遺伝だけでなく、私たちを取り巻く環境もがん発生に深く関係しています。
- 大気汚染(PM2.5):肺がんやすい臓がん、乳がんリスクを上昇させる
- 光害(夜の明るさ):夜間照明が多い地域では乳がんリスクが約14%上昇
- 生活習慣:喫煙・飲酒・食事・運動不足・感染症などが原因の約4〜5割を占める
つまり、がんの半分は生活習慣の見直しで防ぐことができるということです。
日本人のための「がん予防5か条」
- 禁煙する
タバコはがんの最大の原因です。
受動喫煙による肺がんリスクは34%上昇、乳がんリスクも2.6倍になるという報告があります。
「ベランダで吸う」「換気扇の下だから大丈夫」は通用しません。
- お酒は控える(できればゼロに)
WHOは「安全な飲酒量は存在しない」と警告。
日本人はアルコール代謝が弱く、特に顔が赤くなる「フラッシャー体質」の人は食道がんリスクが73倍にも上がります。
- 適正体重を保つ
男性ではBMI25〜27、女性では23〜25が最も死亡率が低いと報告されています。
痩せすぎも太りすぎも、がんリスクを高めます。
- 体を動かす
運動により「マイオカイン」という抗がん物質が分泌され、がん細胞の成長を抑制します。
最近注目されているのが「VILPA(ヴィルパ)」という概念。
階段を駆け上がる、掃除をする、荷物を運ぶなど、日常生活で数分間の強めの動作を1日3回取り入れるだけで、がん死亡率を約3割減らせると報告されています。
- 感染症を防ぐ(ピロリ菌・肝炎ウイルスなど)
胃がんの主な原因はピロリ菌。感染がある場合は除菌治療が推奨されます。
食生活の工夫:がんのリスクを下げる食べ方
- 野菜・果物を多く摂る(抗酸化物質・食物繊維が豊富)
- 塩分を控えめにする
- 赤肉・加工肉の摂りすぎを避ける
一方で、オリーブオイル・魚・発酵食品・緑茶などはがん予防に役立つことが多くの研究で示されています。
まとめ:恐れるより、備える
がんは誰にでも起こり得ます。
しかし、生活習慣の工夫と早期発見の意識があれば、十分に備えることができます。
- がんの半分は予防できる
- 検診で早く見つければ治る
- 備えがあれば、がんになっても慌てない
「まさか自分が」ではなく、「自分も備える」。
それが、これからの時代を健康に生き抜くための第一歩です。