今回は整形外科でよく相談を受ける「外反母趾(がいはんぼし)」について、わかりやすく解説していきたいと思います。
「外反母趾」という言葉は耳にしたことがあっても、実際にどのような状態を指すのか、なぜ痛みが起こるのか、そしてどのように治療するのかをご存じない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、外反母趾の仕組みから原因、そして治療法までを順を追って説明していきます。
外反母趾とは、足の親指(母趾)が外側、つまり小指の方向に曲がってしまう変形のことを指します。
足の親指の付け根、ちょうど“出っ張っている骨”の部分(MP関節)が外に向かい、指先は逆に小指側へ傾くような形になります。このとき、親指の傾きが20度以上になると外反母趾と診断され、30度を超えると治療が必要なことが多くなります。
この変形によって見た目の問題だけでなく、靴に当たる部分が赤く腫れたり、強い痛みを伴うことが特徴です。
足の構造とアーチの崩れ

人間の足は単に平らな板のような構造ではありません。
実は、足には**「縦のアーチ」と「横のアーチ」**という2種類の弓なりの構造があります。
この2つのアーチがクッションの役割を果たし、歩行や立位の際に体重を分散させています。
しかし、外反母趾の方ではこのアーチ構造が崩れてしまい、足の骨が横に広がる「開帳足(かいちょうそく)」という状態を伴うことが多くなります。
さらに、縦アーチが落ちてしまうと「偏平足」となり、より変形が進行しやすくなります。
つまり、外反母趾は単に親指だけの問題ではなく、「足全体の構造が崩れてしまう病気」といえるのです。
外反母趾で何がつらいのか?
多くの方が病院を受診されるきっかけは「痛み」です。
親指の付け根が赤く腫れたり、靴に当たるとズキズキ痛むことがよくあります。
この痛みの原因は、変形によってMP関節(親指の付け根の関節)が突出し、その部分に摩擦や圧迫が加わることで炎症が起こるためです。
関節と皮膚の間には「滑液包(かつえきほう)」というクッションのような袋がありますが、ここに炎症が生じると強い痛みを伴います。この状態を**「バニオン」**と呼びます。
つまり、外反母趾の痛みの正体は「骨の変形そのもの」ではなく、「突出した部分に起こる滑液包炎」なのです。
このため、靴の形や素材、歩き方などが大きく影響します。

外反母趾が起こる背景には、いくつかの要因が重なっています。
このように、外反母趾は単に「靴のせい」だけではなく、足の構造や筋肉バランス、生活習慣などが複雑に関係しているのです。

外反母趾の治療で最も重要なのは、「痛みを取ること」です。
変形があっても痛みがない場合は、必ずしもすぐに手術が必要というわけではありません。
【1】靴の工夫
靴が当たって痛みを感じる場合は、まず靴の見直しを行います。
先端の幅が広い靴や、足の形に合った柔らかい素材の靴を選ぶことが大切です。
靴屋や整形外科で、当たる部分を部分的に広げてもらう加工を行うことも効果的です。
【2】装具療法
軽度の外反母趾には「外反母趾装具」と呼ばれるサポーターやパッドが有効です。
親指と人差し指の間にクッションを入れて指の角度を整えるタイプが一般的で、変形の進行を抑え、痛みを軽減する効果があります。
【3】薬物療法・リハビリ
痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬の服用や湿布、理学療法(低周波治療など)を行うことで炎症を抑えます。
手術が必要な場合
これらの保存的治療でも改善しない、あるいは変形が強くなって日常生活に支障がある場合は、手術が検討されます。
手術では主に、親指の付け根の骨(第1中足骨)を楔(くさび)状に切り取って角度を修正します。
これにより、外側に向いていた親指がまっすぐに戻るようになります。
また、親指を外側に引っ張っている「母趾内転筋」という筋肉を切り離す手術を併用することもあります。
手術自体は比較的シンプルですが、骨がしっかりとくっつくまでにはおよそ2か月ほどかかります。
この間は体重をかけることが制限されるため、リハビリ期間を含めた術後管理がとても大切になります。
外反母趾は放っておくと変形が進み、歩行や姿勢にも影響を与える可能性があります。
痛みが出始めた段階で早めに整形外科を受診し、足に合った治療を受けることが大切です。