変形性股関節症の話

「膝が痛い」と訴える方は多いですが、

「股関節(こかんせつ)」


の痛みを訴える人も決して少なくありません。
特に中高年の女性に多く見られる

「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」


は、加齢による関節の老化と思われがちですが、実は
それだけではない深い背景があります。

■ 股関節とはどんなところ?

■ 股関節とはどんなところ?

股関節は、体の中でも特に大きな関節のひとつです。

「骨盤(こつばん)」

のくぼみである**臼蓋(きゅうがい)と、

「太ももの骨(大腿骨)」

の先端にある

大腿骨頭(だいたいこっとう)

がかみ合うことでできています。

臼蓋は半円形の受け皿のような形をしており、
大腿骨頭は丸い球体状になっています。

臼蓋は約45度ほど傾いていて、歩いたり立ったり
する際に体重をバランスよく支える構造になっています。

関節の表面は

「軟骨(なんこつ)」

というクッションのような組織で覆われており、
動くたびに骨と骨が直接こすれないように守ってくれています。

そのおかげで、股関節は滑らかに動き、体の重さを
支えながらスムーズに足を動かすことができるのです。

■ 変形性股関節症とは?

変形性股関節症は、股関節の軟骨が
すり減ることで、痛みや動かしづらさが生じる病気です。

「変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)」

と似ていますが、実は少し性質が異なります。

膝の変形性関節症は、いわば

“関節の老化”

による軟骨の摩耗が主な原因です。
一方、変形性股関節症は老化が直接の原因ではなく
先天的(うまれつき)または発育の段階での問題が関係しているのです。

特に女性に多く、国内ではおよそ
1000万人が罹患しているといわれています。

■ なぜ女性に多いのか? ― 臼蓋形成不全という要因

変形性股関節症の多くは、

「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」

と呼ばれる骨の発育異常が背景にあります。

臼蓋は本来、大腿骨頭をしっかり
包み込むような深いカップ状をしています。

しかし、臼蓋形成不全があると、
この“受け皿”が浅くなり、骨頭を十分に支えられません。

結果として、股関節の一部分に負担が集中し、
時間とともに軟骨がすり減ってしまうのです。

これは「生まれつきの形の問題」であり、
決して生活習慣のせいではありません。

つまり、変形性股関節症は単なる“老化”ではなく、

“構造上の負担”


によって生じる疾患なのです。

■ 症状 ― 痛みはどんなときに出るの?

■ 症状 ― 痛みはどんなときに出るの?

変形性股関節症の代表的な症状は股関節の痛みです。
ただし、痛み方にはいくつかの特徴があります。

  • 朝の起き上がりや立ち上がりなど、「体重がかかる瞬間」に痛む
  • 長時間歩いた後や、階段の上り下りで痛みが出る
  • 安静にしているときは痛みが軽いか、ほとんどない
  • 進行すると夜間や休んでいるときにも痛むことがある

初期では、単なる

「足の付け根の違和感」や「腰痛」

として見過ごされることもあります。

しかし、放置すると関節の変形が進み、
歩行困難につながることもあるため、早めの受診が大切です。

■ 診断 ― どうやってわかるの?

診断の基本はレントゲン検査です。
股関節の隙間(関節裂隙)が狭くなっているか、骨の変形や
骨棘(こつきょく)ができていないかを確認します。

必要に応じて、CTMRI検査で軟骨や
周囲の筋肉の状態も詳しく調べます。

痛みの程度とレントゲンの見た目は、必ずしも
一致しないことが多いのがこの病気の特徴です。

見た目で大きく変形していても痛みが軽い方もいれば、
逆に変形が少なくても強い痛みを訴える方もいます。

■ 保存的治療 ― 手術をしない方法

変形性股関節症の治療の基本は、まず

**保存的治療(手術をしない治療)**


です。

① 薬物療法

痛みを和らげるために、

**消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)**

が使われます。

  • 外用薬(塗り薬・貼り薬)
  • 内服薬(飲み薬)
  • 坐薬

これらは炎症を抑え、痛みを軽減する効果があります。

ただし、根本的に軟骨を再生させるものではないため、
痛みをコントロールしながらリハビリと併用します。

② リハビリテーション

股関節周囲の筋肉を柔らかくし、
関節への負担を軽くする目的で行います。

最近では、血流を促すための

「貧乏ゆすり運動」

が注目されています。

リズミカルに脚を動かすことで関節液(関節の潤滑液)の
循環が促進され、軟骨の代謝が活発になると考えられています。

ストレッチや筋トレも有効ですが、
無理のない範囲で行うことが大切です。

■ 手術 ― どんなときに必要になるの?

■ 手術 ― どんなときに必要になるの?

次のような場合には、手術が検討されます。

  1. 痛みが強く、日常生活が難しい
  2. 保存療法を続けても改善しない
  3. 関節の変形が進行している

手術にはいくつかの方法があります。

① 骨切り術(寛骨臼回転骨切り術など)

股関節の形を整え、負担のかかる部分を
変えることで痛みを軽減する手術です。

特に初期の段階で行われることが多く、
自分の関節を温存できるのが特徴です。

② 人工股関節置換術

変形が進行して関節の機能が失われた場合に行います。

すり減った関節を人工の金属やセラミックの関節に
置き換えることで、痛みを取り除き、再び歩けるようにします。

現在では手術技術も進歩し、術後のリハビリを経て
多くの方が日常生活に復帰しています。

■ まとめ

変形性股関節症は、「関節の老化」というよりも、
「うまれつきの形の問題」が背景にある病気です。

  • 股関節の臼蓋が浅く、体重を支える面積が小さい
  • そのために軟骨がすり減りやすくなる
  • 痛みは立ち上がりなど体重がかかるときに強く出る
  • 安静時には痛みが少ない
  • 保存的治療で改善しない場合は手術を検討する

「歳のせいだから」と諦める必要はありません。
痛みの原因を正しく理解し、体に合った治療を続けることで、
再び快適に歩けるようになる方はたくさんいます。

股関節は私たちの“歩く力”を支える大切な関節です。
少しでも違和感を感じたら、早めに整形外科で相談してみましょう。
正しい診断とケアが、将来の健康な足取りを守る第一歩になります。