破傷風は土壌や動物の排せつ物に存在する破傷風菌が傷口から侵入することで発症します。日常の小さなケガや交通事故、自然災害後の環境など、破傷風を引き起こすリスクは私たちの身近に潜んでいます。
適切な対応をしなければ筋肉のけいれんや呼吸不全を引き起こし、生命の危険にさらされることもあります。本記事では、破傷風の症状、治療法、予防策、そして看護師が知っておきたい対応ポイントを詳しく解説します。
破傷風は、破傷風菌(Clostridium tetani)が傷口から侵入することで発症します。この菌は酸素のない環境を好み、傷口の奥深くや壊死組織内で増殖します。菌が増殖する過程で作られる破傷風毒素(テタノスパスミン)が神経系に影響を与え、筋肉の硬直やけいれんなどの症状を引き起こします。
日本では年間約50例報告されており、自然災害後や汚染の多い環境での負傷が増加傾向を示します。特に農作業や交通事故、日常の小さなケガなども発症リスクに含まれます。
破傷風は感染から3日~3週間の潜伏期間を経て発症します。症状の進行は4つの病期(Ⅰ期~Ⅳ期)に分類されます:
Ⅰ期(初期症状)
• 開口障害:歯がかみ合った状態で口が開けにくくなる。
• 自律神経の亢進症状:発汗、頻脈、不安感、イライラなど。
Ⅱ期(進行期)
• 痙笑(けいしょう):顔が引きつり、苦笑いのような表情になります。
• 顔面筋のけいれん:構音障害を伴う場合もあります。
Ⅲ期(重症期)
• 筋肉のけいれんが全身に広がり、頸部硬直や背部の強直性けいれんが起こる。
• 刺激(光、音、接触など)によってけいれんが誘発される。
• 全身けいれん:無呼吸や強い痛みを伴い、背中を大きくそらす姿勢(弓なり反張)になる。
• 意識障害はないが、症状が激しい場合は生命の危険が伴います。
※発症からⅢ期までの進行が48時間以内の場合、予後不良とされるため、発症時間の確認が重要です。
Ⅳ期(回復期)
• けいれんや筋肉の硬直が徐々に軽減していきます。

破傷風の治療は、以下の3つを組み合わせて行います。
※破傷風リスクのある外傷を負った方が22歳以上であれば、子供のころのワクチン接種から10年以上経過しているため、当時摂取したワクチンの効果が切れていると判断され、医師から破傷風トキソイドの投与を行うよう指示されることが多いです。
※トキソイドと免疫グロブリンは異なる部位に筋肉注射します(例:左右の上腕二頭筋など)。これは相互作用による不活化や血清病を防ぐためです。
日本では4種混合ワクチン(DPT-IPV)により、破傷風予防が幼少期から行われています。しかし、ワクチンの効果は10年程度で低下するため、成人期以降も定期的な追加接種が推奨されます。
以下の条件がある場合、破傷風のリスクが高いとされます。
何項目満たせば危険が高いといった明確な指標はありませんが、複数の条件を満たす場合、予防的免疫療法(トキソイドまたは免疫グロブリン)の実施が考慮されます。

1.創部の適切な管理
• 汚染の強い創部:水道水や生理食塩水でしっかりと洗浄。
• 壊死組織の除去:早期の処置が破傷風予防の鍵です。
2.免疫療法の実施
• 医師の指示のもと、破傷風トキソイドや免疫グロブリンを投与。
• トキソイドと免疫グロブリンは異なる部位に注射することを確認。
3.破傷風リスクの把握
• 受傷時の状況や創部の状態を観察し、リスクを早期に判断。
• 必要に応じて医師に報告し、適切な処置を提案。
4.患者さんへの説明
• 破傷風に対する治療や予防の内容を分かりやすく説明。
• ワクチン接種の重要性や創部の管理方法についても指導を行います。
破傷風は身近なケガから感染する可能性がある疾患ですが、適切な予防と治療で発症を防ぐことができます。
ワクチン接種や創部の適切な処置を徹底することが最善の予防策です。また、破傷風リスクが高い状況に直面した場合、迅速な対応が患者さんの命を守ることにつながります。
破傷風の危険性を正しく理解し、迅速かつ適切な対応を心がけることは、患者さんの命を守る看護師の重要な役割です。