私たちの生活の中で、抗生剤(抗生物質)は感染症の治療に欠かせない薬です。とくに子どものころ、風邪をこじらせたときや中耳炎になったときなど、抗生剤を処方された経験がある方は多いのではないでしょうか。
しかし近年、医学研究の進展により、幼少期に抗生剤を長期間、または繰り返し使用することが、その後のがんリスクと関係している可能性が示され始めています。とくに注目されているのが、若年性の大腸がんとの関連です。
日本を含む多くの国では高齢化に伴ってがん患者が増加していますが、同時に、若い世代で大腸がんが増えるという新しい問題も浮上してきました。本記事では、抗生剤、腸内環境、そして遺伝子が若年性大腸がんとどのように関係するか、最新の研究をもとにわかりやすくご紹介します。

大腸がんといえば、従来は中高年に多い病気という印象が強いかもしれません。しかし、ここ数年で状況は変わりつつあります。
アメリカの研究によると、
つまり、20年以上で割合がほぼ倍になったことになります。この傾向はアメリカだけでなく、他の欧米諸国でも報告されており、国際的な医学的課題となっています。
では、若い人に大腸がんが増えている原因は何なのでしょうか。
これまでの研究から、以下の要因が関係すると考えられています。
| 要因 | 説明 |
| 食生活 | 西洋型食事、超加工食品の摂取増加 |
| 生活習慣 | 運動不足、肥満、ストレス |
| 遺伝 | 一部に遺伝的要因はあるが多くは非遺伝性 |
| 腸内細菌の乱れ | 腸内環境の悪化が免疫や代謝に影響 |
この中で近年とくに注目されているのが、腸内細菌(腸内フローラ)の乱れです。そして、その腸内環境に大きく影響するもののひとつが抗生剤なのです。
まず紹介するのは、英国の研究(British Journal of Cancer誌)です。
研究概要
結果
つまり、抗生剤の使用が若年性結腸がんのリスクと強く関係していたのです。
次に紹介するのは、UKバイオバンクを用いた研究(International Journal of Cancer誌)です。
研究概要
結果
| 条件 | 大腸がんリスク |
| 子ども期に長期 or 年3回以上抗生剤 | 48%増加 |
| 前がん病変(腺腫) | 40%増加 |
| FUT2 TT型(腸内細菌バランスに影響) | 75%増加 |
つまり、幼少期に繰り返し抗生剤を使うと、将来若くして大腸がんになる可能性が高まる可能性が示されました。
抗生剤は感染症を治療する非常に重要な薬です。しかし同時に、善玉菌を含む腸内細菌全体に影響を与えてしまいます。
その結果…
特に幼少期は、腸内環境と免疫システムが発達する重要な時期です。その時期に抗生剤の影響を強く受けると、将来の健康に長期的な影響を及ぼす可能性があります。

ここで大切なのは、
抗生剤は危険だから使わない方が良い、ということではありません。
細菌感染症の治療には抗生剤は欠かせず、命を救う薬です。しかし近年、特に子どもに対して風邪などウイルス感染で不要な抗生剤が処方されるケースが問題になっています。
抗生剤は細菌に効き、ウイルスには効きません。風邪ウイルスに対しては不要なのです。
| 行動 | 内容 |
| ❶ 抗生剤を求めすぎない | 風邪で自動的に抗生剤を希望しない |
| ❷ 医師に相談 | 「本当に必要ですか?」と確認 |
| ❸ 腸内環境を守る生活 | 食物繊維・発酵食品をとる |
| ❹ 運動・睡眠 | 免疫を強くし腸を守る |
| ❺ 乳幼児期の腸ケア | 離乳食や腸に良い食習慣の確立 |
とくに「疑問に思ったら質問する」という姿勢がとても大切です。

今回ご紹介した研究から、
幼少期の抗生剤使用は将来の大腸がんリスクを高める可能性がある
という重要な知見が得られています。
抗生剤は必要な薬です。しかし、「念のため」という理由で安易に使うべきではありません。
健康な腸を守ることは、がんだけでなく、免疫・代謝・心の健康にもつながります。
ぜひ、ご家庭での医療判断や日々の生活に、今回の知識を生かしていただければ幸いです。