顔で「がん」の余命がわかる?人工知能(AI)を使った生物学的年齢の推定アプリ「FaceAge」がより正確な予後を予測!

がん診療において、患者さんの余命をどの程度正確に見通せるかは、治療方針の決定や生活設計に関わる非常に重要な課題です。しかし、臨床現場では医師が様々な検査データや経験をもとに慎重に判断しても、余命予測には大きな誤差が生じてしまうことが少なくありません。過去の研究では、医師の予測と実際の生存期間が平均3~6か月ずれる場合があることも報告されています。

この難題に挑むため、世界中で新しい指標や技術の開発が進められています。その中でも注目されているのが、人工知能(AI)を活用したアプローチです。そして今回、米国ハーバード大学の研究チームが発表した最新研究が、医療とAIの可能性を大きく広げるものとして話題を呼んでいます。

顔から“生物学的年齢”を推定するAI「FaceAge」

顔から“生物学的年齢”を推定するAI「FaceAge」

研究チームが開発したのは、顔写真から「生物学的年齢」を推定するAIアプリ「FaceAge」です。生物学的年齢とは、カレンダー上の年齢(暦年齢)とは異なり、体の機能や細胞の状態を反映する“本当の年齢”の指標とされます。

たとえば、同じ60歳でも、健康状態や生活習慣、遺伝などの影響によって、身体機能が50歳程度の人もいれば70歳相当の人もいます。生物学的年齢はその差を定量的に示すものとされ、一般にはDNAメチル化といった分子レベルの検査で測定されます。

興味深いことに、こうした内的状態は外見にも反映されると言われており、年齢より若く見える人は生物学的にも若い傾向があるという研究結果が近年蓄積されています。「FaceAge」はこの概念に基づき、約6万人の高齢者の顔写真を用いて深層学習で訓練され、顔から生物学的年齢を推定する能力を身につけました。

実験では、たとえば実年齢92歳の男性の顔写真に対し、AIが「66歳」という結果を示した例もあったとされています。実年齢より26歳若いという非常に大きな差です。このような解析結果は、単に若く見える・老けて見えるという感覚的な評価ではなく、詳細なパターン認識に基づくAIの判断である点が重要です。

FaceAgeは余命をどこまで予測できるのか

FaceAgeは余命をどこまで予測できるのか

研究チームは「FaceAge」が実際にがん患者の余命予測に役立つかどうか検証するため、6000人以上のがん患者と500人ほどの対照群について解析を行いました。

その結果、「FaceAge」で推定された生物学的年齢が高いほど全生存期間が短いという相関関係が認められました。さらに、このAIによる予測は、従来余命予測に用いられてきた臨床指標よりも精度が高かったというのです。

加えて、がん患者は対照群に比べ、平均して実年齢より約4.8歳“老けて見える”傾向があることも明らかになりました。これは、生物学的年齢が高い人ががんを発症しやすいのか、それとも治療の負担や病態の影響で老化が加速するのか、現時点では明確ではありません。しかし、外見の変化が病態の指標となり得ることを示す非常に興味深い結果といえます。

医療現場への応用と未来の展望

医療現場への応用と未来の展望

今回の研究では、FaceAgeを用いることで、医師が余命を予測する際の精度向上にもつながることが示されました。これまで暦年齢は余命推定にそれほど有用な指標ではありませんでしたが、AIが算出する生物学的年齢はより信頼できる指標として期待が高まります。

もちろん、FaceAgeはまだ研究段階の技術であり、すぐに臨床で広く使われるわけではありません。しかし、患者さんの写真だけで余命や疾患リスクが推定できる可能性は、医療現場における人工知能の活用を大きく前進させるものです。

将来的には、がんのみならず、心血管疾患や認知症など、加齢に関連する病気の発症リスクを簡便に把握するツールとして活用される可能性もあります。病気の早期発見や予防医療の強化にもつながるかもしれません。

おわりに

顔の印象という、一見主観的な要素が、AIによって科学的な医療指標に変わりつつあります。外見に隠された生物学的な情報をAIが読み解くことで、より個別化された医療や、より正確な余命予測が可能になる未来が近づいているのです。

ただし、余命予測は患者さんにとって非常にセンシティブな問題であり、その扱い方には慎重さが求められます。AIの発展とともに、人間の尊厳を尊重した医療のあり方も改めて問われることになるでしょう。

医療とテクノロジーが融合することで、より豊かで安心できる人生設計を支える新たなツールが生まれ続けています。今後の研究の進展と実用化に期待が高まります。