【新人看護師向け】どうして手術後に高血糖が起こるのか解説します

 術後の患者さんを担当していると、血糖値の変動を頻繁に観察する機会が多いと思います。
特にICUの患者さんでは、手術による侵襲や輸液、体内環境の変化により血糖値が急激に上下することがあります。
 高血糖は体にさまざまな悪影響を及ぼすため、術後管理において特に注意が必要です。
本記事では、術後高血糖が起こる理由やその影響、適切な管理方法を丁寧に解説します。

高血糖と術後の体の変化

高血糖と術後の体の変化

術後に高血糖が起こる理由

手術などの侵襲を受けた患者さんの体では、ダメージを修復しようと様々な生理反応が起こります。

その結果、以下のメカニズムで高血糖が引き起こされます

  1. 炎症性サイトカインの分泌
    o 手術などの侵襲を受けると、炎症性サイトカインという伝達物質が分泌されます。
    この物質は、血糖値を下げる働きをするホルモンインスリンの分泌を抑制します。
  2. ストレスホルモンの影響
    o コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されることで、インスリンの作用を妨げるインスリン抵抗性が高まります。これにより、細胞が血糖をうまく取り込めなくなります。
  3. 糖新生の促進
    o 細胞が糖を取り込めない状態が続くと、体は「飢餓状態」と誤認し、肝臓で糖を新たに作り出す糖新生が活発になります。
    しかし、インスリンが作用しないため、血液中の糖分が過剰に蓄積されます。

  これらの反応が重なり、術後患者さんの血糖値が上昇するのです。

高血糖が体に与える悪影響

 高血糖は体に多くの悪影響を及ぼします。

 特に術後患者では、感染症のリスクや回復の遅れにつながるため注意が必要です。

1.感染症リスクの増加
高血糖状態では、免疫機能の低下が顕著に現れます:
好中球(細菌やウイルスを取り込み除去する役割を持つ白血球の一種)が、血糖値200mg/dl以上になると、働きが低下し、感染症に対する抵抗力が弱まります。
 o 創部感染:手術部位が細菌に感染しやすくなります。
 o 肺炎:人工呼吸器を使用している場合、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症リスクが増加します。

傷の治癒遅延
高血糖は血流にも悪影響を与えます。
毛細血管が糖の影響を受けて硬くなることで血流が滞り、創部や臓器への酸素・栄養供給が不足します。これにより、創部の治癒が遅れやすくなります。

3.その他の悪影響
• 電解質異常
血糖値が高いと、腎臓での浸透圧利尿が起こり、ナトリウムやカリウムなどの電解質が体外へ失われやすくなります。
• 酸化ストレス
長期的な高血糖は細胞に負担をかけ、組織や臓器の損傷を招きます。

術後血糖管理の目標

術後血糖管理の目標

 術後の血糖管理は、合併症の予防や早期回復に重要です。
では、具体的にはどの程度の数値を目標とすればよいのでしょうか?

目標値:200㎎/dl未満>

一般的な術後患者さんの血糖管理では、200mg/dl未満に抑えることが推奨されています。

以前は、血糖値を80~110mg/dlの範囲に厳密に管理する「厳格な血糖コントロール」が行われていました。しかし、以下の問題が浮上し、目標が緩和されました。
1.低血糖リスクの増加
o 厳密な血糖コントロールでは、低血糖を引き起こす可能性が高まります。低血糖は、交感神経の抑制や脳血流の低下、意識障害を引き起こすため、重篤な状態に陥るリスクがあります。

2.患者の予後に悪影響
o 低血糖は高血糖よりも緊急度や重症度が高く、患者の予後を悪化させる要因となります。
そのため、現在では200mg/dl未満を目指す緩やかな管理が主流となっています。

看護師が行うべき管理と対応

術後患者さんの高血糖管理において、看護師が果たす役割は大きいです。

以下に具体的な管理ポイントをまとめます。

1.血糖値の測定と記録
 • 血糖値の変動を把握するため、頻回の測定を実施します。
 • 血糖値が上昇傾向にある場合、医師に報告し、インスリン投与などの治療を調整します。

2.感染症リスクの早期発見
 • 創部の観察:発赤、腫脹、排液の増加など感染の兆候に注意します。
 • 全身状態の変化:発熱や倦怠感などの症状を見逃さないことが大切です。

3.低血糖への対応
 • インスリン投与後には低血糖が起こる可能性があります。
以下の症状が現れた場合、速やかに対処します:冷汗、手足の震え、意識障害など。
 • 必要に応じてブドウ糖の投与を行い、血糖値を正常範囲に戻します。

4.医療チームとの連携
 • 術後の高血糖は輸液や薬剤の影響を受けることもあるため、医師や薬剤師と密に連携して治療方針を共有します。

患者さんへの説明のポイント

術後の血糖管理では、患者さん自身の理解も重要です。以下の内容をわかりやすく説明します。
 • 高血糖のリスクとその予防策。
 • 血糖値の測定方法や異常値が現れた場合の対応。
 • 術後の食事療法や適切な活動量についての指導。

まとめ

術後の高血糖は、手術による侵襲や体内反応によって引き起こされるものですが、適切な管理を行えば予後への悪影響を最小限に抑えることが可能です。

ポイントのおさらい

  1. 術後の高血糖は炎症性サイトカインやストレスホルモンの影響によって起こる。
  2. 高血糖状態が続くと、感染症リスクや傷の治癒遅延、電解質異常などを招く。
  3. 術後の血糖管理は、200mg/dl未満を目標とする緩やかなコントロールが推奨される。
  4. 看護師は血糖値の測定・記録、感染リスクの早期発見、低血糖の対応、チーム連携を徹底することが重要。

 術後管理における血糖値の安定は、患者さんの回復を支える大切な要素です。

 看護師として、適切な観察とケアを心がけ、早期回復をサポートしましょう。