がんの告知を受け、手術を控えている方も多いと思います。
手術に向けて「何をすればいいのか」「どんな準備が必要なのか」は、誰もが気になるところです。
今回は、手術を受ける前に「絶対にやめてほしいこと」を3つ、そして手術の成功率を高め、回復を早めるために「ぜひやってほしいこと」を5つご紹介します。

がんの告知を受けると、多くの方が大きなショックを受け、気持ちが沈み込みます。
人に会いたくなくなったり、外に出るのが億劫になってしまったりするのは自然なことです。
しかし、この「ひきこもり」は手術を控える人にとって、とても危険な状態です。
体を動かさないと筋肉や体力が落ち、食欲も低下します。そのまま手術に臨むと、体が弱っているために術後の回復が遅れたり、合併症(傷の治りが悪い、感染しやすいなど)が増えたりすることがあるのです。
実際、私の経験でも、がんを告げられたあと2週間ほど自宅にこもりきりになった患者さんは、手術時の体力が大きく落ちてしまっていました。
つらい気持ちはすぐには消えませんが、できるだけ早く外に出て太陽の光を浴び、人と話し、少しでも体を動かすようにしてみてください。
散歩や簡単なストレッチだけでも構いません。体を動かすことで心も軽くなり、前向きな気持ちで手術に臨めるようになります。
がんと診断されると、多くの人が「何かできることはないか」と考え、インターネットや本で食事療法を調べます。
しかし、そこで注意してほしいのが「極端な食事法」です。
たとえば、「玄米菜食だけにする」「肉や魚を一切食べない」「にんじんジュースを1日に何リットルも飲む」といった偏った食生活です。
こうした食事法は一見「体によさそう」に見えても、実際には栄養のバランスが崩れ、特に筋肉や免疫に必要なたんぱく質が不足しやすくなります。
その結果、手術後の回復が遅れたり、感染などの合併症が起こりやすくなってしまうのです。
手術前は、「がんを治す食事」よりも「手術に耐えられる体を作る食事」が大切です。
肉・魚・卵・大豆製品など、良質なたんぱく質を意識して摂りましょう。
そして、野菜・ごはん・果物などもバランスよく組み合わせることが大事です。
また、家族や知人にすすめられても、これまで飲んだことのないサプリメントや健康食品を急に始めるのはやめてください。体に合わない場合や、薬との相互作用を起こすこともあります。
手術前にタバコを吸っている人は、術後に肺炎などの呼吸器トラブルを起こしやすいことが知られています。
タバコを吸っていると、痰(たん)が多く出るのですが、手術のあと痛みのせいでそれをうまく出せず、肺の中にたまってしまうことがあります。
それが原因で肺炎を起こしたり、回復が遅れたりするのです。
「手術が終わってからやめよう」では遅いのです。
手術が決まったら、できるだけ早く禁煙を始めましょう。1日でも早い禁煙が、手術の安全性を高めます。

手術前に体と心を整える準備のことを、「プレハビリテーション」といいます。
手術を受ける前から体力や栄養、心の状態を整えることで、回復が早くなり、合併症のリスクも減ると報告されています。
ここでは、特に大切な5つのポイントをご紹介します。
最も大切なのは、運動です。
手術までの期間が短くても、できる範囲で体を動かしてください。
ウォーキングや軽いストレッチなどの有酸素運動に加えて、筋力を維持するための筋トレもおすすめです。
スクワットや、椅子を使った立ち座り運動など、無理のない範囲で続けましょう。
運動は血流を良くし、体力を保つだけでなく、気分の落ち込みを和らげる効果もあります。
食事は手術に向けた「エネルギー補給」です。
手術を乗り越えるための体をつくるには、まず「たんぱく質」をしっかり摂ることが大切です。
肉・魚・卵・豆腐・納豆などを毎食のどこかに取り入れましょう。
また、ビタミンやミネラルを含む野菜、エネルギー源になるごはんやパンもバランスよく。
食欲がないときは、プロテインや栄養補助食品をうまく利用するのも良い方法です。
ただし、体調や治療内容によっては食事制限があることもあるので、主治医や栄養士に相談して調整しましょう。
手術を前に不安や恐怖を感じるのは当然のことです。
しかし、不安が強くなりすぎると睡眠や食欲に影響し、体の回復にも悪影響を与えることがあります。
家族や信頼できる友人に気持ちを話すだけでも、心が軽くなるものです。
また、病院には心のケアを専門にしているカウンセラーもいます。必要に応じて相談してみてください。
自宅では、深呼吸や軽い瞑想(マインドフルネス)も効果的です。
静かな時間をつくり、心を落ち着かせることが、手術への前向きな気持ちにつながります。
意外と見落とされがちですが、口の中の状態は手術後の体調にも関わります。
歯や歯ぐきに炎症や細菌があると、術後の感染リスクが高まることがわかっています。
毎日の歯みがきを丁寧に行い、口の中を清潔に保ちましょう。
虫歯や歯周病がある場合は、手術前に歯科を受診しておくと安心です。
タバコを吸っている人は、すぐに禁煙を始めましょう。
肺の状態が少しでも改善すれば、手術後の回復が早くなります。
また、呼吸を深くする訓練(呼吸筋トレーニング)も効果的です。
病院によっては、専用の器具(「すーふる」「トライボール」など)を使って練習できます。
呼吸を整えることで、術後に肺のトラブルを防ぎやすくなります。

がんの手術前は、体と心の準備がとても大切です。
やめるべきことは「ひきこもり」「極端な食事」「喫煙」。
そして、やるべきことは「運動」「栄養」「心のケア」「口腔ケア」「禁煙と呼吸訓練」です。
手術は、医師や看護師だけでなく、あなた自身の準備によって成功率が大きく変わります。
焦らず、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。
あなたの努力は、必ず手術後の回復を早める力になります。