みなさんは、指や首、肩などを動かしたときに「ポキポキ」「コキッ」と音が鳴ることはありませんか?
ついクセのように鳴らしてしまう方もいれば、その音が気になって不安になる方もいらっしゃると思います。
今回は、そうした「関節の音」について、医学的な観点から丁寧に解説していきます。
実は、この現象にはまだ完全には解明されていない部分もありますが、いくつか有力な説があります。音の正体や、鳴らすことによる影響、そして似ているけれど別の「関節音」についてもお話ししていきましょう。

関節を動かしたときに鳴る「ポキポキ音」や「コキッ」という音は、医学的には「クラッキング(cracking)」あるいは「ポッピング(popping)」と呼ばれます。日本語では「轢音(れきおん)」「軋轢音(あつれきおん)」「関節内音」などと表現されることもあります。
私たちが日常的に聞くこの音は、指を引っ張ったり、首をひねったり、肩を回したりと、関節を動かしたときに生じるものです。
では、一体なぜこの音が鳴るのでしょうか。
音が鳴る仕組み ―「気泡説」が最も有力
関節の中では、骨と骨が直接ぶつかることはありません。
骨の表面には「軟骨(なんこつ)」があり、その周囲を「関節包(かんせつほう)」と呼ばれる袋状の組織が包み込んでいます。関節包の中には「関節液」という透明な液体が満たされており、これが潤滑油のような役割を果たして関節の動きを滑らかにしています。
2015年、カナダのグレゴリー・カウチャック博士がこの現象を詳しく研究した結果、現在最も有力視されている説が「気泡発生説」です。
その仕組みを簡単に説明しましょう。
指を引っ張るなどして関節を動かすと、関節包の内部が一瞬「陰圧(いんあつ)」の状態、つまり真空に近い状態になります。
これは、コップに水を入れて蓋をしてから中の空気を抜くと、気泡が発生するのと似た現象です。関節内でも同じように、関節液の中に小さな気泡が発生し、それがはじけるときに「ポキッ」という音が鳴るのです。
つまり、骨がこすれて音が鳴っているわけではなく、関節液の中の気体が弾ける音が、私たちの耳に「ポキッ」と聞こえているということです。

この話題になると、多くの方が気にされるのが「指を鳴らすと関節が太くなる」「関節が変形する」といった噂です。
これについては、現時点では明確な科学的根拠はありません。
関節を鳴らす行為自体がすぐに関節を傷つけるという証拠はなく、長年の研究でも重大な害が確認されたわけではありません。
ただし、強い力で繰り返し関節をひねったり、無理な方向に曲げたりすると、関節包や靭帯を痛めるリスクはあります。
また、「音が鳴るとスッキリする」という感覚を持つ方も多いですが、それは精神的なリラックス効果によるものと考えられています。
したがって、どうしても鳴らしたいときは軽く1〜2回程度にとどめ、習慣的に何度も鳴らすことは避けるのが望ましいでしょう。
さて、ここまで説明した「ポキポキ音」は、若い方でもよく聞かれる一過性の現象です。
一方で、加齢にともなって「ギシギシ」「ギコギコ」「カチカチ」といった音が関節から聞こえることがあります。これは少し性質が異なります。
このような音は「関節音」または「捻髪音(ねんぱつおん)」と呼ばれます。
特に膝や肩、顎(あご)などでよく見られるもので、年齢とともに関節軟骨がすり減り、骨と骨が近づいた状態で動かすことで発生します。
イメージとしては、油が切れた扉の蝶番を動かすと「ギコギコ」と音が鳴るのに近い現象です。
軟骨のすり減りや関節変形によるものであり、これは「変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)」などの初期症状である場合もあります。
もし膝の曲げ伸ばしで音が頻繁に鳴る、あるいは痛みや腫れを伴う場合には、整形外科での診察を受けることをおすすめします。
放置しておくと、軟骨の摩耗が進み、関節痛や可動域の制限が出てくる可能性があるためです。
音自体が鳴ることにすぐ問題があるわけではありませんが、以下のようなポイントを意識しておくと安心です。

関節の「ポキポキ音」は、骨が擦れているのではなく、関節内の液体にできた気泡がはじける音です。
現時点では害があるとは言えませんが、無理に鳴らす行為は控えめにしておくのが安全です。
一方で、年齢とともに「ギシギシ」「カチカチ」と音が鳴る場合は、軟骨のすり減りなど関節の変性が関係していることもあります。
このようなときは、痛みや違和感を放置せず、早めに医師に相談することが大切です。
関節の音そのものは多くの人に見られる自然な現象ですが、体が発するサインを見逃さず、日頃から関節を大切にしていきましょう。