私たちの身の回りにある多くの食品には、さまざまな「食品添加物」が使われています。保存料や着色料、甘味料、発色剤、香料など、これらの添加物は見た目や味を良くしたり、長期間の保存を可能にしたりと、現代の食生活を支える重要な存在でもあります。
一方で、「添加物はがんの原因になるのでは?」という不安も多くの人が抱いています。実際、ネット上では「食品添加物はがんの最大の原因」という主張から、「日本の基準は厳しいから心配ない」という意見まで、見解はさまざまです。では、実際のところ、食品添加物によるがんのリスクはどのくらいあるのでしょうか。

食品添加物とがんの関係を考えるうえで、近年注目されているのが「超加工食品(Ultra-Processed Foods)」というカテゴリーです。
これは、原材料にさまざまな添加物や加工工程を加え、見た目・香り・食感を人工的に整えた食品のことを指します。明確な定義はありませんが、一般的にはインスタント食品、スナック菓子、清涼飲料水、冷凍食品、チキンナゲットやミートボールなどが該当します。
超加工食品は忙しい現代人にとって便利で手軽ですが、近年、その摂取量が増えるにつれて健康リスクも高まるという研究が世界各地で報告されています。
たとえば、2018年にイギリスの医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』に掲載されたフランスでの研究があります。
10万人以上の成人を対象に、食事内容とがん発症との関係を追跡したところ、「超加工食品を最も多く食べていたグループ」では、「最も少なかったグループ」に比べてがんの発症リスクが20%以上高かったのです。
さらに、超加工食品の摂取量が全体の食事に占める割合が10%増えるごとに、がんリスクが12%上昇していました。特に乳がんのリスクが顕著に高まっており、過剰摂取は女性の健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
もちろん、これはフランス人を対象とした研究であり、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。しかし、超加工食品の増加に伴って添加物の摂取量も増える傾向があるため、私たちも無関心ではいられません。
食品添加物の中でも、特にがんとの関連が疑われているのが「亜硝酸塩(NaNO₂)」や「硝酸塩(NaNO₃、KNO₃)」と呼ばれる化合物です。
これらは、主にハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉に使われており、肉の色を鮮やかに保ったり、細菌の繁殖を防ぐ目的で利用されています。
問題は、これらの物質が体内で「ニトロソアミン」という発がん性物質に変化する可能性があることです。これを裏付ける研究もあります。
2022年に『インターナショナル・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー(International Journal of Epidemiology)』で報告されたフランスの大規模研究では、10万人以上の成人を対象に亜硝酸塩・硝酸塩の摂取量とがん発症率を分析しました。
その結果、添加物由来の硝酸塩(特に硝酸カリウム)を多く摂取していたグループでは乳がんリスクが24%増加しており、亜硝酸塩(特に亜硝酸ナトリウム)を多く摂取していたグループでは前立腺がんリスクが58%増加していました。
一方で、野菜などに自然に含まれる天然由来の硝酸塩・亜硝酸塩については、がんとの関連は確認されませんでした。つまり、同じ「硝酸塩」でも、自然に含まれるものと食品添加物として使われるものではリスクが異なる可能性が示唆されています。

日本では、食品添加物の使用は食品衛生法によって厳しく管理されています。使用できる添加物の種類や量、用途は厚生労働省が細かく規定しており、動物実験などによって安全性が確認されたもののみが許可されています。
とはいえ、これは「安全の範囲内で使用されていればリスクが低い」ということであって、「まったくリスクがない」という意味ではありません。長期間にわたって日常的に摂取し続けた場合、微量でも蓄積的に健康に影響を及ぼす可能性があると指摘する専門家もいます。
特に、食品産業がグローバル化し、海外からの輸入加工食品が増えている現状では、日本の基準だけでは把握しきれないリスクもあるかもしれません。

食品添加物を完全に避けて生活することは現実的ではありません。忙しい日々の中で、コンビニやスーパーの弁当、インスタント食品に頼る場面は誰にでもあります。
しかし、がんのリスクを少しでも減らすために、次のような工夫は可能です。
これらはがん予防だけでなく、肥満や糖尿病など生活習慣病の予防にもつながります。
現時点の科学的知見では、「食品添加物を摂取したから必ずがんになる」という明確な証拠はありません。
しかし、添加物を多く含む超加工食品の摂取が増えるほど、がんを含むさまざまな病気のリスクが高まる傾向があることは確かです。
つまり大切なのは、極端に怖がることでも、完全に無視することでもなく、「ほどほどの距離感」で付き合うこと。
便利さと安全のバランスを意識し、できるだけ自然な食材を選ぶ工夫をすることで、健康的な食生活を維持できるでしょう。
「食」は毎日の積み重ねです。小さな選択の積み重ねが、未来の健康を左右します。今日の食卓から、少しだけ“自然”を取り戻してみませんか。