心不全は、高齢者を中心に多くの患者さんが悩む心臓疾患の一つです。
日本では推定約120万人が心不全を患っているとされ、心臓病の中でも特に注意が必要な疾患です。心不全とは、心臓がポンプ機能を十分に果たせず、全身に必要な血液を送り出せなくなる状態を指します。
その原因や症状は多岐にわたりますが、特に左心不全と右心不全の違いを理解することは、患者さんの症状に応じた適切な看護を行ううえで重要です。
この記事では、心不全の原因、分類、そして左心不全と右心不全の症状や病態について詳しく解説します。
心不全の原因と分類
心不全の原因
心不全を引き起こす疾患はさまざまですが、主な原因には以下が挙げられます:
- 虚血性心疾患:冠動脈が狭窄し、心筋への血流が不足する状態。
- 高血圧症:血圧の上昇が心臓に負担をかけ、心筋が肥厚する。
- 貧血:全身に酸素を届ける血液量が不足し、心臓の負担が増加。
- 弁膜症:心臓の弁の機能障害による血液の逆流や閉塞。
- 心筋症:心筋の異常による収縮力の低下。
- 心筋炎:心筋に炎症が生じ、機能が低下する。
- 不整脈:心拍の異常が心臓の働きを乱す。
- 肺疾患:肺の機能障害が心臓に影響を及ぼす。
心不全を引き起こす疾患を理解することで、その病態や治療の方向性を明確にすることができます。
心不全の分類
心不全は、その進行や病態によって次のように分類されます:
- 進行速度による分類
o 急性心不全:急激に症状が悪化する。
o 慢性心不全:長期間にわたって心機能が低下する。
- 心臓の収縮機能による分類
o 収縮不全:心臓が血液を十分に送り出せない状態。
o 拡張不全:心臓が十分に血液を受け取れない状態。
- 血行動態異常による分類
o 左心不全:左心室の機能低下による症状。
o 右心不全:右心室の機能低下による症状。
o 両心不全:左心不全と右心不全の症状が混在。
心臓の構造と血液の流れ
心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれており、血液を全身に送り出す重要な役割を担っています。
その流れを簡単にまとめると次の通りです:
- 左心室から血液が全身へ送り出される。
- 血液は酸素や栄養を全身の細胞に届ける。
- 老廃物を含む血液は静脈を通じて右心房に戻る。
- 右心室から血液が肺に送られ、酸素を取り込む。
- 酸素を含んだ血液は左心房を経て左心室に戻り、再び全身へ送られる。
この循環がスムーズに行われていることが健康な状態ですが、心不全が生じると血液の流れが滞り、さまざまな症状が現れます。
左心不全とは?病態と症状
病態
左心不全は、心臓の左心室が十分に血液を送り出せない状態を指します。この結果、左心室には血液が滞り、渋滞が生じます。その影響は左心房、さらには肺静脈や肺にまで波及し、次第に肺が水浸しの状態(肺水腫)になります。肺水腫が進行すると、酸素の取り込みが妨げられ、呼吸困難が引き起こされます。
主な症状
- 夜間の呼吸困難(起坐呼吸)
横になると重力により心臓への血液量が増え、血液の渋滞が悪化するため、夜間に呼吸困難を感じやすくなります。心不全の患者さんはこの呼吸困難感の対処として起坐呼吸、つまり自然と呼吸が楽になる姿勢をとるようになります。
- ピンク色の泡沫痰
肺に漏れた血液成分が混ざり、咳や痰にピンク色の泡状の痰が見られることがあります。
- 低酸素状態
肺水腫により酸素の取り込みが不十分になり、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)を引き起こします。
- 腎機能の低下
全身への血流が不足するため、腎臓への血液供給が減少し、尿量の低下が見られます。
右心不全とは?病態と症状
病態
右心不全では、右心室が肺や左心室側に血液を送り出せず、右心室に血液が滞ります。この渋滞は右心房や中心静脈に波及し、最終的には全身の静脈圧が上昇。全身にむくみ(浮腫)が生じます。
主な症状
- 頸静脈怒張
首筋の頸静脈が明らかに膨らむ状態です。座った状態でも怒張が認められる場合は右心不全の可能性があります。
- 胸水・腹水の貯留
血管内の圧力が上昇し、水分が血管外に漏れ、胸腔や腹腔に液体がたまります。
- 下肢や腸管の浮腫
重力の影響で足や腸管に水分が溜まり、浮腫や腹部膨満感、食欲低下が見られます。
- 体重増加
体内に水分が溜まることで急激な体重増加が起こります。
両心不全とは?
両心不全は、左心不全と右心不全の症状が混在する状態です。例えば、肺水腫による呼吸困難と全身のむくみが同時に見られることが特徴です。この状態では、心臓全体の機能が著しく低下しているため、迅速な治療が必要です。
まとめ
心不全はその原因や進行部位によって多様な症状を引き起こします。特に左心不全では呼吸困難や低酸素状態、右心不全ではむくみや頸静脈怒張などの特徴的な症状が見られます。
ポイントのおさらい
- 左心不全:肺に血液が滞り、肺水腫や呼吸困難が発生。
- 右心不全:全身の静脈圧が上昇し、むくみや体重増加が見られる。
- 両心不全:両者の症状が同時に現れる。
左心不全と右心不全の違いを理解することは、患者さんの症状から病態を把握し、適切なケアや治療につなげるために重要です。
また、身体所見や検査結果を組み合わせることで、より正確なアセスメントが可能になります。
心不全の知識を深め、患者さんの全身状態を的確に観察し、早期介入を行えるよう努めましょう。