高血圧や糖尿病、胃の不調など、慢性的な体の不調で薬を服用している方は多くいらっしゃいます。現代は「薬と共に生きる時代」とも言えるほど、生活習慣病の治療薬は身近な存在です。
多くの場合、薬は病気のコントロールに欠かせない重要な役割を果たします。しかし、長期間飲み続けることで、別の健康への影響が現れる可能性が指摘される場合もあります。
今回ご紹介するのは、**「がんのリスクが増加する可能性がある」**と報告された、一般的に使用される3種類の薬に関する研究です。誤解が生じやすいテーマですので、できるだけ丁寧に解説してまいります。

高血圧治療薬としてよく処方される「ACE阻害薬」。
カプトリル®、レニベース®、タナトリル®などの名前を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
2018年、イギリスの医学誌 BMJ に掲載された大規模研究では
という非常に大きな規模で調査が行われ、ACE阻害薬を服用していた人は肺がんの発症リスクが14%高かったと報告されました。さらに、
という結果も示されています。
2021年には、日本でも類似の報告が出ています。
高血圧治療薬を長期的に服用した人では、全がん、大腸がん、腎がんのリスクが上昇したという結果でした。
特に腎がんではリスクが2~4倍になる可能性が示されています。
ただし注意したい点は、
どの降圧薬が原因かまでは判明していない
ということです。すべての薬がリスクを上げるわけではなく、あくまで「可能性」が示された段階といえます。
次に紹介するのは、糖尿病治療薬ピオグリタゾン(例:アクトス®)。
血糖値を下げるために使われる有効な薬ですが、がんに関する重要な報告があります。
2016年、BMJ誌に発表された研究(14万5000人対象)では、
ピオグリタゾンを使用した患者は、他の薬を使用した患者より膀胱がんの発症リスクが63%高いという結果が示されました。
さらに、
という「用量・期間依存性」の関係がみられた点も重要です。
最後にご紹介するのは、逆流性食道炎や胃痛に使われる「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」です。
オメプラール®、タケプロン®、パリエット®、ネキシウム®などが代表です。
PPIは強力に胃酸を抑える薬で、短期使用なら非常に有効ですが、長期使用でがんリスクが指摘されています。
2020年、スウェーデンの国民データを用いた80万人規模の研究では、
6か月以上の長期使用者では、すい臓がんリスクが2.2倍に。
特に驚くべきは、
その他にも、
など、複数のがんリスク上昇が報告されています。
なぜリスクが上がるのかはまだ完全には解明されていませんが、
胃酸が減ることで腸内細菌のバランスが大きく変化し、「がんになりやすい腸内環境」が生まれるのではないかと考えられています。

今回紹介した薬は、どれも日常的に使われる非常に有用な薬です。
研究で「リスク増加の可能性」が示されたからといって、
服用すれば必ずがんになる、というわけではありません。
また、
自己判断で薬を中断することは非常に危険です。
血圧や血糖、胃の状態を放置する方が、はるかに重大な健康リスクにつながります。
もし、
という場合には、必ず主治医に相談しましょう。
「薬をやめる」のではなく、最適な治療法を一緒に検討することが大切です。
薬とがんリスクというテーマは、慎重に向き合うべき重要な話題です。
今回の情報が、薬との付き合い方を考える一助となれば幸いです。
今後も最新の医学研究や健康情報を分かりやすくお届けいたします。
「自分の体を守る知識」を一緒に身につけていきましょう。