【最新研究】あの食事でがん治療効果がアップ!食べものが癌の治療成績と生存率に影響するエビデンス

あの食事法でがんの治療効果がアップ?

あの食事法でがんの治療効果がアップ?

~食べものが体にもたらす驚きの力~

がんの治療を受けている方やご家族から、よくこんな質問をいただきます。
「食事は、がんの治療や経過に関係ありますか?」

とても大切な問いですが、これまでは「食べものと治療効果の関係」について、しっかりとした研究があまり進んでいませんでした。
そのため、多くの医師も「食事はあまり関係ありません。好きなものを食べてください」と答えることが多かったのです。

しかし最近になって、少しずつ状況が変わってきました。
食事そのもの、そして食事が大きく影響する“腸の環境”が、がんの治療の効果や生存率に関係しているのではないか、という研究結果が世界中で発表されるようになってきたのです。

今回は、その中でも「ある食事のスタイルが、がんの治療効果を高めるかもしれない」という注目の研究をご紹介します。

がん治療と食事の関係に注目した研究

この研究は、2023年2月に世界的な医学誌『JAMA Oncology(ジャマ・オンコロジー)』に掲載されたものです。
研究を行ったのは、オランダとイギリスの複数の病院。対象となったのは「悪性黒色腫(メラノーマ)」という皮膚がんの一種を持つ91人の患者さんです。

これらの患者さんはみな、免疫の働きを高めてがんを攻撃する「免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)」という治療を受けていました。
そこで研究チームは、患者さんたちが普段どんな食事をしているのかを詳しく調べ、その内容が「地中海式の食事」にどのくらい近いかを点数化しました。
この点数を「地中海食スコア」と呼びます。

地中海式の食事とは?

地中海式の食事とは?

「地中海食」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、ギリシャやイタリア、スペインなどの地中海沿岸地域で、昔から受け継がれている食事スタイルのことです。
世界でもっとも健康的な食事法の一つとして知られており、心臓病や糖尿病などの生活習慣病を防ぐ効果があるといわれています。

地中海食の特徴は、とてもシンプルです。
次の5つの食べものをたっぷりとることが基本になります。

  1. 全粒穀物(玄米、全粒粉のパン、オートミールなど)
  2. 魚介類(とくに青魚など)
  3. ナッツ類(アーモンド、くるみなど)
  4. 果物
  5. 野菜

さらにもう一つ大事なのが「オリーブオイル」です。
オリーブオイルをたっぷり使うのが地中海食の特徴で、バターやラードなどの動物性の油は控えめにします。
また、加工された肉やお菓子などの摂取を少なくし、自然のままの食材を中心にした食生活を送ります。

地中海食に近いほど、治療の効果が高かった

さて、この研究では、地中海食スコアが高い人ほど、治療の効果が高いという結果が得られました。
がんの大きさが小さくなった割合(奏効率)も、病気が悪化せずに過ごせた期間(無増悪生存率)も、地中海食に近い食事をしていた人の方が良い成績を示したのです。

つまり、同じ薬を使って治療していても、日ごろの食生活の違いによって、治療の効き方に差が出ていたということになります。

これは「食事ががん治療の効果を支えているかもしれない」という、大変興味深い発見です。

食事が治療を助ける理由とは?

では、なぜ食べものが治療の効果に関わるのでしょうか?
そのカギは「腸内環境」にあります。

人の腸の中には、無数の細菌が住んでいて、私たちの健康をさまざまな形で支えています。
この腸の環境は、食べるものによって大きく変わります。

近年の研究では、腸の状態が免疫の働きを左右し、それががん治療の効果にも影響することがわかってきました。
腸の中の細菌のバランスが乱れていると、免疫の力が弱まり、抗がん剤や免疫療法の効果が下がってしまうという報告もあります。

反対に、腸の環境が整っていると、体の免疫が活発に働き、治療を後押ししてくれるのです。
地中海式の食事は、野菜や果物、穀物など植物性の食品が豊富で、これらには腸内細菌の“エサ”となる食物繊維がたくさん含まれています。
そのため、腸の環境を良くし、結果的に体全体の免疫を整える効果があると考えられています。

「食事だけで治る」と誤解しないで

「食事だけで治る」と誤解しないで

ただし、ここで大切なのは「食事だけでがんが治るわけではない」ということです。
今回の研究が示したのは、あくまで「標準的な治療の効果を高めた可能性がある」という点です。

地中海食を取り入れることが直接的にがんを小さくするわけではありません。
あくまでも、体の状態を整え、治療をより効果的に進めるための“サポート役”としての意味があると理解しておく必要があります。

また、この研究で対象となったのは皮膚のがんの一種であり、すべてのがんで同じ結果が得られるかどうかは、まだ分かっていません。
それでも、腸の環境と免疫の関係を考えると、ほかのがんでも同じような傾向がみられる可能性は十分にあるでしょう。

毎日の食事でできること

それでは、私たちは日常の中で何を意識すればよいのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
地中海式の食事をそのまま再現するのは大変ですが、その“考え方”を取り入れることは誰にでもできます。

たとえば――

  • ご飯を白米だけでなく、玄米や雑穀米にしてみる。
  • 肉ばかりでなく、魚や豆を主菜にする日を増やす。
  • 野菜や果物を一日数回、意識的にとる。
  • 間食はナッツや果物など自然なものにする。
  • 調理の油をオリーブオイルに変える。
  • ソーセージやハムなどの加工肉、お菓子や揚げ物を控える。

こうした小さな積み重ねが、腸の健康を保ち、結果的に体全体の調子を整えることにつながります。
それが、がん治療中の心と体の回復を支える力にもなるのです。

まとめ:食事が“治療の味方”になる時代へ

これまで「食べものとがん治療は関係ない」と言われてきましたが、今では少しずつ新しい考え方が広がっています。
今回紹介した研究は、食事ががん治療の結果に影響する可能性を初めて明確に示したものの一つです。

もちろん、食事でがんを治すことはできません。
けれど、食べものを通して体の環境を整え、治療の効果を少しでも引き出せるとしたら、それはとても希望のあることだと思います。

「何を食べるか」は、「どう生きるか」にもつながっています。
毎日の食事を見直すことは、がんと向き合うあなた自身の体を守る、最も身近で確実な方法のひとつです。