私たちの体を支える「背骨(脊柱)」は、
まるで家の柱のように、体の中心で大切な役割を果たしています。
立つ・歩く・座るといった日常の動作は、
すべて背骨のしなやかな働きに支えられています。
しかし、この背骨の構造にゆがみやズレが生じると、腰痛や足のしびれなど、
さまざまな症状が現れることがあります。
その代表的な疾患が
「腰椎すべり症(ようついすべりしょう)」
です。
今回は、背骨の基本構造から腰椎すべり症の
原因・症状・治療まで、やさしく解説します。

人間の背骨は、全部で26個の骨(椎骨)からできています。
首から腰、そして骨盤にかけて連なり、体をまっすぐに
支えるとともに、内部を通る神経を守る大切な役割を担っています。
背骨は上から順に次のように分類されます。
背骨の全体を見ると、S字状のカーブを描いています。
このカーブがクッションのように働き、衝撃を吸収しながら姿勢を安定させています。
1つひとつの椎骨には、次のような部分があります。
これらが積み重なって脊柱管(せきちゅうかん)というトンネルを形成し、
その中を
脊髄(せきずい)
と呼ばれる太い神経の束が通っています。
脊髄は腰のあたりで枝分かれし、
「馬尾神経(ばびしんけい)」
となって足のほうへ伸びていきます。
脊髄から分かれた神経は、左右の
椎間孔(ついかんこう)
という隙間から出て、全身へ信号を送ります。
この神経が圧迫されると、痛みやしびれが起こります。
腰椎すべり症とは、その名の通り
「腰の骨(腰椎)がずれてしまう病気」
です。
特に第4腰椎と第5腰椎の間、または
第5腰椎と仙骨の間で起こることが多いです。
ずれ方には、いくつかのタイプがあります。
すべりが起こると、背骨の中を通る神経が引っ張られたり、
圧迫されたりして、さまざまな症状を引き起こします。
診断は主にX線(レントゲン)で行います。
立った状態で撮影することで、骨のずれの程度がわかります。
必要に応じてMRIやCTを用い、神経の圧迫の程度や、
椎間板の状態、すべりの原因などを詳しく調べます。

腰椎すべり症の多くは、骨がずれたままでも
日常生活に支障がない場合があります。
大切なのは、「骨のずれ=重症」ではないということです。
治療の基本は、痛みをやわらげ、筋肉を鍛えて腰を安定させることです。
・消炎鎮痛剤(内服薬、塗り薬、貼り薬、坐薬)
・局所注射(トリガーポイント注射など)
・温熱療法(ホットパック、赤外線など)
・腰痛体操、ストレッチ、姿勢改善
・神経ブロック注射
・腰椎けん引療法
・痛みを抑える内服薬(ビタミンB群、神経痛緩和薬など)
これらの治療で、多くの患者さんは数か月で症状が改善します。
次のような場合には、手術による治療が検討されます。
手術の目的は、神経の圧迫を取り除き、背骨を安定させることです。
代表的な方法が腰椎椎体間固定術です。
これは、ずれた椎骨の間に人工のスペーサーや
金属プレートを入れて固定する手術で、神経の圧迫を解除し、再発を防ぎます。

腰椎すべり症は
「老化だから仕方ない」
と諦める必要はありません。
適切なリハビリと治療で、
痛みのない生活
を取り戻すことは十分可能です。
無理をせず、早めに整形外科で
相談することが、快適な日常への第一歩になります。