くも膜下出血は、突然発症し高い致死率と後遺症率を伴う脳の疾患です。
名前だけでなく、いかに重い疾患であるか多くの看護師が耳にしたことがあるでしょう。
この記事では、看護師一年目の方でも理解しやすいよう、くも膜下出血の原因、症状、治療、そして看護のポイントを詳しく解説します。

くも膜下出血は、脳を覆う「くも膜」と「軟膜」の間にあるくも膜下腔で出血が起こる状態です。この部分には脳脊髄液が流れ、脳を保護する役割がありますが、ここに血液が流れ込むことで深刻な症状を引き起こします。
※英語では「Subarachnoid Hemorrhage(SAH)」と呼ばれます。医療現場では「ザー」と略されることもありますが、英語の頭文字をドイツ語読みした正しくない略称なので注意しましょう。
くも膜下出血の原因は以下の通りです:
特に、脳動脈瘤の破裂が原因の大半を占めるため、この記事では脳動脈瘤によるくも膜下出血に焦点を当てます。
脳動脈瘤は、血管の弱い部分が膨らんで「こぶ」となる状態です。この「こぶ」は血圧の負荷がかかりやすい動脈の分岐部や細い動脈への枝分かれ部分に発生します。
主な発生部位は以下の通りです:
• 前交通動脈(Acom):約30%
• 内頸動脈-後交通動脈分岐部(IC-PC):約25%
• 中大脳動脈分岐部(MCA):約15%
動脈瘤が破裂すると、くも膜下腔に血液が流れ込み、脳を圧迫して症状を引き起こします。
くも膜下出血の典型的な症状は以下の通りです:
くも膜下出血の診断には以下の検査が用いられます:
治療は主に保存治療、血管内治療、外科的治療に分かれます。
以下の場合に保存治療が選択されます:
• 全身状態が不良で積極的な治療ができない。
• 外傷性くも膜下出血で自然吸収が期待される場合。
• 重症度が高く、脳機能の回復が見込めず、患者さんの体を傷つけてしまうだけの場合。
※基本的に重症度が高いと積極的な治療の適応はないとされますが、施設によっては積極的に治療する場面はたくさんあります。
大腿動脈などの太い血管からカテーテルを挿入していき、脳血管にできた動脈瘤に対してコイルと呼ばれるやわらかい管を何本か挿入していきます。コイルを挿入していくと動脈瘤の中がコイルでいっぱいになるので、動脈瘤の中に血液が流れ込まなくなり、動脈瘤が破裂することを防ぎます。
• メリット:侵襲が少なく、術後の回復が早い。
• デメリット:動脈瘤の位置や形状によって適応外となる場合がある。
頭蓋骨を開けて、くも膜下腔にたまった出血を取り除きながら動脈瘤を見つけ出していき、動脈瘤が確認できれば、動脈瘤の根元に金属のクリップを挟んで、これ以上血液が入らないようにします。
• メリット:確実な治療が可能。
• デメリット:侵襲が大きく、術後の合併症リスクが高い。
くも膜下出血では再出血の予防が最優先課題となります。初回の出血で約30%が亡くなります。初回の出血を止血できても、再出血すると死亡率は50%に達するため、早期の適切な対応が求められます。
患者さんを刺激から守るために以下の対応を行います:
• 環境調整:静音・遮光した部屋で安静を確保する。瞳孔の観察ではペンライトを使わないようにします。
• 刺激を最小限に:小さな声で話しかけたり、アイマスクや軽く耳栓をするなど刺激を最小限にする配慮をします。緊急性のない侵襲的な処置は後回しにします。
再出血の予防には血圧管理が重要です。高すぎる血圧は先ほど説明した再出血のリスクを非常に高めてしまいます。一方で、血圧を下げすると今度は脳への血流が低下してしまうため、血圧が下がりすぎてしまうことも注意が必要です。
• 目標血圧:収縮期血圧120~130mmHg未満を維持。
• 看護師の役割:降圧剤の投与、頻回の血圧測定を行う。
患者さんの痛みを和らげ、興奮を抑えるための管理です。
• 痛みの緩和:鎮痛剤の使用。
• 安静促進:鎮静剤の投与により、過度な興奮を防ぎます。

治療後は再出血や合併症の予防、患者さんの全身状態の把握が求められます。
• 主な原因は脳動脈瘤の破裂。
• 再出血予防のために安静、血圧管理、鎮痛・鎮静が重要。
• 血管内治療や外科的治療を適切に選択することで治療効果が期待される。
くも膜下出血は、迅速な診断と適切な対応が患者さんの命を守る鍵となります。再出血の予防を中心に、看護師が積極的に介入することで、患者さんの予後を大きく改善できる可能性があります。
患者さんに寄り添い、適切なケアを提供することで、くも膜下出血からの回復をサポートしましょう。