手足の用語【ワンポイントトリビア】

手足の用語を正しく理解する

手足の用語を正しく理解する

——「足」「脚」「手」「腕」など、同じように聞こえても意味は違う

私たちが普段、何気なく使っている「手」や「あし」という言葉。
しかし、医療の世界では、これらの言葉が厳密に区別されています。同じ「あし」と発音しても「足」と「脚」では意味が異なり、同じ「手」でも人によって指している範囲が違うのです。ここでは、「手」や「足」にまつわる言葉の違いを丁寧に解説していきます。

「足」と「脚」の違い

まず「あし」という言葉。思い浮かべる漢字は「足」でしょう。しかし実際には、もう一つ「脚」という漢字もあります。どちらも「あし」と読みますが、意味が違います。

「足(Foot)」は、くるぶしより先――つまり足首から先の部分を指します。
一方の「脚(Leg)」は、股関節のつけ根から足先まで全体を指す言葉です。つまり、「脚」は「足」を含んだより広い範囲ということになります。

このように、同じ発音でも指している部位が違うのです。

さらに医療では「下肢(Lower limb)」という表現が使われます。これは「脚」と同じ範囲――股関節から足先までを指しますが、「脚」は日常語に近く曖昧なため、医学用語としてはあまり使われません。
医療では、「太ももより先の部分」をまとめて「下肢」と呼び、さらにその中を2つに分けて表現します。

  • 膝より上:大腿(thigh / upper leg)
  • 膝より下:下腿(lower leg)

このように、人体の構造を明確に示すために、医療の現場では「脚」や「足」よりも「下肢」「大腿」「下腿」といった専門的な言葉が使われているのです。

「手」と「腕」の使い分け

次に「手」について見ていきましょう。

「手」と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか。多くの人は「手首より先」、つまり手のひらや指を思い浮かべるかもしれません。しかし、「肩から先」を全部「手」と呼ぶ人も少なくありません。

実際、診察の場では「手がしびれる」と訴える患者さんに詳しく聞いてみると、しびれているのは腕全体だった――ということがよくあります。つまり「手」という言葉が人によって指す範囲が違うのです。

医療の世界では、次のように区別しています。

  • 手首より先 → 手(hand)
  • 肩から手首まで → 腕(arm)

さらに、この「腕(arm)」も2つに分けられます。

  • 肘より上 → 上腕(upper arm)
  • 肘より下 → 前腕(forearm)

日常的には「下腕」という言葉の方が自然に感じるかもしれませんが、英語でも「lower arm」とは言わず、「forearm(前の腕)」という表現を使います。医療の言葉も同様に「前腕」と呼びます。
こうした区別を知っておくと、症状を伝える時や医療者の説明を受ける時に、より正確に理解できるでしょう。

「ゆび」には二つの漢字がある

「ゆび」には二つの漢字がある

次に、「ゆび」という言葉について見てみましょう。これも実は、二種類の漢字があります。

  1. 指(finger) ……手のゆび
  2. 趾(toe) ……足のゆび

たとえば「トウシューズ(toe shoes)」の「toe」は、まさにこの「趾」です。
足のゆびを表すときには「足趾」と書くこともあり、医療の文脈では「趾」が正式な表記です。

手の指の呼び方(医学用語)

日常では「親指」「人差し指」「中指」「薬指」「小指」と呼びますが、医療では以下のように表現します。

一般名医学用語読み方
親指母指ぼし
人差し指示指じし
中指中指ちゅうし
薬指環指・薬指かんし/やくし
小指小指しょうし

「薬指」は、薬を指につけて舐めていたことから「薬指」と呼ばれたという説や、指輪をはめることから「環指」とも呼ばれるなど、興味深い由来があります。

足の指の呼び方

一方、足の指は少し違います。手と同じように「親指」「人差し指」などと言うこともありますが、医療ではそれらの呼称は使いません。

代わりに、番号で表します。

  • 第一趾(母趾)
  • 第二趾
  • 第三趾
  • 第四趾
  • 第五趾

つまり、足の親指は「第一趾」または「母趾」と呼ばれるのです。
医療記録や診察で「第○趾」と言われたら、どの指のことかを番号で判断します。

指の関節の呼び方

指の関節の呼び方

次に、指の関節の名称についても触れておきましょう。
人差し指から小指までは、曲げ伸ばしできる関節が3つあります。一般的には「第1関節」「第2関節」と呼ばれますが、医療では英語の略語を用います。

  • DIP関節(Distal Interphalangeal Joint):指先に近い関節
  • PIP関節(Proximal Interphalangeal Joint):指の根元寄りの関節
  • MP関節(Metacarpophalangeal Joint):手のひらとの境目の関節

「Distal」は“遠い”、「Proximal」は“近い”という意味で、体の中心から見た距離を表しています。

一方、**親指(母指)**は関節が一つ少なく、曲げ伸ばしできるのは2か所だけです。

  • 指先側:IP関節(Interphalangeal Joint)
  • 付け根側:MP関節

さらに、手のひらの奥にもう一つ関節が隠れています。それが**CM関節(Carpometacarpal Joint)**です。特に親指のCM関節は重要で、加齢によって変形や痛みが生じやすい部分として知られています。この病気は「母指CM関節症」と呼ばれ、整形外科で頻繁に扱われる疾患の一つです。

つまり、指の関節は見た目より多く、
親指には2つ(MP・IP)、その他の指には3つ(MP・PIP・DIP)があり、さらに奥にCM関節があるという構造になっています。

まとめ

普段の生活では、「手」や「あし」といった言葉を曖昧に使っていても特に問題はありません。ですが、医療の現場ではわずかな違いが大きな誤解につながることもあります。

  • 「足」と「脚」は別の部位
  • 「手」と「腕」は範囲が異なる
  • 「指」と「趾」は使い分ける
  • 指の関節にはそれぞれ名称がある

こうした区別を知っておくと、診察の際に自分の症状をより正確に伝えられるようになります。
また、医療者の説明も理解しやすくなり、自分の体をより正しく捉える助けにもなるでしょう。

人の体の言葉は、単なる名称以上に、その仕組みや働きを反映した深い意味を持っています。
「手」や「あし」という身近な言葉を通して