――毎日の食習慣から考える、胃を守る生活――
日本では、胃がんは依然として多くの人々の命を脅かす病気の一つです。医療技術の進歩によって早期発見・治療が可能になったとはいえ、発症を防ぐための「予防」はやはり重要です。その中でも、私たちが毎日口にする“食べ物”や“飲み物”は、胃の健康を左右する大きな要因となります。
ここでは、研究や統計データをもとに「胃がんのリスクを高める飲食物」を3つに絞り、なぜそれらが危険なのかをわかりやすく説明します。

最も代表的なリスク要因として知られているのが、「塩分の摂りすぎ」です。
塩分の高い食品は、胃の粘膜に直接的な刺激を与えます。長期的に濃い味付けの料理を食べ続けることで、胃の粘膜が傷つき、慢性的な炎症が起こります。この炎症が続くと、胃の防御機能が弱まり、発がん物質やピロリ菌の影響を受けやすくなってしまうのです。
具体的には、漬物、干物、味噌汁、ラーメン、塩辛、インスタント食品などが高リスク食品として挙げられます。特に日本食は伝統的に塩分を多く含む傾向があり、注意が必要です。
世界保健機関(WHO)は、成人の一日の塩分摂取量を「5g未満」とするよう推奨していますが、日本人の平均摂取量はその約2倍。塩分を減らすことは、胃がん予防だけでなく、高血圧や脳卒中の予防にもつながります。
【対策】
・味付けを「出汁」や「香辛料」で工夫する
・汁物は“飲み干さない”
・漬物は毎食ではなく「時々の楽しみ」にする
これだけでも、胃への負担を大きく減らすことができます。

2つ目は、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉製品や、燻製食品です。
これらには、保存性や見た目を良くするために「亜硝酸塩」などの発色剤が使用されています。これが胃の中でたんぱく質と反応し、「ニトロソアミン」という強力な発がん物質を生成します。
特に高温で調理する過程でも、このニトロソアミンが発生しやすくなるため、焼き過ぎや焦げにも注意が必要です。
国際がん研究機関(IARC)は、**加工肉を「人に対して発がん性がある(グループ1)」**と分類しています。つまり、喫煙やアスベストと同じグループに入るほど、科学的にリスクが明確だということです。
【対策】
・加工肉は「毎日」ではなく「時々」の嗜好品にする
・サラダや野菜と一緒に摂り、抗酸化作用を補う
・焦げつきを避け、低温調理を心がける
日本の伝統食である魚の干物や燻製も、同様に注意が必要です。焼き魚をよく食べる人は、皮や焦げの部分を避けるだけでもリスクを減らせます。

3つ目は「お酒」です。
多くの人が「ほどほどなら健康に良い」と思いがちですが、近年の研究ではアルコールそのものが発がん性物質であることが明らかになっています。IARCは、エタノール(アルコール)を「グループ1(確実な発がん性)」に分類しており、胃がんを含むさまざまながんのリスク上昇と関連があるとされています。
アルコールが分解される過程で生成される「アセトアルデヒド」は、DNAを傷つける働きがあります。特に日本人は遺伝的にアルコール分解酵素が弱い人が多く、このアセトアルデヒドが体内に残りやすい体質です。そのため、顔が赤くなるタイプの人ほどリスクが高いといわれています。
【対策】
・週に2~3日は「休肝日」をつくる
・一回あたりの飲酒量を減らす(ビール中瓶1本・日本酒1合が目安)
・飲酒の際には、必ず食事と一緒に摂る
・水をこまめに挟み、アルコール濃度を下げる
「飲まない勇気」こそ、最大の予防策です。
胃がんのリスクを高める主な飲食物として、
これらに共通しているのは、「長期間・習慣的に摂取することでダメージが蓄積する」という点です。すぐに影響が出るわけではないため軽視されがちですが、日々の小さな積み重ねが将来の健康を大きく左右します。
もちろん、完全に避ける必要はありません。大切なのは「摂りすぎない」「毎日は続けない」「組み合わせを工夫する」こと。たとえば、野菜や果物に多く含まれる抗酸化物質(ビタミンC・E、ポリフェノールなど)は、発がん性物質の働きを抑える効果があります。
また、ピロリ菌感染の有無をチェックし、早めに除菌することも胃がん予防には非常に効果的です。健康診断や内視鏡検査を定期的に受け、自分の胃の状態を知ることが「最大の防御」になります。
食は毎日の楽しみであり、人生を豊かにするものです。
だからこそ、“美味しくて健康的”な食事を心がけたいもの。塩気を控え、自然の旨味を味わい、旬の食材を楽しむ――そんな伝統的な日本の食文化こそ、胃を守る最良の知恵といえるでしょう。