【実話】がんが再発した患者さんにおこったこと・・・余命半年の患者さんがまさかの

今回は、私がこれまでに担当させていただいた患者さんの中でも、特に印象に残っている方のお話をさせていただきます。
仮に「Aさん」と呼ぶことにしましょう。

■ 診断と手術 ― 厳しい現実の始まり

■ 診断と手術 ― 厳しい現実の始まり

Aさんは60歳代の女性でした。診断はすい臓がん。発見されたときにはすでにステージⅢで、がんは後腹膜(背中側の腹膜)にまで広がっていました。
それでもなんとか手術で切除ができ、手術後は順調に回復されました。

すい臓がんは非常に再発のリスクが高い病気です。私たち医療者も、そのことを十分理解したうえで経過を見守っていました。しかし、Aさんは手術後の2年間、再発の兆候もなく、検査結果も安定しており、私たちも安堵していたのです。

■ 再発の知らせ ― 突きつけられた「余命半年」

しかし、手術からちょうど2年が経ったころ、定期検査で異変が見つかりました。
これまで正常だった腫瘍マーカー(CA19-9とCEA)が上昇を始めたのです。CT検査を行うと、手術で切除した部分に「影」が見つかり、局所再発と診断されました。

すぐに抗がん剤治療を開始しましたが、残念ながら効果は得られませんでした。腫瘍マーカーは上昇を続け、再発部位は徐々に大きくなっていきました。
主治医として私が出した結論は「これ以上の治療は困難」というものでした。

そのときAさんに伝えたのは、「今の状態だと余命は半年、もって1年かもしれません」という厳しい現実でした。
静かに話を聞いていたAさんの表情を、私は今でも忘れられません。

■ 決意 ― 「あきらめない」と言った日

ところが、Aさんは絶望するどころか、静かにこう言いました。
「先生、私はまだ終わりたくありません。自分でできること、やってみます。」

その日からAさんの生活は一変しました。
食事、運動、心の持ち方――すべてを見直す「生活の再出発」が始まったのです。

■ 生活の見直し ― 食と運動が変えた日常

■ 生活の見直し ― 食と運動が変えた日常

Aさんはまず、食事を根本から変えました。
以前は忙しさのあまり食事内容をあまり気にしていなかったそうですが、がん再発をきっかけに、「体に良いとされるもの」を意識して取り入れるようになりました。

主食は雑穀米に変え、野菜をたっぷり使った具だくさんのみそ汁を欠かさず作るように。
さらに、ヨーグルト、黒酢、海藻類など、腸や血流に良いとされる食品も毎日の習慣にしました。

また、体力維持のために、無理のない範囲での散歩軽い筋トレも開始。
がんが再発してからも、Aさんはその習慣を継続しました。

■ 奇跡のような変化 ― 「がんが小さくなっている」

数ヶ月が過ぎたころ、ある異変が起こりました。
それは「悪化」ではなく、「改善」でした。

治療をしていないにもかかわらず、CT画像上で再発したがんの影が少しずつ小さくなっていたのです。
腫瘍マーカーも低下傾向を示し、私たち医療チームは目を疑いました。

Aさんにこの結果を伝えると、彼女は涙を浮かべながら笑いました。
「やっぱり、自分の体を信じてよかった…」
その言葉には、覚悟と希望がにじんでいました。

■ 5年目の笑顔 ― がんに負けない生き方

それから年月が流れ、手術から5年、再発から3年が経過しました。
Aさんは今でも外来に元気に通われています。
診察のたびに、「先生、今日も歩いてきました」「最近は味噌汁にキノコを加えてるんです」と笑顔で話してくださいます。

医師として彼女の姿を見るたびに、「生きる力」という言葉の重みを改めて感じます。

■ 医師としての気づき ― 「治す」だけが医療ではない

Aさんの経験を通して、私自身の「がん再発」への考え方も大きく変わりました。
医療はもちろん科学的根拠に基づいて行われるべきですが、それだけでは届かない領域があることを教えられたのです。

ときに、最善の治療を尽くしても、思うような結果が得られないことがあります。
そんなとき、私たち医療者が見落としがちなもの――それは患者さん自身の力です。

患者さんの心の持ち方、生活の工夫、周囲とのつながり。
そうした「全人的なケア」こそが、真の医療の一部であると、今は確信しています。

■ 希望を捨てないで ― がんとともに生きる時代へ

■ 希望を捨てないで ― がんとともに生きる時代へ

近年、医療の進歩により、再発がんに対しても治療の選択肢は増えています。
新しい薬や治療法によって、「治らない」とされたがんがコントロール可能になり、がんと共に生きる時代が始まっています。

そして、それを支えるのは、やはり患者さん自身の「生きようとする力」です。
セルフケア、生活改善、前向きな心――それらが体の中に眠る治癒力を呼び覚ますのかもしれません。

Aさんの姿は、その象徴のように思えます。
医学的に説明できないことが起こるとき、そこには「人間の力」が働いているのかもしれません。

■ 終わりに

がんの再発を知らされた瞬間、ほとんどの方が恐れと絶望を感じます。
しかし、Aさんが教えてくれたのは、「希望を失わない限り、人生は終わらない」ということでした。

がんは「死の宣告」ではありません。
それは「生き方を見つめ直すチャンス」でもあるのです。

Aさんのように、前を向き、自分の体と心に丁寧に向き合うことで、人生は再び輝きを取り戻す。
その姿を、私はこれからも見守り続けたいと思います。