【衝撃事実】がん急増の原因物質がわかった!?大気汚染と肺腺がんとの関係:最新 Nature (ネイチャー)論文より

がん急増の原因物質がわかった! 〜身の回りに潜むリスク「PM2.5」とは〜

近年、日本ではがんで亡くなる人の数が年々増え続けています。
厚生労働省の統計によると、1980年代以降、がんは日本人の死因の第1位となり、現在も増加傾向にあります。なかでも「肺がん」は男女を合わせると最も多いがんの一つです。

一般的に肺がんと聞くと「たばこ」が原因と思う人が多いかもしれません。確かに喫煙は大きな要因ですが、最近では、たばこを吸わない人の肺がんが増えていることが問題になっています。特に女性では喫煙率が低いにもかかわらず、「腺がん」と呼ばれるタイプの肺がんが増えており、その背景には別の原因があるのではないかと注目されてきました。

非喫煙者の肺がんを増やす“見えない敵”

非喫煙者の肺がんを増やす“見えない敵”

そんな中、世界的な科学雑誌『Nature(ネイチャー)』に、がんの発症を促す「ある物質」が関わっているという衝撃的な研究結果が発表されました。
イギリスのがん研究団体が行った「トレイサーX研究」という大規模なプロジェクトの一部で、「大気汚染が肺のがんを進行させる仕組み」を明らかにしたものです。

研究チームが注目したのは、ニュースなどでも耳にすることの多い「PM2.5」という大気汚染物質です。
PM2.5とは、直径が2.5マイクロメートル(1ミリの400分の1)以下という、非常に小さな粒子のこと。空気中を浮遊し、呼吸とともに体内に入ると、肺の奥深くまで到達してしまう厄介な存在です。

このPM2.5は、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器の病気を悪化させるだけでなく、心臓の病気にも関係するといわれてきました。そして今回の研究では、肺がん、とくに非喫煙者に多いタイプの肺がんの発症にも深く関わっている可能性が示されたのです。

PM2.5と肺がんの関係を示すデータ

PM2.5と肺がんの関係を示すデータ

研究では、イギリス、韓国、台湾の3か国で、PM2.5の濃度と肺がんの発症率の関係を調べました。
その結果、いずれの国でも「PM2.5の濃度が高い地域ほど、肺がんの発症率も高い」という傾向がはっきりと見られたのです。

特に多かったのが、「EGFR」という遺伝子に変化を持つタイプの肺がんで、これは非喫煙者に多いことが知られています。
つまり、PM2.5が多い地域では、このタイプの肺がんが増えていたというわけです。

台湾で行われた調査では、PM2.5の濃度が高い地域ほど肺がんの患者数が増加しており、汚染のレベルとがんの発生が密接に関係していることが確認されました。

実験で明らかになった“がんを促すメカニズム”

さらに、マウスを使った実験でも興味深い結果が得られました。
PM2.5を一定期間吸わせたところ、肺の中に「遺伝子に変化を持つ細胞」が増えていたのです。しかも、PM2.5の濃度が高いほど、その異常な細胞の数も増えていました。

また、PM2.5を吸い込んだマウスでは、免疫の一種である「マクロファージ」という細胞が反応し、肺の中で炎症を引き起こす物質を放出していることが確認されました。
つまり、体が異物を追い出そうとして働く過程で、逆に慢性的な炎症が起こり、それががんを後押ししてしまう、ということです。

この実験から、PM2.5が肺の中で「がんの芽」を刺激して成長させ、さらに炎症を通じてがんを進行させるという、新しい仕組みが解明されました。

誰の体にもある「がんの芽」

誰の体にもある「がんの芽」

驚くべきことに、研究チームが健康な人の肺の組織を詳しく調べたところ、がんではないにもかかわらず、多くの人の細胞にすでに「遺伝子の変化」があることがわかりました。
つまり、誰の体にも「がんの芽」となるような細胞が少なからず存在しているということです。

ただし、私たちの体には、こうした異常な細胞を修復したり、排除したりする仕組みが備わっています。そのため、通常はがんに進行することはありません。
しかし、PM2.5のような刺激物が入り込むと、炎症が起きて細胞の変化が進み、本来なら眠っているはずの「がんの芽」が活動を始めてしまうのです。

日本でも油断できないPM2.5

PM2.5といえば、一時期、中国の深刻な大気汚染がニュースで大きく取り上げられました。
「PM2.5濃度が世界保健機関(WHO)の基準の約50倍」と報じられ、日本にもその影響が及ぶのではないかと心配された方も多かったと思います。

日本では中国ほど深刻ではないものの、地域によって差があります。環境省のデータでは、札幌・東京・福岡などの都市でやや高い傾向があるとのことです。
また、PM2.5は工場や車の排気ガス、発電所、ガソリンスタンドなどから発生しますが、実はもっと身近なところにも存在しています。
たとえば、たばこの煙にもPM2.5が多く含まれており、室内で喫煙すると、家族も吸い込んでしまうことになります。いわゆる「副流煙」も大きなリスクなのです。

さらに、春先にニュースでよく耳にする「黄砂」も、PM2.5を運ぶ要因の一つです。
実際に、3〜5月ごろはPM2.5の濃度が上昇することが確認されています。

日常生活でできるPM2.5対策

では、私たちはどのようにPM2.5から身を守ればよいのでしょうか。

まず、PM2.5や黄砂の濃度が高い日には、長時間の外出や屋外での運動を控えることが大切です。
ニュースや天気予報では、PM2.5の濃度情報が公開されていますので、チェックしておくとよいでしょう。

また、外出時はマスクの着用も有効です。PM2.5は非常に小さい粒子ですが、高性能のマスクを使えば、ある程度の吸入を防ぐことができます。
家庭では、たばこの煙を避けることはもちろん、空気清浄機を活用するのも効果的です。購入する際は「PM2.5対応」と明記されている製品を選ぶようにしましょう。

まとめ 〜「見えない汚れ」が命を脅かす〜

まとめ 〜「見えない汚れ」が命を脅かす〜

今回の研究で明らかになったのは、PM2.5が単なる「汚れ」ではなく、私たちの体の中でがんを促す「引き金」になるということです。
すでに体内に存在している「がんの芽」を刺激し、炎症を通じて発症を早める――そんな怖い仕組みが少しずつ明らかになってきました。

外の空気は私たちが日々吸い込むものです。完全に避けることは難しいですが、「知ること」から始めることはできます。
日々の天気予報をチェックする、外出時にマスクを使う、家の空気をきれいに保つ――小さな工夫が自分や家族を守る第一歩です。

がんのリスクを減らすために、食事や運動と同じように、「空気の質」にも少しだけ目を向けてみてください。
それが、これからの時代を健康に生きるための新しい常識になるかもしれません。