
今回ご紹介するのは、足のかかと周辺に痛みを感じる病気の中でも最も多い「足底筋膜炎(そくていきんまくえん)」についてです。
足の裏、特にかかとのあたりに痛みを訴える人は非常に多く、立ち上がった瞬間や歩行時に強く痛みが出ることが特徴です。
この病気を理解するためには、まず足の構造について少し知っておく必要があります。
足には多くの骨があり、足首の関節を中心に上下に動くようになっています。足の指は手と同じように5本あり、それぞれが骨で支えられています。
しかし、足には手とは大きく異なる特徴があります。それが「アーチ構造」です。
足には「縦アーチ」と「横アーチ」の2種類があります。
縦アーチは足を横から見たときに分かるもので、内側と外側の2本が存在します。内側縦アーチは土踏まずを形成し、外側縦アーチはより低い弧を描いて体重を支えます。
一方、横アーチは足の指の付け根を結ぶようにして横方向に形成されており、足の甲を上から見ると軽く湾曲しているのがわかります。
この縦と横のアーチが組み合わさることで、足全体は「はまぐりの貝殻」のように立体的な構造になっています。
この構造により、歩行や走行の際に地面からの衝撃を吸収し、スムーズな体重移動を可能にしています。
では、このアーチはどのようにして保たれているのでしょうか。
実は、このアーチの下には「足底筋膜」と呼ばれる強靭な膜状の組織が走っており、それがアーチを支える“弓の弦”のような役割を果たしているのです。
足底筋膜は、かかとの骨(踵骨)から足の指の付け根までピンと張って走っている厚い膜です。
歩行時には、この足底筋膜が伸び縮みしながら足のアーチを支え、地面を蹴り出す際の「バネのような推進力」を生み出しています。
具体的には、かかとが地面に着地した瞬間には筋膜が短縮した状態になり、次に体重が前方に移動してつま先で地面を蹴るときに筋膜が伸びます。このとき、筋膜が引っ張られて蓄えた力を使い、効率よく体を前に押し出しているのです。
しかし、この伸び縮みを繰り返すことで、かかと付近の筋膜と骨の付着部には常に強い負担がかかっています。
特に立ち仕事が多い人や長距離を歩く人、あるいは運動量が多い人では、この部位に小さな損傷や炎症が生じやすくなります。
この炎症こそが「足底筋膜炎」の正体です。

炎症が起こるのは、主にかかとの骨と筋膜の接着部分です。
そのため、典型的な症状は「かかとの痛み」です。特に朝起きて最初の一歩を踏み出したときや、長時間座った後に立ち上がるとき、また長く歩いたあとなどに痛みが強く現れます。
症状が悪化すると、かかとを地面につけるだけでも鋭い痛みを感じ、歩行そのものが困難になることもあります。
ただし、足底筋膜炎は炎症が原因であり、骨折や神経の損傷のような重大な病気ではありません。そのため、時間をかけて治療を行えば、ほとんどの場合で自然に回復します。
足底筋膜炎の治療は、基本的に「保存的治療」で行います。
つまり、手術を必要とせず、日常生活の中で症状を和らげながら回復を促す方法です。
代表的な治療法としては以下のようなものがあります。
炎症を抑えるために、飲み薬の消炎鎮痛剤が用いられます。
また、湿布や塗り薬を使う場合もありますが、足の裏は湿布が剥がれやすく靴が履きにくくなるため、塗り薬が好まれることが多いです。
「足底板(そくていばん)」や「インソール」は、靴の中敷きに挿入して使う補助具です。
特にかかとの部分にクッション性を持たせることで、体重がかかる際の衝撃を和らげ、炎症部位への負担を軽減します。
また、足のアーチを支える「アーチサポート」が組み込まれたタイプもあり、これによって足底筋膜の張力が適度に分散されます。
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)や足底筋膜をやさしく伸ばすストレッチは、筋膜への負担を軽減し、痛みの軽減に効果的です。
急激な運動や無理なストレッチは逆効果になるため、医師や理学療法士の指導のもとで行うことが望ましいでしょう。

足底筋膜炎は、日々の歩行や立位動作のたびに患部へ力が加わるため、どうしても治りにくい傾向があります。
通常、数週間から数か月、場合によっては半年ほどかかることもあります。
しかし、焦らずに適切なケアを続けていけば、最終的にはほとんどの方が改善します。
特に大切なのは「無理をしないこと」。痛みを我慢して長時間歩くと炎症が悪化し、回復が遅れてしまいます。
また、クッション性の高い靴や柔らかい底材のスニーカーを選ぶことも有効です。ヒールの高い靴や硬い底の靴は避け、足に優しい環境を整えることが大切です。
足底筋膜炎は、現代人に多い「かかとの痛み」の代表的な病気です。
長時間の立ち仕事や運動のしすぎなど、足に負担をかける生活習慣が原因となることが多いですが、きちんと休ませ、適切な治療を続けることで必ず回復します。
治療の基本は「保存的治療」であり、手術を必要とするケースはごくまれです。
足底筋膜炎は、体の土台である“足”を見直す良いきっかけにもなります。日頃から靴選びや姿勢、歩き方に注意し、足をいたわる生活を心がけましょう。