
今回は、「肉を食べる人」と「野菜中心の人」、どちらががんになりやすいのかというテーマです。
日々の食事は、私たちの健康を大きく左右します。お肉も魚もバランスよく食べているという方が多いと思いますが、中には「動物性の食品は一切食べない」という、いわゆるベジタリアンやヴィーガンの方もいます。また、「魚は食べるけれどお肉は食べない」というペスクタリアンの方もいますね。
一般的に、野菜を多く食べるとがんのリスクが下がり、逆に牛・豚・羊などの赤身肉を食べすぎると、がんのリスクが上がると言われています。
理屈の上では、菜食中心の人の方が健康的に思えますが、実際にはどうなのでしょうか?
今回は、肉食と菜食、それぞれの食生活ががんの発症にどんな影響を与えるのかを調べた、大規模な研究をご紹介します。
紹介するのは、2022年に医学誌「BMC Medicine」に掲載されたイギリスの研究です。
イギリスの国民データベースに登録されている人の中から、40万人以上を対象に行われた、非常に大規模な調査です。
参加者には、どんな食生活を送っているのか、特別な食事制限をしているのかといった詳しいアンケートが行われました。
その回答をもとに、人々を次の4つのグループに分けています。
調査の結果、ベジタリアンは全体の約1.8%、ペスクタリアンが2.3%、魚と鶏肉を食べる人が1.1%、そして圧倒的に多かったのが肉食の人で、全体の約95%を占めていました。
この4つのグループについて、平均10年以上にわたり観察を続け、がんの発症率を比較しました。
「菜食の人の方が健康的な生活をしているのでは?」
そう思う方も多いでしょう。実際、ベジタリアンは健康意識が高い人が多く、たばこを吸わなかったり、お酒を控えたり、運動を習慣にしていることも少なくありません。
そうした生活習慣の違いが結果に影響しないように、この研究では、年齢や性別、喫煙や飲酒の習慣、運動量、体型など、さまざまな要素を調整したうえで比較しています。
つまり、できるだけ「食事の違いだけで、がんのリスクに差が出るか」を公平に調べたというわけです。
さて、気になる結果ですが――。
肉食の人に比べて、ベジタリアンの人はすべてのがんの発症リスクが約13%低いことがわかりました。
さらに、がんの種類別に見ると、
次に、魚は食べるペスクタリアンの場合は、肉食の人よりもがん全体のリスクが約7%低下していました。
個別に見ると、皮膚がんの一種であるメラノーマのリスクが約32%低くなっていましたが、他のがんでは有意な差はありませんでした。
一方で、魚と鶏肉を食べるけれど赤身肉を食べない人では、肉食の人と比べて明確な差はほとんど見られませんでした。
つまり、この研究では「赤身肉を避けるだけでは大きな差はない」という結果になったのです。
これらの結果から見ると、がんのリスクという点では、野菜を中心にした食事、特にベジタリアンの食生活がより有利であることがわかります。
肉食の人よりもがん全体のリスクが低く、特に大腸がんや前立腺がんに関しては効果がはっきりと見られました。
ただし、この結果をそのまま「肉を食べるとがんになる」と解釈するのは早計です。
この研究はあくまで「イギリスの人々」を対象にしたものであり、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。
また、がん以外の病気、たとえば心臓病や糖尿病、そして寿命全体への影響までは調べられていません。
日本の食文化は、もともと魚や野菜を多く取り入れた「和食」が基本です。
味噌汁や豆腐、野菜の煮物、魚の焼き物など、植物性と動物性の食材がほどよく組み合わされています。
そのため、無理に肉を完全にやめる必要はありません。
むしろ「肉も魚も食べたいけれど、野菜をもっと増やす」くらいの意識が、健康的で続けやすいバランスかもしれません。
お肉には、筋肉や血液をつくるうえで欠かせないたんぱく質や鉄分、ビタミンB群などが含まれています。
一方で、野菜や豆類には、がんのリスクを下げるとされる食物繊維や抗酸化成分が豊富です。
大切なのは、どちらかを極端に制限するのではなく、「少し控えめに」「できるだけバランスよく」という姿勢です。
たとえば、

今回の研究では、ベジタリアンの方ががん全体のリスクがやや低いという結果が出ました。
とはいえ、菜食だけが正解というわけではありません。
魚や肉を含む食事にも、それぞれの栄養的な利点があります。
私たちにできることは、「何を食べないか」ではなく、「どう食べるか」を意識することです。
つまり、
このような食生活が、がんの予防だけでなく、日々の健康維持にもつながります。
お肉を食べる日も、野菜をたっぷり添える。
外食の日が続いたら、翌日は家庭であっさりした和食を。
そんな小さな積み重ねが、体を守り、長く元気に過ごすための一番の近道なのです。