肉食 vs 菜食(ベジタリアン)がんリスクはどっちが高い?

肉食 vs 菜食(ベジタリアン)がんリスクはどっちが高い?

肉食と菜食、がんのリスクが高いのはどっち?

肉食と菜食、がんのリスクが高いのはどっち?

今回は、「肉を食べる人」と「野菜中心の人」、どちらががんになりやすいのかというテーマです。
日々の食事は、私たちの健康を大きく左右します。お肉も魚もバランスよく食べているという方が多いと思いますが、中には「動物性の食品は一切食べない」という、いわゆるベジタリアンやヴィーガンの方もいます。また、「魚は食べるけれどお肉は食べない」というペスクタリアンの方もいますね。

一般的に、野菜を多く食べるとがんのリスクが下がり、逆に牛・豚・羊などの赤身肉を食べすぎると、がんのリスクが上がると言われています。
理屈の上では、菜食中心の人の方が健康的に思えますが、実際にはどうなのでしょうか?
今回は、肉食と菜食、それぞれの食生活ががんの発症にどんな影響を与えるのかを調べた、大規模な研究をご紹介します。

40万人を対象にしたイギリスの研究

紹介するのは、2022年に医学誌「BMC Medicine」に掲載されたイギリスの研究です。
イギリスの国民データベースに登録されている人の中から、40万人以上を対象に行われた、非常に大規模な調査です。
参加者には、どんな食生活を送っているのか、特別な食事制限をしているのかといった詳しいアンケートが行われました。
その回答をもとに、人々を次の4つのグループに分けています。

  1. ベジタリアン(菜食主義者)
     乳製品は食べるけれど、魚、鶏肉、牛・豚・羊などの肉は一切食べない人。
  2. ペスクタリアン
     乳製品と魚は食べるが、鶏肉や赤身肉は食べない人。いわば「魚を食べるベジタリアン」です。
  3. 魚と鶏肉を食べる人
     乳製品、魚、鶏肉は食べるけれど、赤身肉は食べない人。
  4. 肉食の人(制限なし)
     乳製品、魚、鶏肉、赤身肉、すべて食べる人。

調査の結果、ベジタリアンは全体の約1.8%、ペスクタリアンが2.3%、魚と鶏肉を食べる人が1.1%、そして圧倒的に多かったのが肉食の人で、全体の約95%を占めていました。
この4つのグループについて、平均10年以上にわたり観察を続け、がんの発症率を比較しました。

研究では公平な条件で比較

「菜食の人の方が健康的な生活をしているのでは?」
そう思う方も多いでしょう。実際、ベジタリアンは健康意識が高い人が多く、たばこを吸わなかったり、お酒を控えたり、運動を習慣にしていることも少なくありません。
そうした生活習慣の違いが結果に影響しないように、この研究では、年齢や性別、喫煙や飲酒の習慣、運動量、体型など、さまざまな要素を調整したうえで比較しています。
つまり、できるだけ「食事の違いだけで、がんのリスクに差が出るか」を公平に調べたというわけです。

結果:がん全体のリスクはベジタリアンが一番低い

さて、気になる結果ですが――。
肉食の人に比べて、ベジタリアンの人はすべてのがんの発症リスクが約13%低いことがわかりました。
さらに、がんの種類別に見ると、

  • 前立腺がんのリスクは約43%低い
  • 大腸がんのリスクは約27%低い
    という結果が出ています。
    ただし、それ以外のがんでは、明確な差は見られませんでした。

次に、魚は食べるペスクタリアンの場合は、肉食の人よりもがん全体のリスクが約7%低下していました。
個別に見ると、皮膚がんの一種であるメラノーマのリスクが約32%低くなっていましたが、他のがんでは有意な差はありませんでした。

一方で、魚と鶏肉を食べるけれど赤身肉を食べない人では、肉食の人と比べて明確な差はほとんど見られませんでした。
つまり、この研究では「赤身肉を避けるだけでは大きな差はない」という結果になったのです。

菜食中心の食事が「がん予防」に有利?

これらの結果から見ると、がんのリスクという点では、野菜を中心にした食事、特にベジタリアンの食生活がより有利であることがわかります。
肉食の人よりもがん全体のリスクが低く、特に大腸がんや前立腺がんに関しては効果がはっきりと見られました。

ただし、この結果をそのまま「肉を食べるとがんになる」と解釈するのは早計です。
この研究はあくまで「イギリスの人々」を対象にしたものであり、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。
また、がん以外の病気、たとえば心臓病や糖尿病、そして寿命全体への影響までは調べられていません。

日本人にとってのバランスのとり方

日本の食文化は、もともと魚や野菜を多く取り入れた「和食」が基本です。
味噌汁や豆腐、野菜の煮物、魚の焼き物など、植物性と動物性の食材がほどよく組み合わされています。
そのため、無理に肉を完全にやめる必要はありません。
むしろ「肉も魚も食べたいけれど、野菜をもっと増やす」くらいの意識が、健康的で続けやすいバランスかもしれません。

お肉には、筋肉や血液をつくるうえで欠かせないたんぱく質や鉄分、ビタミンB群などが含まれています。
一方で、野菜や豆類には、がんのリスクを下げるとされる食物繊維や抗酸化成分が豊富です。
大切なのは、どちらかを極端に制限するのではなく、「少し控えめに」「できるだけバランスよく」という姿勢です。

たとえば、

  • 赤身肉を食べる回数を週1~2回にする
  • できるだけ脂身の少ない部位を選ぶ
  • 食事にサラダや温野菜を必ず添える
  • 肉料理のときも、豆腐やきのこ、野菜を一緒に調理する
    こうした工夫だけでも、体への負担を減らし、がんのリスクを下げる助けになります。

まとめ:食事は「制限」ではなく「選び方」

まとめ:食事は「制限」ではなく「選び方」

今回の研究では、ベジタリアンの方ががん全体のリスクがやや低いという結果が出ました。
とはいえ、菜食だけが正解というわけではありません。
魚や肉を含む食事にも、それぞれの栄養的な利点があります。
私たちにできることは、「何を食べないか」ではなく、「どう食べるか」を意識することです。

つまり、

  • 野菜や果物を多く取り入れる
  • 肉の食べすぎを控える
  • 魚や大豆食品を上手に取り入れる
  • バランスの取れた食事を楽しむ

このような食生活が、がんの予防だけでなく、日々の健康維持にもつながります。

お肉を食べる日も、野菜をたっぷり添える。
外食の日が続いたら、翌日は家庭であっさりした和食を。
そんな小さな積み重ねが、体を守り、長く元気に過ごすための一番の近道なのです。