トランス脂肪酸でがんのリスクが高まる

私たちの毎日の食事に欠かせない「油」。
料理の味を引き立て、エネルギー源としても重要な存在ですが、一方で「体に良い油」と「体に悪い油」があることもよく知られています。
中でも「悪い油」として代表的なのが、トランス脂肪酸です。

これまでトランス脂肪酸は「心臓病のリスクを高める油」として知られてきましたが、近年の研究によって、がんの発症リスクを高める可能性も指摘されるようになっています。
今回は、最新の医学研究をもとに、トランス脂肪酸とがんとの関係について詳しく解説します。

トランス脂肪酸とは?構造から見える「不自然な油」

トランス脂肪酸とは?構造から見える「不自然な油」

脂肪酸は大きく分けて、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。
このうち「不飽和脂肪酸」は、化学構造の違いによって「シス型」と「トランス型」に分けられます。
私たちの体に自然に存在するのは「シス型」ですが、人工的な加工や高温処理の過程で「トランス型」に変化したものが、いわゆるトランス脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、植物油を加工する際や、マーガリン、ショートニングなどを製造する工程で生成されます。
また、これらを使用したパン、クッキー、ケーキ、スナック菓子、ファストフードなどにも多く含まれています。
さらに、牛や羊などの反芻動物の胃の中でも微生物の作用により自然に生成されるため、牛肉や乳製品(バター、チーズなど)にも微量に含まれています。

トランス脂肪酸とがんの関係:最新の研究結果

トランス脂肪酸とがんの関係:最新の研究結果

2024年6月に発表された最新のメタアナリシス(複数の研究結果を統合して解析する方法)では、トランス脂肪酸の摂取とがん発症の関係がより明確になりました。

この報告によると、

  • トランス脂肪酸の摂取が前立腺がんのリスクを49%上昇させる
  • 大腸がんのリスクを26%上昇させる

という結果が示されました。

また、別のヨーロッパの大規模前向き研究では、乳がんのリスクが14%上昇するというデータもあります。
これらの結果から、トランス脂肪酸の摂取が複数のがんのリスクを高めることが、ほぼ確実視されつつあるのです。

どうしてトランス脂肪酸が「がん」を引き起こすのか?

どうしてトランス脂肪酸が「がん」を引き起こすのか?

では、なぜトランス脂肪酸ががんのリスクを高めるのでしょうか。
そのメカニズムについてはまだ研究段階ですが、いくつかの仮説が挙げられています。

  1. 慢性的な炎症の促進
     トランス脂肪酸を多く摂取すると、体内で炎症反応が起きやすくなります。
     慢性炎症は細胞のDNAにダメージを与え、がん化の引き金になることが知られています。
  2. 細胞膜の異常
     細胞膜は脂質で構成されていますが、トランス脂肪酸が多いと膜の流動性が低下し、細胞の働きが乱れます。これが細胞の老化や変異を促進すると考えられています。
  3. 酸化ストレスの増大
     トランス脂肪酸の代謝過程で発生する活性酸素が細胞を傷つけ、がん化を誘発する可能性があります。

つまり、トランス脂肪酸は単に「太る」「コレステロールが上がる」といった問題にとどまらず、細胞レベルでの健康を損なうリスクを持っているのです。

どのくらい減らせばいい?WHOの基準と日本人の実態

世界保健機関(WHO)は、心血管疾患のリスクを下げ、健康を守るために、
トランス脂肪酸の摂取量を「総エネルギー摂取量の1%未満」に抑えることを勧告しています。

日本人の平均的なエネルギー摂取量を1日約1,900kcalとすると、
その1%に相当するトランス脂肪酸の量はおよそ2gとなります。
つまり、1日2gを超えないようにすることが理想です。

幸い、日本人の食生活では欧米ほどトランス脂肪酸の摂取量は多くありません。
一般的な食事をしていれば健康への影響は少ないとされていますが、
近年ではファストフードや輸入菓子の利用が増えており、知らないうちに摂取量が増えている可能性もあります。

トランス脂肪酸を減らすための工夫

トランス脂肪酸を完全に避けることは難しいですが、次のような工夫で摂取量を大幅に減らすことができます。

  1. 食品表示をチェックする習慣をつける
     最近では「トランス脂肪酸 0g」や「トランス脂肪酸フリー」と明記された商品も増えています。
     購入時に栄養成分表示を確認し、できるだけトランス脂肪酸の少ない食品を選びましょう。
  2. 加工食品や揚げ物を控える
     市販のスナック菓子、ドーナツ、パイ、インスタント食品などはトランス脂肪酸を多く含むことがあります。
     「おやつは手作り」「揚げ物は外食より家庭で」などの工夫も有効です。
  3. 良質な油を選ぶ
     オリーブオイルやえごま油、アマニ油など、オメガ3系・オメガ9系の不飽和脂肪酸を含む油は健康的です。
     魚に多く含まれるDHA・EPAなども抗炎症作用があり、がん予防に役立つとされています。

まとめ:小さな意識で未来の健康を守る

トランス脂肪酸は、私たちの身近な食品に潜む「見えないリスク」です。
摂取量が増えると、心臓病だけでなく、前立腺がん・大腸がん・乳がんなどのリスクを高めることが最新研究で示されています。

しかし、私たち一人ひとりが少し意識を変えるだけで、リスクを大きく減らすことができます。

  • 加工食品を減らす
  • 食品表示を確認する
  • 良質な油を選ぶ

これらのシンプルな習慣が、将来の健康を守る確かな一歩になります。
「油の質」を見直すことは、「自分の体を大切にする」ことにつながります。

今日からできることを少しずつ取り入れて、がんになりにくい体をつくっていきましょう。