私たちの毎日の食事に欠かせない「油」。
料理の味を引き立て、エネルギー源としても重要な存在ですが、一方で「体に良い油」と「体に悪い油」があることもよく知られています。
中でも「悪い油」として代表的なのが、トランス脂肪酸です。
これまでトランス脂肪酸は「心臓病のリスクを高める油」として知られてきましたが、近年の研究によって、がんの発症リスクを高める可能性も指摘されるようになっています。
今回は、最新の医学研究をもとに、トランス脂肪酸とがんとの関係について詳しく解説します。

脂肪酸は大きく分けて、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があります。
このうち「不飽和脂肪酸」は、化学構造の違いによって「シス型」と「トランス型」に分けられます。
私たちの体に自然に存在するのは「シス型」ですが、人工的な加工や高温処理の過程で「トランス型」に変化したものが、いわゆるトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、植物油を加工する際や、マーガリン、ショートニングなどを製造する工程で生成されます。
また、これらを使用したパン、クッキー、ケーキ、スナック菓子、ファストフードなどにも多く含まれています。
さらに、牛や羊などの反芻動物の胃の中でも微生物の作用により自然に生成されるため、牛肉や乳製品(バター、チーズなど)にも微量に含まれています。

2024年6月に発表された最新のメタアナリシス(複数の研究結果を統合して解析する方法)では、トランス脂肪酸の摂取とがん発症の関係がより明確になりました。
この報告によると、
という結果が示されました。
また、別のヨーロッパの大規模前向き研究では、乳がんのリスクが14%上昇するというデータもあります。
これらの結果から、トランス脂肪酸の摂取が複数のがんのリスクを高めることが、ほぼ確実視されつつあるのです。

では、なぜトランス脂肪酸ががんのリスクを高めるのでしょうか。
そのメカニズムについてはまだ研究段階ですが、いくつかの仮説が挙げられています。
つまり、トランス脂肪酸は単に「太る」「コレステロールが上がる」といった問題にとどまらず、細胞レベルでの健康を損なうリスクを持っているのです。
世界保健機関(WHO)は、心血管疾患のリスクを下げ、健康を守るために、
トランス脂肪酸の摂取量を「総エネルギー摂取量の1%未満」に抑えることを勧告しています。
日本人の平均的なエネルギー摂取量を1日約1,900kcalとすると、
その1%に相当するトランス脂肪酸の量はおよそ2gとなります。
つまり、1日2gを超えないようにすることが理想です。
幸い、日本人の食生活では欧米ほどトランス脂肪酸の摂取量は多くありません。
一般的な食事をしていれば健康への影響は少ないとされていますが、
近年ではファストフードや輸入菓子の利用が増えており、知らないうちに摂取量が増えている可能性もあります。
トランス脂肪酸を完全に避けることは難しいですが、次のような工夫で摂取量を大幅に減らすことができます。
トランス脂肪酸は、私たちの身近な食品に潜む「見えないリスク」です。
摂取量が増えると、心臓病だけでなく、前立腺がん・大腸がん・乳がんなどのリスクを高めることが最新研究で示されています。
しかし、私たち一人ひとりが少し意識を変えるだけで、リスクを大きく減らすことができます。
これらのシンプルな習慣が、将来の健康を守る確かな一歩になります。
「油の質」を見直すことは、「自分の体を大切にする」ことにつながります。
今日からできることを少しずつ取り入れて、がんになりにくい体をつくっていきましょう。