近年、重症患者の呼吸管理において腹臥位療法(うつ伏せ療法)が注目されています。この療法は、**急性呼吸窮迫症候群(ARDS)**に対して有効な治療方法の一つとして広く用いられています。この記事では、腹臥位療法の概要、効果、実施時の注意点について解説します。

腹臥位療法とは、ARDS患者に対してうつ伏せの姿勢を取らせることで呼吸状態を改善する治療法です。特に、発症後48時間以内の早期段階で12時間以上実施することが推奨されています。この治療法は、肺の保護と酸素化の向上を目指しており、ARDS治療ガイドラインでも条件付きで推奨されています。
ARDSは感染症や外傷などが原因で発症することが多く、肺に水がたまる肺水腫から始まり、病状が進行すると肺が硬化する肺線維化が生じます。この結果、肺が適切に酸素を取り込めなくなり、生命維持が困難になることがあります。このような患者には人工呼吸器を用いて呼吸を補助しながら、肺への負担を最小限に抑える肺保護戦略が行われます。
人工呼吸器を用いると、横隔膜の動きが制限され、背中側の肺胞が十分に広がらない問題があります。また、仰向けの状態では心臓や重力によって肺が圧迫されるため、酸素供給の効率が低下します。このような状況では、健康な肺にばかり空気が送り込まれ、負担が集中することで**人工呼吸器関連肺障害(VILI)**や、換気血流比不均衡による低酸素症が生じるリスクがあります。
腹臥位療法では、患者をうつ伏せにすることで以下のような効果が期待されます:
ある研究では、重症ARDS患者に腹臥位療法を実施することで、90日間の死亡率が有意に低下したことが報告されています。これにより、腹臥位療法はARDS患者の治療における重要な手段とされています。
腹臥位療法は有益な治療法である一方で、リスクや注意点も伴います。具体的には以下の点に注意が必要です:

腹臥位療法を安全に行うためには、事前準備と実施後の管理が重要です。以下の点に留意してください:
腹臥位療法は、ARDS患者の呼吸状態を改善する有効な治療法です。発症後48時間以内の早期介入と長時間(12時間以上)の実施が推奨されており、酸素化の改善や人工呼吸器関連肺障害の予防に寄与します。しかし、事故抜管や褥瘡、低酸素血症といったリスクも伴うため、安全な管理が欠かせません。
現場では、腹臥位療法を行う際に事前準備を徹底し、実施後も継続的に患者の状態を評価することが求められます。この治療法を適切に運用することで、多くのARDS患者が生命を救われる可能性が広がります。
本記事が、医療従事者の皆様の学びや現場での実践に役立つことを願っています。