救急看護師が知っておくべき迅速導入気管挿管(Rapid Sequence Intubation: RSI)
救急外来(ER)では、重症患者に対して気道確保や人工呼吸器を用いた呼吸管理が必要になる場面が多々あります。その中でも、緊急で気管挿管が必要になるケースがあります。
本記事では、迅速導入気管挿管(RSI)の重要性や手順について詳しく説明します。
気管挿管が必要となる状況
一般的に気管挿管が必要とされるのは以下のような場合です
- 気道確保困難: 気道閉塞のリスクがある患者。
- 意識障害: GCS(グラスゴー昏睡スケール)の低下など。
- 酸素化不良: パルスオキシメーターの値が低い場合や、酸素療法で十分な酸素化が得られない場合。
- 換気障害: 高い二酸化炭素(CO2)値や呼吸筋疲労。
- 大量喀血や吐物: 気道を塞ぐリスクがある場合。
- ショック状態: 臓器への酸素供給が不十分な場合。
これらを覚えやすくするために “MOVES” という略語が用いられます
- M: Maintain airway(気道確保)
- O: Oxygenation(酸素化不良)
- V: Ventilation(換気障害)
- E: Expectoration(喀痰困難や吐物)
- S: Shock(ショック状態)
挿管時のリスク:嘔吐と誤嚥
気管挿管は侵襲的な処置であり、咽頭や気道への刺激が嘔吐を誘発する可能性があります。
この嘔吐により吐物を誤嚥すると、誤嚥性肺炎を引き起こし、患者の状態がさらに悪化するリスクがあります。そのため、このリスクを最小限に抑えるために迅速導入気管挿管(RSI)が実施されます。
迅速導入気管挿管(RSI)とは
RSIは、嘔吐リスクのある患者に対して、短時間で鎮静剤と筋弛緩薬を投与し、気管挿管を迅速に実施する手法です。
この方法により、誤嚥性肺炎のリスクを低減します。
RSIが必要な患者の特徴
- フルストマック状態: 最後に食事をとった時間が不明な場合や、絶食が十分でない場合。
- 腸閉塞やイレウスの患者: 胃内容物が逆流するリスクが高い。
胃内容物は通常、約3〜6時間の滞在時間がありますが、救急外来では食事時間が明確でない患者が多くいます。これらの患者に対しては慎重なアプローチが必要です。
迅速導入気管挿管の具体的な手順
- 酸素投与の開始
- 100%酸素をバックバルブマスクで投与します。
- サクションチューブを準備し、必要に応じて口腔内や気道分泌物を吸引します。
- 静脈路確保と薬剤投与
- 静脈路を確保し、医師の指示のもと、以下の薬剤を投与します。
- 鎮静薬: ミダゾラムなど。
- 筋弛緩薬: ロクロニウム(エスラックス)など。
- 鎮静薬の投与後、すぐに筋弛緩薬を投与します。
- 酸素投与の継続
- 鎮静薬と筋弛緩薬が効き始めるまでの1分〜1分30秒間、酸素投与を継続します。
- この間、陽圧換気は基本的に行いません(胃内容物の逆流リスクを減らすため)。
- 気管挿管の実施
- 筋弛緩薬の効果が現れるタイミングで挿管を開始します。
- 挿管後、速やかにカフを10cc注入し、以下の方法でチューブの位置を確認します
- 聴診器で呼吸音を確認。
- EtCO2モニターでの数値表示確認。
- チューブの固定
RSIの際の注意点
- 血圧低下への対策:
- 鎮静薬による血圧低下を防ぐため、昇圧剤を準備しておく必要があります。
- 酸素化と脱窒素の管理:
- 胃内に空気が入り込むことで嘔吐を誘発するリスクがあるため、陽圧換気は避けます。
- 酸素飽和度(SpO2)が90%まで低下することは許容範囲とされるため、過度に焦らず対応します。
看護師の役割
救急外来では、気管挿管は医師が主に行いますが、看護師の役割も重要です。以下の準備と対応が求められます
- 気管挿管に必要な器具や薬剤の準備。
- サクションチューブの操作やバイタルサインのモニタリング。
- 医師の指示を的確に理解し、処置がスムーズに行えるようサポート。
まとめ
迅速導入気管挿管(RSI)は、緊急外来で頻繁に求められる重要な手技の一つです。
適切な手順と準備により、患者の安全性を確保し、リスクを最小限に抑えることができます。
看護師として、RSIの流れや注意点を理解し、医療チーム全体でのスムーズな対応に努めましょう。
本記事が、迅速導入気管挿管の理解を深める一助となれば幸いです。