夜間の断食13時間以上で「がん」を減らす可能性
今回は、「夜間の断食(絶食)」と「がん」との関係についてのお話です。
「断食」と聞くと、長時間食事を我慢する過酷なイメージを持つ方もいるかもしれません。
ですが、ここで言う“夜間の断食”とは、夕食から翌日の朝食までの間に何も口にしない時間のこと。
つまり、誰でも日常生活の中で取り入れやすい“食べない時間”を指します。

ちょっと考えてみてください。
あなたは夕食をとってから翌朝の朝食まで、何時間あいていますか?
私の場合、少し夕食が遅めで夜8時頃に食べ、翌朝は9時か10時ごろに軽く朝食をとります。
ですので、だいたい13〜14時間の断食になります。
近年、このように「半日ほど食べない時間をつくる」ことが、健康や美容の分野で注目を集めています。
“プチ断食”や“間欠的ファスティング”という言葉を耳にしたことのある方も多いでしょう。
ダイエット効果が期待できるだけでなく、最近では生活習慣病の予防や長寿との関連も報告されています。
夜の断食が健康に良いとされる理由の一つに、「オートファジー(自食作用)」があります。
これは、細胞が古くなったタンパク質や不要な成分を分解し、再利用する仕組みです。
簡単に言えば、体の細胞を掃除してリセットする時間。
夜の間にしっかり食べない時間を確保すると、このオートファジーが活発に働き、
体内の炎症を抑えたり、老化を遅らせたりする効果が期待できると考えられています。
さらに最近の研究では、この夜間断食ががんの発症や再発を減らす可能性があることが示唆されているのです。
まず、がん予防の観点からの研究を紹介します。
2022年5月、スウェーデンで行われた大規模な観察研究が『フロンティアズ・イン・ニュートリション(Frontiers in Nutrition)』という学術誌に報告されました。
この研究では、食事のタイミングとがんによる死亡リスクの関係を調べたところ、
朝食から夕食までの間隔が13時間と長いグループでは、11時間と短いグループに比べて、がんによる死亡リスクが約半分になっていたのです。
つまり、夜間の断食時間が長いほど、がんで亡くなるリスクが低下する可能性があるということ。
「食べない時間を少し長くするだけ」で、体にこれほどの違いが生まれるというのは驚きですね。

次に、がんの再発に関する研究を見てみましょう。
2016年に医学誌『JAMA Oncology』に発表された論文では、
アメリカの早期乳がん患者2400名以上を対象に、夜間の絶食時間と再発率の関係を調査しました。
結果は明確でした。
夜間の絶食時間が13時間以上のグループは、13時間未満のグループに比べて、
がんの再発率が36%も低かったのです。
このことからも、夜間に13時間以上食べない時間をつくることが、
がんの再発を抑える重要な要素である可能性が示唆されました。
では、なぜ夜間の断食時間が長いと、がんのリスクが下がるのでしょうか?
その理由の一つが「血糖値」と「慢性炎症」にあります。
私たちが食事をすると血糖値が上がりますが、食後すぐに寝てしまうと、
寝ている間も血糖値が高い状態が続きます。
この状態が長く続くと、体の中で慢性的な炎症が起こりやすくなります。
実際、乳がん患者を対象とした研究でも、夜間の絶食時間が長い人ほど、
糖尿病の指標であるHbA1cが低かったことが報告されています。
つまり、夜間に食べないことで血糖値が安定し、炎症を抑えることができるのです。
そして、この“炎症”こそが、がん細胞の成長や再発を促す一因。
逆に言えば、夜の食べない時間を増やすことで、体の炎症を鎮め、がんの芽を育てにくくすることができると考えられます。
これらの研究結果から考えると、夜間の断食時間の目安は13時間以上。
たとえば、夜8時に夕食をとったら、翌朝9時に朝食を食べる――
これでちょうど13時間の断食時間が確保できます。
ただし、仕事や家事の関係で「夕食が遅い」「朝食は早く食べたい」という方も多いでしょう。
そんな場合でも大丈夫です。
大切なのは「できるだけ夜は食べない時間を長くする」という意識を持つことです。
夜遅くに小腹が空いたら、温かいお茶や白湯などで気持ちを落ち着けるのもおすすめです。
無理に我慢するより、「自分の生活に合わせて少しずつ延ばす」ことが長続きのコツです。

・夜間の断食とは、夕食から朝食までの食べない時間のこと。
・13時間以上の断食で、がんの発症・再発リスクが低下する可能性がある。
・その理由は、血糖値の安定と慢性炎症の抑制にある。
・理想は「夜8時に夕食 → 翌朝9時に朝食」。
・難しい場合も、少しずつ夜食の習慣を減らすだけでも効果的。
食べるものだけでなく、「食べない時間」もまた、健康を左右する大切な要素です。
無理なく続けられる夜間断食を取り入れて、体のリズムを整え、がんをはじめとした生活習慣病のリスクを下げていきましょう。
そして何より、翌朝の食事を“心からおいしく感じられる”――そんな体づくりを目指していきたいですね。