〜免疫力を高める生活習慣とは〜
私たちの体には、外から入ってくるウイルスや細菌、そして体の中で生まれてしまう「がん細胞」などを見つけ出して攻撃する、頼もしい防衛システムがあります。これを「免疫」といいますが、その中でも特に大切な役割を担っているのが「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」です。

NK細胞は、血液の中を常にパトロールしている「免疫の警察官」のような存在です。もしも体の中に異常な細胞、つまりがん細胞のようなものを見つけると、すぐに攻撃して排除します。
この働きがしっかりしていれば、がん細胞が増える前に処理されるのですが、反対にNK細胞の数が少なかったり、働きが弱くなっていると、体の中で異常な細胞が増えやすくなってしまうのです。
実際に、NK細胞の活性(働きの強さ)が低い人は、がんを発症する可能性が高いことが報告されています。また、がんの治療を受けたあとに再発するリスクも高くなるといわれています。つまり、NK細胞が元気かどうかは、がんのリスクや治療の経過にも深く関わっているのです。

2019年に海外の医学雑誌に掲載された研究では、NK細胞の活性が「がんの予測」に使えるかどうかが調べられました。対象となったのは、前立腺がんの疑いがある94人の男性です。
検査の前に血液を採って、NK細胞の働き具合を調べ、その後、前立腺の組織検査を行いました。結果を分析すると、NK細胞の活性が低い人(ある数値を下回る人)は、前立腺がんである確率が約5倍も高いことがわかりました。
さらに、がんを判断するための従来の指標(年齢や血液検査の数値など)にNK細胞のデータを加えると、診断の精度がより高くなったといいます。
この結果から、NK細胞の活性は「がんになる可能性を予測する手がかり」になることが示されたのです。もちろん、これは前立腺がんに関する研究であり、すべてのがんにそのまま当てはまるわけではありません。しかし、「NK細胞の働きが弱いと、がんのリスクが高まる」という考え方は、非常に納得のいくものです。
では、私たちの生活の中で、NK細胞の働きを弱めてしまうものにはどんなものがあるのでしょうか。
① 喫煙(たばこ)
たばこを吸う人は、NK細胞の働きが低下しやすいことが知られています。たばこの煙に含まれる化学物質が、免疫のバランスを崩してしまうためです。
② 飲酒(お酒の飲みすぎ)
お酒を長期間にわたって大量に飲むと、免疫の力が落ちてしまいます。とくに肝臓が弱っている人では、その影響が大きくなります。お酒は「ほどほど」が大切です。
③ ストレス
強いストレスを受け続けると、心だけでなく体の免疫にも影響が出ます。精神的なストレスが長引くと、NK細胞の働きが弱くなってしまうことが分かっています。
④ 肥満
肥満の人は、NK細胞の数そのものが少なくなりやすいという報告があります。食生活の乱れや運動不足が、免疫の力を下げる原因になることもあります。
⑤ 加齢(年をとること)
年齢とともに、どうしてもNK細胞の働きは弱まっていきます。これが、高齢になるとがんが増える一因とも考えられています。避けられない面もありますが、生活習慣である程度カバーすることは可能です。
それでは逆に、NK細胞を活性化させるためにはどんなことを意識すればよいのでしょうか。研究で効果が確認されている方法をいくつか紹介します。
① 十分な睡眠
夜にしっかりと眠ることは、免疫を整えるための基本です。睡眠不足になると、NK細胞の数も働きも低下します。夜更かしを避け、できるだけ同じ時間に眠る習慣をつけましょう。
② 適度な運動
運動は免疫を高める効果があることが多くの研究で分かっています。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、NK細胞が活発になります。
実際に運動をすると、一時的にNK細胞が血液中に増えることが確認されています。体を動かすことで、がん細胞のいる場所にNK細胞が集まり、攻撃を行う可能性もあると考えられています。
③ 森林浴
森の中を歩くと、気分が落ち着くだけでなく、NK細胞の働きが高まることが報告されています。木々が出す香り成分(フィトンチッド)や自然のリラックス効果が関係しているといわれています。自然の中で過ごす時間を意識的に取り入れてみましょう。
④ 音楽を楽しむ
音楽を聴くことで、ストレスを和らげ、心が穏やかになります。ストレスが減ると、NK細胞の働きも良くなります。音楽療法によって免疫力が上がったという報告もありますので、好きな音楽を毎日の生活に取り入れるのもおすすめです。
⑤ 笑うこと
日本からの研究では、「笑い」がNK細胞の活性を高めることが明らかになっています。お笑い番組を観たり、友人と楽しく話したりして笑うことは、免疫にとってとても良い刺激になります。1日1回、心から笑う時間をつくることを意識してみましょう。

NK細胞は、私たちの体の中で「がんの芽」を早い段階で見つけて処理してくれる、頼もしい味方です。その働きが低下すると、がんを防ぐ力が弱まり、リスクが高まってしまいます。
しかし、NK細胞の力は生まれつき決まっているわけではありません。日々の生活習慣で大きく変えることができます。
たばこやお酒のとりすぎ、ストレスや睡眠不足を避け、軽い運動や笑い、自然とのふれあいを大切にすることで、免疫の力を維持できるのです。
「がん予防」と聞くと、食事や検診ばかりに目がいきがちですが、体の中でがんと戦ってくれている免疫の力を高めることも、同じくらい重要です。
今日からできる小さな習慣で、あなたのNK細胞を元気にしてあげましょう。