捻挫の話

わかりやすい捻挫の話

私たちが日常生活の中でよく耳にする「捻挫(ねんざ)」という言葉。スポーツ中に足をひねったり、段差で足首をぐきっと曲げてしまったときなどに、「捻挫した」と言うことが多いですが、実際のところ、捻挫とはどのような状態を指すのでしょうか。本記事では、特に発生しやすい「足関節の捻挫」を中心に、原因や仕組み、治るまでの過程について、わかりやすく解説していきます。

捻挫とは何か

捻挫とは何か

「捻挫」という言葉は、「捻る(ひねる)」や「挫く(くじく)」という言葉から成り立っています。どちらの漢字も似た意味を持っており、本来曲がらない方向、あるいは通常の可動範囲を超えて関節が動かされることで生じる外傷を総称して「捻挫」と呼びます。ここで重要なのは、「骨折」や「脱臼」は捻挫には含まれないという点です。つまり、関節周囲の靭帯(じんたい)や軟部組織に損傷が起こっている状態を指します。

捻挫しやすい関節 ― 足関節に注目

捻挫は、手首や指、肩などあらゆる関節で起こりうるものですが、最も多いのが「足首の捻挫」です。特にスポーツ活動時や階段の上り下り、急な方向転換など、私たちの生活のあらゆる場面で起こりやすい外傷です。

足首(足関節)は、上下方向(底屈と背屈)だけでなく、内側や外側にひねる(回内・回外)という複雑な動きをすることができます。具体的には、底屈が45度、背屈が20度、回外が40度前後、回内が20度前後まで動かすことができます。この範囲を大きく超えて動かしてしまうと、靭帯などの組織が伸びすぎて損傷が起こる、つまり「捻挫」になるのです。

この中でも、実際に足首を捻挫するケースのほとんどは「内側にひねる動き(回内)」によるものです。

足首をひねると、体の中で何が起こっているのか

足を内側にひねったとき、外くるぶしのあたりにある靭帯が強く引っ張られます。靭帯は骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織で、関節の安定性を保っています。しかし、強い力が加わると、靭帯がその引っ張りに耐えきれず、部分的に伸びたり、最悪の場合は完全に切れてしまうことがあります。

外くるぶし(腓骨)には「外側靭帯(がいそくじんたい)」と呼ばれる3本の靭帯があります。前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)、踵腓靭帯(しょうひじんたい)、後距腓靭帯(こうきょひじんたい)の3つです。このうち、最も損傷を受けやすいのが「前距腓靭帯」で、足をひねった瞬間に最初に強く引っ張られ、部分的に伸びたり、場合によっては完全に断裂することもあります。

損傷した靭帯はどうやって治るのか

損傷した靭帯はどうやって治るのか

靭帯が切れてしまった場合、多くの方が「もう元には戻らないのでは」と不安に感じるかもしれません。しかし、人体は非常に優れた再生能力を持っています。靭帯の中に存在する細胞が、損傷した部分を基礎から作り直し、再び新しい靭帯を形成していきます。これは骨折の治癒過程にも似ており、時間をかけて「再生(さいせい)」が行われるのです。

ただし、この再生の過程で重要なのは、損傷部分が動かないように、安定していることです。骨折の治療においても、折れた骨がぐらつかず、しっかりと固定されていることが治癒の鍵になるのと同じように、靭帯の修復にも「安定」が欠かせません。

靭帯を治すための治療 ― 固定の重要性

切れた靭帯どうしを動かさないようにするため、一般的にはギプスやサポーターなどで足首を固定します。この固定期間は、通常1か月から1か月半程度です。固定することで、損傷部分に余計な負担がかからず、靭帯の細胞が新しい組織を作り直す環境を整えることができます。

このように、ほとんどの靭帯損傷は自然治癒が可能です。特別な手術をしなくても、適切な固定と安静、そしてリハビリを行うことで、元のように関節を動かせるようになります。したがって、捻挫したからといってすぐに手術が必要というわけではありません。

例外 ― 手術が必要な靭帯もある

ただし、すべての靭帯が自然に治るわけではありません。代表的な例外が「膝の前十字靭帯(ACL)」と「後十字靭帯(PCL)」です。これらの靭帯は他の靭帯と違い、関節の奥深く、血流の乏しい場所に位置しているため、自然治癒が非常に難しいのです。そのため、一度断裂してしまうと、体のほかの部位(例えば太ももの腱など)から組織を採取して移植する「靭帯再建手術」が必要になります。

一方で、足首の靭帯は関節の外側、血流が比較的豊富な部分にあるため、自然に再生できる環境が整っています。これが、足関節捻挫が多く発生するにもかかわらず、手術を必要としないことが多い理由でもあります。

捻挫をしたときの基本的な対処法

捻挫をしたときの基本的な対処法

捻挫をした直後には、以下のような応急処置が有効です。

  1. 安静(Rest):無理に動かさず、負荷をかけない。
  2. 冷却(Ice):痛みや腫れを抑えるために氷で冷やす。
  3. 圧迫(Compression):包帯などで軽く圧をかけ、腫れを抑える。
  4. 挙上(Elevation):心臓より高い位置に足を上げておく。

これらは「RICE(ライス)処置」と呼ばれ、捻挫の初期対応として広く用いられています。その後、整形外科などでレントゲンや診察を受け、骨折や重度の靭帯損傷がないかを確認することが大切です。

まとめ ― 捻挫は正しく理解すれば怖くない

捻挫は決して軽視できるケガではありませんが、その仕組みや治る過程を理解しておけば、過度に心配する必要もありません。足首をひねった瞬間に痛みや腫れが出た場合は、まず安静にし、適切な処置を取ること。そして、靭帯がしっかりと再生できるよう、医師の指示に従って固定とリハビリを行うことが大切です。

人間の体は驚くほどの回復力を持っています。正しい対応と時間をかければ、捻挫した靭帯もほぼ元通りに修復され、再び元気に歩いたり運動したりできるようになります。日常の中で起こりうる身近な外傷だからこそ、正しい知識を持って、焦らず、丁寧に向き合っていきましょう。