
最近、比較的若い年齢で「すい臓がん」と診断された有名人のニュースを耳にすることが増えています。
すい臓がんは、初期のうちはほとんど症状が出ないため、見つかったときには進行しているケースが多いがんのひとつです。
また、「すい臓がん専用の検診」というものが一般的に行われていないため、早期発見が難しいという特徴もあります。
では、どうすれば症状の出る前に、すい臓がんを見つけることができるのでしょうか?
世界中の研究者たちが、その手がかりを探し続けています。
その中で注目されているのが、「リスクの高い人を見つけて、重点的に検査を行う」という方法です。
これまでの研究で、すい臓がんのリスクを高める要因はいくつか明らかになっています。
たとえば、
などが知られています。
そして、もうひとつ非常に重要な要因が「家族にすい臓がんの人がいる」ということです。
つまり、親、兄弟姉妹、または子どもなど、血のつながった家族の中にすい臓がんを経験した人がいる場合、その家族のほかの人もすい臓がんになりやすいという傾向があるのです。
これまで、「家族にすい臓がんの人がいるとリスクが上がる」と言われてはきましたが、実際にどのくらい高くなるのかについては、はっきりとした数字はわかっていませんでした。
しかし、2022年に発表されたアメリカの大規模研究によって、その実態が明らかになりました。
この研究は、ジョンズ・ホプキンス大学が中心となって行ったもので、
「National Familial Pancreatic Tumor Registry(すい臓がん家系登録制度)」という仕組みを使い、すい臓がん患者の家族を長期間にわたって追跡しました。
対象となったのは、なんと4,433の家族にのぼり、合計で2万人以上が参加した大規模な調査です。
その結果、次のようなリスクの差が明らかになりました。
つまり、家族内で患者が増えるほど、その家族に属する他の人のリスクも高まるということです。
これは非常にわかりやすい関係で、すい臓がんが「家族の中で繰り返し起こりやすい病気」であることを示しています。

では、もし家族にすい臓がんの人がいる場合、自分はどうしたらいいのでしょうか?
まずおすすめしたいのは、一度「腹部の超音波検査(エコー検査)」を受けてみることです。
これは体に負担の少ない検査で、放射線を使わないため、被ばくの心配もありません。
もちろん、すい臓がんを確実に見つけるほどの感度はありませんが、
すい臓の形に変化がないか、のう胞や管の拡張など、がんの前ぶれとなるようなサインを見つけられる場合があります。
また、すい臓がんの専門診療を行っている医療機関もあります。
インターネットで「すい臓がん 専門外来」などと検索してみると、対応している病院を見つけることができます。
一度、そういった施設に相談してみるのも良いでしょう。
先ほど紹介したアメリカの「家族登録制度」では、すい臓がんの家族を持つ人を対象に、定期的な検査を行っています。
その内容は、CT、MRI、超音波内視鏡などを組み合わせたスクリーニング(早期発見のための検査)です。
実際、この制度の中で行われたスクリーニングによって、19人のすい臓がん患者が見つかりました。
そして驚くべきことに、そのうち78%が「ステージⅠ(早期)」で発見されたのです。
通常、すい臓がんは見つかった時点で進行していることが多く、手術が難しいケースが多いのですが、
この制度では早期の段階で見つかる割合が非常に高かったのです。
さらに、この早期発見グループの5年後の生存率はなんと73%。
一般的なすい臓がんの5年生存率(10%以下)と比べると、驚くほど高い数字です。
これは、すい臓がんでも「早期に見つけることができれば、助かる可能性が大きく変わる」ことを示しています。

この研究結果からわかるように、家族にすい臓がんを経験した人がいる場合、自分自身もリスクが高くなることは確かです。
しかし、それを「怖いこと」として終わらせるのではなく、「知っておくこと」こそが自分の命を守る第一歩になります。
「家族にがんがいたら、もう自分も…」と悲観する必要はありません。
むしろ、「だからこそ、少し早めに検査を受けておこう」と前向きに考えることが大切です。
年に一度、健康診断のオプションで腹部超音波をつけてみる、あるいは専門外来に相談してみる、
そのような小さな行動が、将来的に自分の命を守ることにつながります。
すい臓がんは、症状が出にくく見つけにくい病気ですが、家族に患者がいる場合にはリスクが高くなることがわかっています。
しかし、定期的に検査を受けていれば、早期に見つけられる可能性は十分にあります。
早く見つかれば手術もでき、治る可能性がぐんと上がるのです。
自分や家族を守るために、そして後悔しないために、
「すい臓がんの家族がいる」ということをきっかけに、一度検査や相談をしてみてください。
それが、未来のあなたの健康につながる大切な一歩になるはずです。