がん治療前のリハビリが必須の人とは?「プレハビリテーション」が必要な患者さんの7つの条件

がん治療前のリハビリは必要?「プレハビリテーション」という考え方

がんの治療というと、多くの人がまず思い浮かべるのは手術や抗がん剤などの“治すための治療”ではないでしょうか。けれども実は、治療を始める前の準備もとても大切です。今回は、治療の前に行うリハビリ「プレハビリテーション」についてお話ししたいと思います。

■ 治療は体にとって大きな負担

■ 治療は体にとって大きな負担

がんの治療は、どんなに技術が進歩しても、体にとってはやはり負担の大きいものです。
手術で体の一部を切除する場合もあれば、抗がん剤で全身に影響を与えることもあります。治療の過程で体力が落ちたり、筋肉が減ったり、免疫力が下がってしまうことも少なくありません。

治療が無事に終わったあと、「思ったより回復が遅い」「以前のように動けない」「疲れやすくなった」と感じる方も多くいらっしゃいます。中には、体力の低下がきっかけで寝たきりに近い状態になってしまう方もいるのです。

■ プレハビリテーションとは?

こうした治療後の負担を少しでも軽くし、より早く回復できるようにするために行うのが、「プレハビリテーション」です。
これは、がんと診断された時点から治療を始めるまでの間に行うリハビリのこと。つまり、「治療のための準備期間」に体と心を整える取り組みです。

近年では、がんの治療中だけでなく、診断直後から治療後の経過観察の期間まで、一貫してリハビリを取り入れる重要性が強調されるようになっています。その中でも、この“治療前のリハビリ”がとても注目を集めています。

簡単に言うと、プレハビリテーションとは「治療に立ち向かうための心と体のトレーニング」です。

■ プレハビリを行うメリット

■ プレハビリを行うメリット

このプレハビリテーションを行うことで、さまざまな良い効果が報告されています。
たとえば、

  • 手術や治療後の回復が早くなる
  • 合併症や副作用が少なくなる
  • 再び日常生活に戻るまでの時間が短くなる
  • 結果として、生存率が上がる

といったことがわかってきました。
つまり、治療を成功させるための土台作りが、このプレハビリなのです。

■ プレハビリを特におすすめしたい人

では、どんな人がプレハビリを受けたほうがよいのでしょうか。
ここでは、長年多くのがん患者さんを診てきた経験から、「特に必要だと思う7つのタイプ」をご紹介します。

  1. 普段からあまり動かない人
     日常生活の中で、動くことが少ない人や、家事や身の回りのことが自分で行えない人は、筋力や体力が落ちやすく、治療の負担も大きくなりがちです。
  2. 高齢の方(特に75歳以上)
     年齢とともに体の回復力はどうしても落ちます。治療前にしっかり体を整えておくことで、治療後の回復スピードを高めることができます。
  3. 持病のある人
     糖尿病や呼吸器の病気などをお持ちの方は、治療中に体調を崩しやすい傾向があります。事前にリハビリで体を鍛えておくことが大切です。
  4. たばこを吸っている、あるいは吸っていた人
     喫煙は呼吸機能を低下させます。痰や咳が多い方も含め、プレハビリで呼吸を整える練習をしておくと、手術や治療後の回復がぐっと楽になります。
  5. 体重が減っている人、食欲がない人
     がんや治療の影響で食べられない方は、栄養不足や筋肉の減少に注意が必要です。体力をつけるためのサポートが欠かせません。
  6. 筋肉が減って、手足が細くなってきた人
     筋肉量が減ると、体を支える力や免疫力まで落ちてしまいます。治療前の筋トレや運動で筋力を保つことがとても重要です。
  7. 手術前に抗がん剤や放射線治療を受ける人
     こうした治療の間に体力が落ちることが多いため、プレハビリで筋力と体調を維持することが勧められます。

これらに当てはまる人は、治療を始める前の段階からリハビリを取り入れることが特に重要だといえます。

■ プレハビリでは何をするの?

では、具体的にプレハビリではどんなことをするのでしょうか。
実は、決まった方法があるわけではなく、体の状態に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。ただし、大きく分けると3つの柱があります。

① 体を動かす(運動)

まずは運動です。
軽いウォーキングなどの有酸素運動に加えて、筋トレのような筋力を維持する運動を組み合わせます。激しい運動ではなく、「少し息が弾む程度」で構いません。無理せず続けられることが何より大切です。

② 心のケア(メンタルサポート)

がんと診断されると、多くの人が不安や恐怖、焦りを感じます。
こうした心の状態を整えることも治療の大切な準備です。必要に応じて専門家の相談を受けることも有効ですし、自宅では瞑想やヨガなどを取り入れて心を落ち着かせるのもおすすめです。

③ 食事と栄養のサポート

栄養状態を整えることもプレハビリの大切な要素です。
特に不足しやすいのがたんぱく質。筋肉を保ち、体の修復を助けるために欠かせません。目安としては、体重1キログラムあたり1.2~1.5グラムを目標に、肉・魚・豆腐・卵などをバランスよく摂るようにしましょう。

■ 広がるプレハビリの取り組み

この「治療前のリハビリ」をもっと多くの方に知ってもらいたいという思いから、2021年にクラウドファンディングが立ち上げられ、全国に広がる取り組みが始まりました。
集まった支援をもとに、ガイドブックが作られています。産業医科大学のホームページから無料でPDF版をダウンロードすることができますので、興味のある方はぜひ見てみてください。

また、産業医科大学のYouTube公式チャンネルでは、プレハビリの具体的な方法を動画で紹介しています。自宅でできる簡単な運動や呼吸法なども学べる内容になっています。

■ まとめ:治療を「受ける前」こそ準備が大事

■ まとめ:治療を「受ける前」こそ準備が大事

がん治療というと、どうしても「始まってから」「終わってから」のことを考えがちです。けれども、本当に大切なのはその“前段階”です。
治療の前に体と心を整えることで、治療のダメージを減らし、回復を早め、そして治療の効果を最大限に引き出すことができます。

これから治療を控えている方、またはご家族の方は、ぜひ「プレハビリテーション」という考え方を知っておいてください。
できることから少しずつ始めるだけでも、きっと大きな力になります。