熱傷(やけど)は高温の気体、液体、固体が皮膚に触れることで皮膚や粘膜が損傷を受ける状態です。
皮膚は体内への異物侵入を防ぎ、体内水分の蒸発を抑えるバリア機能を担っています。
しかし、熱傷による損傷が皮膚の機能を破綻させると、感染症や体温低下、水分喪失、感覚機能の損失など、さまざまな問題が生じます。
重症の場合、生命に危機を及ぼす可能性もあるため、看護師は熱傷の病態を理解し、適切な初期対応を行うことが求められます。

熱傷の重症度は、皮膚の損傷の深さと面積で評価されます。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」「筋膜」「筋肉」の順に構成されており、どの層まで損傷が及んでいるかが分類の基準となります。
Ⅰ度熱傷
• 深度:表皮のみが損傷。
• 特徴:皮膚が赤くなり、熱感や痛みが伴うが、水泡は形成されない。
数日で自然に治癒する。日焼けが代表例。
Ⅱ度熱傷
• 深度:真皮に達する損傷。
• 下位分類:
o 浅達性Ⅱ度熱傷:表皮に近い部分まで。発赤や水泡が見られ、強い痛みが伴う。
o 深達性Ⅱ度熱傷:皮下組織に近い部分まで。皮膚は白っぽく、感覚が鈍い場合がある。
• 特徴:水泡形成やむくみが見られる。浅達性は強い痛みを伴い、深達性は感覚が鈍くなることがある。治癒には時間がかかり、手術が必要な場合もある。
Ⅲ度熱傷
• 深度:皮下組織に達する損傷。
• 特徴:皮膚は灰白色や炭化し、感覚がほとんどなくなる。基本的に手術が必要で、広範囲に及ぶ場合は重症とされる。
熱傷の深さだけでなく、損傷の面積も治療方針を決定する重要な指標です。
• 評価方法:
o 「9の法則」:成人の体の各部位を9%単位で分割して計算する簡便な方法。
o 「5の法則」:小児の体の各部位を5%単位で分割して計算する簡便な方法。
o 「Lund&Browderチャート」:より正確に熱傷面積を評価方法。熱傷専門の施設で用いられる。
熱傷面積は、以下の指標や判断基準の算定に用いられます。

広範囲の熱傷では、熱傷部から大量の滲出液が失われ、炎症反応により血管透過性が亢進します。
これにより血管内の水分が不足し、重篤な血管内脱水が発生。
さらに臓器への血流が不足することで多臓器不全(MODS)のリスクが高まります。
• 初期輸液量の計算:「Parklandの公式」が広く用いられます。
計算式:4mL × 体重(kg) × 熱傷面積(%)
• 投与法:24時間で必要量を投与。最初の8時間で半分を、残りを16時間で投与。
• 輸液治療の注意点
過剰輸液はコンパートメント症候群や呼吸状態の悪化を引き起こす可能性があるため、患者さんの状態に応じた輸液管理が重要です。
※輸液療法中は以下の項目を観察します
o 尿量:1~2時間ごとに測定。初期目標は0.5mL/kg/時以上。
o 循環動態:乳酸値、中心静脈圧(CVP)、拍動変動指数(SVV)をモニタリング。
o 皮膚の状態:乾燥や感染の兆候がないか確認。
熱傷では身体的な痛みに加え、心理的苦痛も大きいため、適切な鎮痛と心理的ケアが重要です。
• 疼痛管理
o 薬剤使用:アセトアミノフェンやNSAIDsを基本とし、必要に応じて麻薬性鎮痛薬を追加(麻薬性鎮痛薬については単独で長期間投与していると耐性が出てきたり、効果が低減したりするので要注意)。
o 投与計画:疼痛評価スケール(NRS、CPOT)を用いて、患者さんの状態に応じた薬剤調整を行います。
• 創部ケア
o ワセリンや被覆材で創部を保護し、外気や乾燥を防ぎます。
o 創部の環境を整えることで良好な肉芽形成を促進。
• 心理的ケア
o 処置中の丁寧な声掛けや説明で患者さんの不安を軽減。
o ボディイメージの変化への配慮や、心理的サポートの提供も重要です。
皮膚のバリア機能が破綻しているため、感染リスクが高まります。
看護師は以下の点に注意してケアを行います
• 創部の清潔を保つ無菌的処置の徹底。
• 排液の性状や量を観察し、感染兆候(発赤、腫脹、分泌物の増加)が見られた場合は速やかに報告。

• 熱傷とは:高温物質による皮膚・粘膜の損傷で、Ⅰ~Ⅲ度の深度分類が治療方針を決定する指標となる。
• 初期治療のポイント
• 看護師の役割:患者さんの全身状態の管理や心理的支援を通じ、回復をサポートする。
熱傷患者さんのケアは生命維持だけでなく、精神的ケアや社会復帰の支援まで多岐にわたります。初期治療から長期のサポートまで、一貫して適切なケアを提供できるよう、看護師としての役割を果たしていきましょう。