【知ってますか?】がん患者における食事の重要性:診断後に何を食べるかで生存率に差

がん患者さんは何を食べるべき?〜「食事の質」で変わる生き方〜

がん患者さんは何を食べるべき?〜「食事の質」で変わる生き方〜

今回は、「がん患者さんは何を食べるべきか」というテーマで、食事の大切さについてお話ししたいと思います。

最初にお伝えしておきたいのは、「これを食べればがんが治る」「この食品でがんが消える」といった話をするわけではない、ということです。
世の中には、そういった言葉を見かけることもありますが、食事やサプリメントだけでがんが治るということは、残念ながらほとんどありません。食事は大切ですが、それだけに過度な期待を寄せるのは現実的ではないのです。

では、「何を食べてもいいのか?」と聞かれると、それも少し違います。
たしかに、手術のあとの回復期や、治療の副作用で食欲が落ちているときには、「とにかく食べられるものを少しでも」という考え方が大切になります。体力を維持するためには、まずカロリーを摂ることが優先される場合もあります。
また、治療が難しく、残された時間が限られているときには、「好きなものを食べる」という選択が心の支えになることもあります。それも大切な考え方の一つです。

ただし、すべてのがん患者さんに「何を食べても関係ない」と言えるわけではありません。
なぜなら、食事の内容がその後の経過や再発のリスク、生存期間などに関係することが、多くの研究で示されているからです。つまり、「がんになったあとの食事の質」が、その後の人生に影響する可能性があるのです。

食事の「質」で差がつく、という研究結果

食事の「質」で差がつく、という研究結果

アメリカで行われたある研究では、がんと診断された1,191人を対象に、普段の食事内容を詳しく調べました。
対象となったがんの種類は、皮膚がんや乳がんなどさまざまでした。研究では、食事内容を数値化して「健康食事指数(Healthy Eating Index)」という指標を作り、どれくらい健康的な食生活をしているかを点数で表しました。

この指標では、以下のような食べものが「積極的に食べたい」グループとされます。

  • 果物(特に皮付きのもの)
  • 野菜(とくに緑黄色野菜や豆類)
  • 精白していない穀物(玄米や全粒粉パンなど)
  • 乳製品
  • 魚介類
  • 植物性のたんぱく質(大豆や豆腐など)
  • 不飽和脂肪酸(オリーブオイルやナッツ類に含まれる油)

逆に、控えたほうがよいとされるのは次のような食品です。

  • 白米や白いパンなど精白した穀物
  • 塩分の多い食品
  • 砂糖を多く含むお菓子や飲み物
  • 脂っこい肉などに含まれる飽和脂肪酸

これらをもとに、食事の内容が健康的であるほど点数が高くなるように計算されました。
その後、平均で17年間という長い期間にわたって追跡したところ、興味深い結果が出ました。

食事の点数が最も高いグループ(つまり健康的な食生活をしていた人たち)と、最も低いグループ(不健康な食生活の人たち)を比べると、がんによる死亡率に明らかな差が見られたのです。
なんと、食事の質が低いグループでは、がんによる死亡率が最大で約2倍にまで高くなっていました。

さらに詳しくみると、健康的な食事をしていた人では、がんによる死亡リスクが約65%低く、すべての死因を合わせても死亡リスクが約41%低かったと報告されています。

この結果から言えるのは、「がんの診断後にどう食べるか」が、その後の生き方に大きな影響を与える可能性があるということです。

「食べること」は、治療の一部でもある

「食べること」は、治療の一部でもある

とはいえ、理想的な食事を毎日続けるのは簡単なことではありません。
治療の影響で食欲が落ちたり、味覚が変わったりすることもあります。
また、吐き気や口の中の違和感などで、どうしても食べられるものが限られてしまう場合もあります。

そういうときには、「完璧を目指さない」ことが大切です。
少しでも体に入るものを選びながら、無理のない範囲で食べることを心がけましょう。
治療が落ち着いてきたタイミングで、少しずつ食生活を見直していくのが現実的です。

「食べること」は、体を支えるだけでなく、心を支えることにもつながります。
食事は、生きる力そのものです。家族と囲む食卓、季節を感じる味わい、好きなものを口にしたときの幸福感。そうしたひとつひとつが、前向きな気持ちを保つうえで大切な役割を果たしています。
がんの治療を続けるうえでも、精神的な支えはとても重要です。食べることを「楽しみ」として続けることは、心の健康にもつながるのです。

「がんになった後の食事」でできること

がんの治療が一段落したあとや、長い経過観察が続くときこそ、食生活を整えるチャンスです。
いきなりすべてを変える必要はありません。たとえば次のような工夫を少しずつ取り入れるだけでも、体は確実に応えてくれます。

  • 野菜や果物を一日一回は多めにとる
  • 白米の一部を玄米や雑穀米に置き換えてみる
  • お肉ばかりでなく魚や豆製品をメインにする
  • 揚げ物や脂っこい料理を減らし、蒸す・焼く・煮るを増やす
  • 甘いお菓子やジュースを「ご褒美」として控えめにする

これらは特別な食事療法ではありませんが、積み重ねることで確実に体の調子が変わってきます。
「健康的な食事」とは、特別な食材や高価な食品を使うことではなく、日常の中で少しずつ体にやさしい選択をすることなのです。

最後に

がんの治療や経過観察は、長く続くことが多いものです。
その中で、食事は「毎日できる最も身近なケア」と言えるでしょう。

食べる内容によって、体の状態が変わり、気持ちも変わります。
もちろん、時には好きなものを思いきり食べることも大切です。
それも含めて、食事は「生きる力」を支える大切な行為です。

ですから、「がんになったから何を食べてはいけない」と考えるよりも、「どうすればもっと元気になれる食事ができるか」と考えることが大事だと思います。
治療が落ち着いたあと、これからの人生をより良く過ごすためにも、少しだけ食生活を見直してみてはいかがでしょうか。