スポーツや日常生活の中で「つき指をした」という言葉をよく耳にします。特にボールを扱う競技では、誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。では、この「つき指」とは、いったいどのような状態を指すのでしょうか。見た目にはただの「指のケガ」と思われがちですが、その中身には人体の繊細な構造が関わっています。今回は、つき指の仕組みから治療までを、わかりやすくお話ししていきます。

「つき指」というのは、指先に垂直方向から大きな力が加わることによって起こるケガです。たとえば、ボールが指先に勢いよく当たったときなどに、指の第1関節(医学的には「DIP関節」と呼ばれます)が強制的に曲げられることで発生します。つまり、指先を突く方向への外力によって関節が不自然に動かされてしまう状態が「つき指」なのです。
人間の指には、曲げるための腱(屈筋腱)と伸ばすための腱(伸筋腱)がそれぞれ走っています。屈筋腱は手のひら側、伸筋腱は手の甲側を通り、最終的には指の一番先の骨までつながっています。つき指が起こると、主に**手の甲側の「伸ばす腱」**が急激に引き伸ばされます。このとき腱に瞬間的な強い負担がかかり、痛みや損傷を生じるのが典型的なメカニズムです。
つき指の中でも、特に重症な状態を「マレット指(槌指)」と呼びます。これは、指の第1関節が急激に曲げられたときに、伸ばす腱が損傷した結果、指が自力でまっすぐに伸びなくなってしまう状態です。まるで金づち(槌)のように、指の先が垂れ下がる形になるため「槌指」と呼ばれます。
マレット指が起こる原因には、主に次の2つのタイプがあります。
どちらの場合も、腱や骨が正常な位置関係を保てなくなり、結果として指を自力で伸ばすことができなくなります。いずれも痛みや腫れを伴うため、放置せず適切な治療を受けることが大切です。

腱が切れてしまった場合は、まず指をまっすぐに伸ばした状態で保持することが最も重要です。
これは、指を伸ばすことで切れた腱の断端が近づき、自然に癒合しやすい環境をつくるためです。
この「伸ばした状態を維持する」というのが、治療の基本になります。
治療には主に「装具(スプリント)」が用いられます。これは、第1関節を伸ばした位置でしっかり固定できるように作られた器具で、アルミ製、樹脂製、あるいはばね構造を持つものなど、さまざまなタイプがあります。どのタイプでも目的は共通しており、関節を完全に伸ばしたまま6週間ほど保持することです。
この期間中に腱が再び癒合し、元の働きを取り戻すことが期待されます。
一方、骨の一部がはがれてしまった場合は、装具だけで元の位置に戻すのが難しいことがあります。骨片を正しい位置に固定するためには、手術による治療が必要になることもあります。
この場合、一般的には太さ1mm弱ほどの細い金属のピン(鋼線)を2本ほど用い、皮膚の上から骨に刺し込んで、はがれた骨片を正しい位置に寄せます。このピンが、骨同士をしっかり固定する役割を果たすため、外から装具をつけなくても指を伸ばしたままの位置を保つことができます。
骨の癒合にはおおよそ6週間程度が目安とされ、ピンを抜いた後にはリハビリを行いながら徐々に日常生活に戻っていきます。
腱や骨が癒合するまでには、およそ6週間の固定期間が必要です。
この間は、少しでも関節が曲がってしまうと、せっかく癒合しかけた腱や骨が再び離れてしまうことがあります。したがって、日常生活では入浴や衣服の着脱など、指を不用意に曲げないように注意することが大切です。
また、固定期間が終わった後も、すぐに激しい運動を再開するのではなく、徐々に関節の可動域を取り戻すようにリハビリを行うことが勧められます。

「つき指」は、軽く見られがちなケガですが、実は腱や骨に損傷がある場合も少なくありません。
特に次のような症状がある場合は、自己判断せず整形外科を受診するようにしましょう。
早期に正確な診断を受けることで、後遺症を残さず治すことができます。
放置してしまうと、指の変形や関節の動きの制限が残ることもあるため注意が必要です。
最後に、今回の内容を整理しておきましょう。
スポーツを楽しむ中で、指先にボールが当たることは避けられない場面もあります。
しかし、「ちょっと痛いだけだから大丈夫」と放っておくと、指が伸びなくなったり、関節が変形したりといった後遺症を残すおそれがあります。
つき指は一見軽いケガのように見えても、正しい理解と適切な対応がとても重要です。
もし指先に痛みや違和感を感じたときは、早めに専門医に相談し、確実に治すようにしましょう。