胸腰椎圧迫骨折の話

わかりやすい高齢者の骨折の話②

高齢になると、骨がもろくなる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」が進行し、ちょっとした衝撃や転倒でも骨折を起こしやすくなります。高齢者に多い骨折には、「手首の骨折(橈骨遠位端骨折)」「腕の付け根の骨折(上腕骨近位部骨折)」「背骨の骨折(胸腰椎圧迫骨折)」「股関節の骨折(大腿骨近位部骨折)」の4つがあり、これらは“高齢者の4大骨折”と呼ばれています。
今回はその中でも特に多い「胸腰椎圧迫骨折(きょうようついあっぱくこっせつ)」について、原因や症状、治療法までをわかりやすくお話ししていきましょう。

背骨の構造と圧迫骨折の起こる場所

背骨の構造と圧迫骨折の起こる場所

背骨は首からお尻まで連なっており、部位によって「頸椎(けいつい)」「胸椎(きょうつい)」「腰椎(ようつい)」「仙椎(せんつい)」と呼ばれます。
上から順に、頸椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個、そして仙椎が1個並び、全体として緩やかなS字カーブを描いています。このカーブは、体重や衝撃をうまく分散させるために重要な構造です。

圧迫骨折が最も起こりやすいのは、胸椎の一番下にあたる「第12胸椎」と、腰椎の一番上の「第1腰椎」のあたりです。ちょうど背中から腰への移行部にあたる部分で、日常生活の中で特に負担がかかりやすい場所でもあります。

圧迫骨折とはどのような骨折か?

圧迫骨折とは、背骨の前方にある「椎体(ついたい)」という円柱状の部分が、上からの力によって押しつぶされてしまう骨折のことをいいます。
背骨は一つひとつの骨が積み重なってできていますが、何らかの力が加わって椎体が「ぐしゃっ」と押し潰されたような形になると、背骨全体が前に曲がり、痛みや姿勢の変化が起こります。

実際には、転倒や尻もちなどの衝撃で起こる場合もあれば、明らかな外傷がなくても起こる場合もあります。後者の場合は、骨粗鬆症によって骨がもろくなっていることが大きな原因です。

なぜ圧迫骨折が起こるのか

尻もちなどの衝撃による場合

典型的な原因は「尻もち」です。転倒してお尻を強く打つと、瞬間的に背骨がぐっと曲がり、その力が一番負担のかかる部分(第12胸椎~第1腰椎)に集中します。その結果、椎体が上下から押しつぶされるように変形し、骨折してしまうのです。
このとき、背中そのものを打たなくても骨折が起こることが特徴です。

転倒していないのに起こる場合

一方で、「転んでもいないのに骨折していた」というケースも少なくありません。これは、骨粗鬆症によって骨の密度が低下し、いわば“軽石のようにスカスカな状態”になっているためです。
このような骨は、体重を支えるだけの力にも耐えられず、日常生活の動作やくしゃみ、重い荷物を持つといった軽い負担でも潰れてしまうことがあります。
これが「いつの間にか骨折」と呼ばれるもので、痛みが軽かったり、まったく自覚がないまま進行していることもあります。

圧迫骨折の症状

基本的な症状は「強い腰や背中の痛み」です。特に動いたときや体を起こしたときに痛みが増すことが多く、横になると少し楽になります。
一方で、ゆっくりと骨が潰れていくタイプの圧迫骨折では、痛みがほとんどなく気づかないまま進行する場合もあります。

痛みがないケースでは、「最近背が低くなった」「背中が丸くなってきた」といった変化で気づくことがあります。レントゲン検査をして初めて「背骨が潰れていますね」と指摘される方も少なくありません。

圧迫骨折の治療法

圧迫骨折の治療法

胸腰椎コルセットによる固定

痛みが強い場合や新しい骨折が見つかった場合は、まず「胸腰椎コルセット」という専用の装具で固定します。
背中を少し反らした状態でコルセットの型を取り、硬めの素材で体を支える仕組みです。この固定によって、潰れた椎体がこれ以上変形しないようにし、場合によっては少し元の高さに戻ることもあります。

治療期間の目安はおよそ6週間です。この間、コルセットを着けて安静を保ち、骨が再び固まるのを待ちます。背骨の変形は残っても、骨がしっかり癒合すれば日常生活には支障がなくなることがほとんどです。

骨粗鬆症の治療

転倒していないのに起こった場合や、複数の圧迫骨折がある場合は、骨粗鬆症の治療が不可欠です。
骨密度を測定し、必要に応じてカルシウムやビタミンD、骨の代謝を改善する薬(ビスフォスフォネート製剤など)の内服を行います。
骨粗鬆症を放置すると、次々と新たな骨折を起こしてしまう恐れがあるため、早めの治療が重要です。

背が低くなる理由

「昔より身長が5センチも低くなった」と感じる方は多いでしょう。
その主な原因は、背骨の変形です。加齢に伴い、背骨が湾曲して丸くなる(猫背になる)こともありますが、圧迫骨折によって椎体が潰れると、背骨の全体的な長さが短くなり、結果として身長が低くなります。
脚の骨の長さは変わらないため、背骨の変化が身長低下の主因であることを理解しておくと良いでしょう。

胸腰椎圧迫骨折のまとめ

胸腰椎圧迫骨折のまとめ
  1. 胸腰椎圧迫骨折は、高齢者の4大骨折の一つであり、特に第12胸椎と第1腰椎に多く発生します。
  2. 転倒や尻もちによる衝撃で起こる場合と、転倒していないのにいつの間にか起こる場合があります。
  3. 後者では骨粗鬆症が大きく関係しており、再発防止のためにも骨粗鬆症の治療が欠かせません。
  4. 痛みが強い場合は胸腰椎コルセットを装着し、6週間ほど安静にして骨の癒合を待ちます。
  5. 骨が固まれば、たとえ形が少し変わっても生活に支障はなくなります。

おわりに

胸腰椎圧迫骨折は、高齢者に非常に多くみられる骨折ですが、早期に発見して正しく治療すれば、多くの場合は元の生活に戻ることができます。
特に「転んでいないのに背中が痛い」「背が急に低くなった」「姿勢が悪くなった」といった場合には、早めに整形外科を受診してレントゲン検査を受けることが大切です。
また、骨粗鬆症の治療を続けることで、次の骨折を予防することもできます。日頃から骨を丈夫に保つ意識を持ち、転倒予防にも気を配っていきましょう。