
「がんの40%は防げるかもしれない」——。
少し驚くような数字ですが、これは日本の国立がん研究センターの研究から明らかになった結果です。
がんのすべてが予防できるわけではありませんが、私たちの生活習慣や感染予防の工夫によって、確実に減らせる部分があるのです。
がんの発生には、大きく分けて2つのタイプの原因があります。
ひとつは、防ぐことが難しい要因。これは遺伝的な体質や、細胞が分裂する際に偶然起こるDNAのエラー(遺伝子のコピーの間違い)など、本人の努力ではどうにもならない部分です。
もうひとつは、防ぐことができる要因です。
たとえば、喫煙や飲酒、運動不足、肥満、不適切な食事、感染など、私たちの生活環境や行動に関連するものがこれにあたります。
つまり、「がんは完全に運命で決まる病気ではない」ということです。
2022年2月、医学誌『Global Health & Medicine』に、国立がん研究センター(予防研究グループ)から興味深い報告が掲載されました。
研究チームは、2005年時点の日本人の生活習慣データをもとに、がんの発症や死亡にどの程度の割合で生活習慣が関わっているのかを分析しました。
彼らが用いた指標が「PAF(Population Attributable Fraction:人口寄与割合)」というものです。
これは、「もし特定の危険因子(たとえば喫煙)がまったく存在しなかったら、がんの発症や死亡が何%減るか」を示す指標です。
言い換えれば、「社会全体でその習慣をなくした場合、どのくらいのがんを防げるか」という目安です。

研究では、がんに関係する生活要因として、次の6つを中心に分析しました。

研究の結果、これらの要因をすべて理想的な状態にできたと仮定すると、
日本人全体のがんの発症は36%、がんによる死亡は41%も防げるという試算になりました。
性別で見ると、男性では発症43%・死亡50%、女性では発症25%・死亡27%が防げるとされています。
特に喫煙、飲酒、感染の3つが、がん全体のリスクの多くを占めており、これらをコントロールできれば大きな効果が期待できるということです。
一方で、運動や食事、体型などの要因は、がん全体に占める割合が比較的小さいとされています。
しかし、「小さい」とはいえ、それらの改善が健康全体に良い影響を与えるのは確かです。
この結果を聞くと、「じゃあ生活を完璧にすればがんにはならない」と思うかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
この研究が示した通り、防げるがんは全体の3分の1から4割程度。
残りの6割は、遺伝や偶然の要因によるものです。
つまり、「がんになった人が自分を責める必要はない」ということです。
がんは、誰にでも起こりうる病気なのです。
たとえ一度がんを経験した人でも、生活習慣を整えることで、再発のリスクを減らしたり、体調を良い状態に保ったりすることができます。
特に、禁煙や節酒、バランスのとれた食事、適度な運動は、がんの治療後の生活の質(QOL)を高めるうえでも重要です。
完璧な生活を送る必要はありません。
たとえば、
そんな小さな工夫の積み重ねで十分です。
続けることが、最も確実ながん予防になります。
がんの原因のすべてを取り除くことはできません。
それでも、日本人のがんのうちおよそ4割は防ぐことができる——これは希望の数字です。
生活習慣の改善や感染予防は、がんだけでなく、心臓病や糖尿病など他の病気の予防にもつながります。
「できることから、少しずつ」。
その意識の積み重ねが、将来の自分の健康を守る第一歩になるのです。