私たちの食卓に欠かせないメニューのひとつが「揚げもの」です。
カラッと揚がった唐揚げやとんかつ、フライドポテトなどは、子どもから大人まで人気の高い定番料理です。最近では、コンビニやファストフード店でも手軽に購入でき、忙しい日の食事としてつい手が伸びてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、昔から「揚げものは体に良くない」と言われることがあります。太る、コレステロールが上がる、といった話はよく耳にしますが、「がん」との関係についてはどうでしょうか?
今回は、揚げものとがんのリスク、そして近年注目されている「AGE(終末糖化産物)」という物質との関係について、最新の研究結果をもとにご紹介します。

2019年にイギリスの医学誌『British Medical Journal』に掲載された研究では、アメリカの50〜79歳の女性約10万人を対象に、「揚げものを食べる頻度」と「がんによる死亡リスク」との関係が調査されました。
研究で対象とされた食品には、フライドチキン、フライドフィッシュ、フレンチフライ、ポテトチップス、トルティアチップスなど、私たちにとっても身近なものばかりが含まれています。
驚くことに、揚げものを食べる頻度と「がんによる死亡リスク」には明確な関係が見られませんでした。
つまり、揚げものを食べたからといって、直接的にがんが増えるという証拠はなかったのです。
一方で、すべての原因による死亡率や心血管疾患による死亡率は、揚げものの摂取が多い人で約10%高くなることが分かりました。
これはつまり、「がんではないけれど、心臓や血管の病気など他の健康リスクが高まる可能性がある」ということです。
ここで注目したいのが、揚げものに多く含まれる「AGE(エージーイー)」という物質です。
正式には「Advanced Glycation End Products(終末糖化産物)」と呼ばれます。これは、糖とタンパク質、または脂肪が高温で加熱されることでできる物質のことを指します。
AGEは、食材を焼いたり、揚げたり、炒めたりする調理過程で大量に発生します。特に、高温で長時間加熱する揚げものはAGEの発生量が多いことで知られています。
このAGEが体内に蓄積すると、血管や臓器に悪影響を及ぼすと考えられています。
AGEには、以下のような性質があります。
つまり、「揚げもの=高カロリーで太る」だけでなく、「AGEの摂取が体の中で悪影響を及ぼす」という点が健康面での大きな懸念なのです。
2020年に医学誌『Cancer』に報告された研究では、アメリカの閉経後女性約18万人を対象に、食事から摂取するAGEの量と乳がんの発症リスクとの関係が調査されました。
結果として、最も多くAGEを摂取していたグループでは、最も少なかったグループに比べて乳がんの発症リスクが9%高くなっていたことがわかりました。
さらに、がんが進行したケースに限定すると、そのリスクは37%も高くなっていたというのです。
これは、「AGEが多い食生活が、がんの進行を促す可能性がある」ことを示唆する非常に重要な結果です。
2024年6月には、日本人を対象とした研究結果が『Cancer Science』という学術誌に報告されました。
この研究では、3万人以上の日本人を10年以上追跡し、食事中のAGE摂取量とがん発症リスクとの関係を分析しました。
結果として、全体のがんリスクには明確な増加は見られませんでしたが、男性では肝臓がんのリスクが2倍以上に上昇していました。
一方、女性では乳がんとの関連が強いという結果が報告されており、男女で影響する臓器が異なる可能性が示唆されています。
これらの研究結果を総合すると、「揚げもの=がんの原因」という単純な関係ではありません。
ただし、揚げものを頻繁に食べることで、心臓病や糖尿病といった生活習慣病のリスクが上がることは確かであり、そこから二次的にがんのリスクが高まる可能性もあります。
また、AGEは揚げもの以外にも、焼き肉、ベーコン、ソーセージ、レトルト食品など、多くの高温調理食品に含まれています。
ですから、「揚げものを完全に避ける」というよりも、食べる頻度を減らし、調理法を工夫することが大切です。
AGEの摂取を減らすには、調理方法や食材の選び方を工夫するだけでも効果があります。
以下のようなポイントを意識すると良いでしょう。

揚げものは食卓を豊かにしてくれる料理ですが、過剰な摂取は健康への負担につながります。
研究によれば、がんそのもののリスクを大きく高めるわけではありませんが、AGEの摂取を通して乳がんや肝臓がんなど一部のがんのリスクが上昇する可能性が示されています。
「AGEを減らす食べ方を意識する」ことは、がんの予防だけでなく、動脈硬化や糖尿病、老化の抑制にもつながります。
揚げものを完全にやめる必要はありませんが、週に1〜2回程度に控える、調理法を変える、油の管理をするといった工夫で、健康的においしさを楽しむことができるでしょう。