採血や処置を行う際、患者さんが突然「気分が悪い」と訴える場面に遭遇することがあります。これが迷走神経反射によるものかもしれません。
迷走神経反射は、適切に対応することで大事に至ることを防げますが、看護師としては速やかに対応し患者さんの不安を軽減する必要があります。
今回は迷走神経反射のメカニズムと、看護師としての対応法について詳しく解説します。

人間の体は、 交感神経 と 副交感神経 の2つの自律神経によって調整されています。
• 交感神経: 活動中や緊張時に優位となり、心拍数や血圧を上昇させる。
• 副交感神経: リラックス時や休息中に働き、心拍数や血圧を低下させる。
迷走神経は副交感神経の一部で、体内の環境をコントロールする役割がありますが、時に過剰に反応してしまうことがあります。これが迷走神経反射です。
迷走神経反射では、心拍数や血圧が急激に低下し、失神などを引き起こすことがあります。

迷走神経反射は、強いストレスや疼痛などが引き金となり、 迷走神経 を介して脳幹部の血管運動中枢が刺激され、次のような症状を引き起こします。
1.前駆症状
o 血の気が引く感じ
o 冷や汗
o めまい
o 吐き気や頭痛
2.反射症状
o 心拍数の低下(徐脈)
o 血圧の低下(低血圧)
o 意識消失(失神)
迷走神経反射は一時的なもので、ほとんどの場合は重大な後遺症を残しません。しかし、適切な対応を怠ると転倒や頭部外傷などのリスクが生じるため、速やかな初期対応が必要です。

迷走神経反射は、以下のような場面で起こりやすいとされています。
• 採血や注射(特に緊張しているとき)
• 痛みを伴う処置(縫合やドレナージなど)
• 排せつ時のいきみ
• インフォームドコンセント中の強い緊張
• 恐怖やショックを伴う出来事
患者さんが緊張している場合や、痛みやストレスを強く感じているときは特に注意が必要です。
※臨床では迷走神経反射のことを「ワゴる」「ワゴった」と表現することがあります。これは、迷走神経緊張症を意味する英語「vagotony」をドイツ語読みしたことに由来するといわれています。

迷走神経反射が起きた場合、慌てずに次の手順で対応しましょう。
1.仰臥位で下肢挙上
患者さんを 仰臥位(あおむけ) にし、下肢を挙上します。これにより、下肢の血液が心臓に戻り、血圧が回復して脳への血流が改善します。ほとんどの場合、この対応だけで症状が改善します。
2.バイタルサインの確認
症状が続く場合は、血圧や心拍数を測定し、全身状態を確認します。必要であれば心電図モニターを装着し、不整脈や異常を早期に発見します。
3.静脈路の確保
意識が回復しない場合や全身状態が不安定な場合は、医師に報告し、静脈路を確保して輸液療法を開始します。
4.頭部や身体の外傷確認
失神した際に転倒していれば、頭部や身体に外傷がないか確認します。特に頭部打撲がある場合はCT検査などで詳細に確認する必要があります。
5.必要に応じた薬剤の使用
医師の指示のもと、心拍数の低下が著しい場合には アトロピン を投与することがあります。アトロピンは迷走神経の過剰な作用を抑え、心拍数を回復させる薬剤です。ただし、緑内障や前立腺肥大症の患者さんでは禁忌とされているため、慎重に使用する必要があります。

1.患者さんへの説明
迷走神経反射は生命に重大な危険を及ぼすものではないことを説明し、不安を和らげましょう。また、次のポイントを指導します。
• 緊張を和らげる方法(深呼吸や脱力法)
• 採血時や処置中はリラックスした体勢をとる
• 前駆症状を感じたらすぐに報告する
2.環境の調整
採血や処置中は、できるだけ患者さんがリラックスできる環境を整えましょう。椅子ではなくベッドに寝かせて行うことで、転倒リスクを減らすことができます。
3.看護師としての注意点
• インフォームドコンセントの際は患者さんやご家族の表情や態度を観察し、必要に応じて休憩を挟む。
• 前駆症状を早めに察知し、状況に応じた対応を取る。
1.迷走神経反射 は副交感神経が過剰に反応し、心拍数や血圧が低下することで起こる。
2.症状は 仰臥位で下肢挙上 するだけでほとんどの場合は改善する。
3.状態が改善しない場合は、バイタルサインの確認や静脈路確保、薬剤投与を検討する。
4.患者さんの不安を軽減し、緊張を和らげる対応が再発防止につながる。
迷走神経反射は一時的な反応ですが、対応を誤ると転倒や外傷などにつながる可能性もあります。
新人看護師の皆さんも、この対応法をしっかり覚えて現場で活用してください!