がん治療を受けている多くの方が、吐き気や食欲低下で「ほとんど食べられない」時期を経験します。患者さんやご家族からは、「治療中なのにご飯を食べられなくても大丈夫でしょうか?」という不安の声がよく寄せられます。
以前は「治療中こそしっかり食べて体力をつけるべき」と考えられており、少し無理をしてでも食べたほうが良いと言われていました。

ところが近年、「抗がん剤治療の前後は、むしろ食事を減らしたほうが治療効果が高まる可能性がある」という驚きの報告が増えてきました。
ここでいう食事制限とは、長期間の厳しいダイエットではなく、治療前後の数日だけ行う“短期間の食事量の減少”です。いわばプチ断食に近いものです。
手術前に抗がん剤治療を行う乳がん患者さんを対象にした研究では、通常通りの食事をしたグループと、治療3日前からごく軽い食事にするグループを比較しました。
軽い食事の内容は、野菜スープなどの液体中心で、1日のカロリーは数百kcalというかなり控えめなものです。
結果は、
2022年に発表された別の研究では、5日間だけ食事をかなり減らし、その後20日間は通常の食事に戻すというサイクルをくり返す方法が紹介されました。
こちらでも危険な副作用は見られず、体の中で“がんと闘う力”が高まっていたことが確認されています。

食事を減らすと体は一時的に飢餓状態になります。
すると──
という違いが生まれます。
また、食べない時間が続くと、体の免疫の仕組みが刺激され、がんと戦う力が強まることもわかっています。
こうした“食事を減らす療法”は、まだ研究の途中であり、すべての人に安全とは限りません。
自己判断で取り入れるのは危険で、現時点では「誰にでもすすめられる方法」ではありません。
これらの研究からいえることは、
「治療中に数日間食べられない日があっても、必要以上に心配しなくてよい」
ということです。
食欲が落ちている時期に無理をして食べなくても、治療の妨げには必ずしもなりません。
短期間であれば問題ありませんが、長く食べられない状態が続くと…
といったリスクが出てきます。
治療の副作用が落ち着き、食欲が戻ったら、なるべく栄養価の高いものを取り入れることが大切です。
特に、体力や筋肉を守るためにタンパク質を意識して摂ると良いでしょう。

治療中の不安はつきものですが、「数日食べられなくても大丈夫」ということを知るだけでも、心の負担が少し軽くなるかもしれません。