最近、「プラズマ乳酸菌」という言葉をよく耳にするようになりました。とくに2020年頃から注目が集まり、いまではコンビニやスーパーでも多くの商品を見かけます。キリンが販売している「イミューズ」というシリーズはとても人気があり、サプリメントや飲み物など、さまざまな形で展開されています。
これらの商品には「健康な人の免疫の維持をサポートする」という表記があり、国が定める“機能性表示食品”として登録されているとのことです。機能性表示食品とは、健康に役立つ働きについて、きちんとしたデータに基づいて企業が表示してよいとされている食品のこと。つまり、何らかの研究で体に良い働きが確認された食品だという位置づけです。
とはいえ、これはあくまで“食品”であって、“薬”ではありません。病気の治療や予防効果をうたえるものではないため、その点には注意が必要です。では、話題の「プラズマ乳酸菌」とは、そもそもどういうものなのでしょうか?

プラズマ乳酸菌は、多くの発酵食品に含まれる一般的な乳酸菌とは少し違った特徴を持っています。いちばん大きな特徴は、「免疫の司令塔」とたとえられる特別な細胞を直接働かせることができるという点です。
人の体には、外からやってくるウイルスや細菌に対して防御する「免疫」の仕組みが備わっています。その中に、“プラズマサイトイド樹状細胞”という特殊な働きをする細胞があります。名前は難しいですが、簡単にいうと、体の免疫全体を動かすスイッチの役割を持つ存在です。
一般的な乳酸菌は腸の環境を整えることで間接的に免疫を助けますが、プラズマ乳酸菌はこの「免疫のスイッチ役」に直接働きかける点が大きな特徴です。この細胞が活発になると、ウイルスから体を守る力が上がると考えられています。
では、人を対象とした研究ではどのような結果が出ているのでしょうか?
キリンの公式サイトではこれまで行われてきた研究が紹介されています。
・プラズマ乳酸菌をとったグループは、インフルエンザや風邪にかかる人がやや少なかった
・のどの痛みや咳などの症状が軽くなる傾向があった
・運動部の学生を対象とした研究では、強い運動のあとに感じる“疲れ”の日数が少し減った
こうした報告があります。ただ、実際の論文を読んでみると、劇的な効果というよりは「風邪の症状が少し軽くなる」「疲れが少し減る」といった、“穏やかなサポート”という印象です。過度な期待はしないほうがいいでしょうが、日々の体調管理を手助けする働きはあるといえそうです。

ここからが多くの方が気になるポイントだと思います。
結論から言えば、現時点では、がん患者さんを対象にしたプラズマ乳酸菌の研究は行われておらず、がん治療を助ける効果があるとは言えません。
つまり、「がんに効く」「がんが治る」といった根拠はありません。
ただし、完全に無関係とも言い切れない理由があります。
先ほど述べた“プラズマサイトイド樹状細胞”という免疫のスイッチ役は、ウイルスだけでなく“がん細胞”に対しても重要な働きをすることが分かってきているためです。この細胞を使った「がんワクチン」の研究も進んでおり、2020年には皮膚のがん(メラノーマ)の患者さんを対象にした初の臨床試験が報告されました。
この研究では、治療後にがんを攻撃する免疫細胞の反応が高まったという結果がみられました。もちろん、プラズマ乳酸菌そのものが同じ効果をもたらすかどうかは全く別の話です。ただ、免疫の仕組みに関わるという点から、将来的に何らかの可能性があるのではないかと考える研究者もいるようです。
あくまでも“仮説の段階”であり、はっきりした答えはこれからの研究次第です。
プラズマ乳酸菌に限らず、がんの治療を受けている人には「腸の環境を整えること」がすすめられることがあります。なぜなら、腸は“第二の脳”とも呼ばれるほど重要で、腸内環境が整うと体力・免疫・便通・気分などに良い影響が出やすいからです。
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、それらのエサになる食物繊維を日常的に摂ると、腸の調子が整って、食事がとりづらい時期でも体を支える力になります。
たとえば……
・ヨーグルト
・味噌、納豆、漬物などの発酵食品
・野菜や果物、海藻などに含まれる食物繊維
こうした食品を毎日少しずつ取り入れるだけでも、腸内環境は変わっていきます。
がん治療中は体の負担が大きく、食欲が落ちたり、疲れやすくなったり、免疫力も揺らぎがちです。腸内環境を整えることは、副作用への耐性や体調管理のうえでも役立つと考えられています。

ここまでのお話を一度整理してみましょう。
● プラズマ乳酸菌は免疫全体のスイッチ役に働きかける特別な乳酸菌。
● 風邪の症状を軽くする、疲れを減らすといった穏やかな効果が報告されている。
● ただし“がん患者さんを対象にした研究はまだなく、がんに効くとは言えない”。
● 腸活として取り入れる分には良いが、治療効果を期待して摂りすぎるのはおすすめできない。
つまり、プラズマ乳酸菌ががんに役立つかどうかは、今のところまだはっきりしないというのが現状です。
しかし、普段の生活で腸内環境を整える意味で取り入れるのであれば、大きな問題はありませんし、体調管理の助けになる可能性はあります。
何より大切なのは、サプリメントだけに頼りすぎず、毎日の食事や生活習慣、主治医の治療方針を大事にすることです。
プラズマ乳酸菌はあくまでその“補助として”うまく活用するのが良いのではないでしょうか。