私たちが何気なく行っている
「腕を挙げる」
という動作。
その裏側では、肩の骨・筋肉・靭帯が複雑に
連動し、緻密なバランスを保ちながら動いています。
肩は人間の関節の中でも特に可動域が広く、その動きは
全身の関節でもトップクラスの自由度を誇ります。
本記事では、肩の基本構造から、腕がどのような仕組みで挙がるのか、
そしてその動きを支える筋肉までをやさしく丁寧に解説します。

一般に「肩」と呼ばれる部分は、実はひとつの関節だけではありません。
肩は大きく分けて次の2つの構造から成り立ちます。
肩甲骨の「関節窩」と上腕骨の「骨頭」で構成される球状の関節です。
大きく動く能力に特化しており、前後・左右・回転といった多様な動きが可能です。
肩甲骨と鎖骨でつくる帯状の構造で、胸郭(肋骨)に乗るように配置されています。
肩甲帯は肩関節の土台の役割を果たし、肩全体を支えるベースとなっています。
肩の動きを考えるとき、この
「肩関節」と「肩甲帯」が連携して動く点がとても重要です。
腕を上へ挙げるとき、動いているのは上腕骨だけではありません。
実は、肩甲骨も同時に動いて角度を調整しながら、腕がスムーズに
挙がるようにサポートしています。
この動きの比率を「肩甲上腕リズム」と呼びます。
腕が3度動くうち、
たとえば腕を90度まで挙げたとすると、
これは肩の正常な動きには不可欠なリズムで、
肩甲骨が適切に動かないと腕はうまく挙がりません。
腕が滑らかに挙がるためには、次の4つの骨が協調する必要があります。
これらがチームのように連携し、はじめて
自由自在な腕の動きが実現します。

肩の骨格は、他の関節とは異なる特徴があります。
肩甲骨には「関節窩」というくぼみがありますが、これは非常に
浅く、上腕骨の骨頭は半分以上外に出ているような状態です。
この浅さのおかげで自由度の高い動きが可能になりますが、
反面、不安定で脱臼が起きやすい構造でもあります。
鎖骨は「肩甲骨の動く土台」として重要な役割を果たし、
肩を前後へ動かしたり、腕を上げた時に上方へ引き上げたりします。
肩の動きには数多くの筋肉が関与します。
肩を覆うもっとも目立つ筋肉が三角筋です。
など、大きな動きを担当します。
肩の奥には、薄い筋肉が重なっており、
肩甲骨と肋骨の間にも微細な筋肉が存在します。
これらは肩の安定性を保つうえで欠かせません。
肩の深層に位置する「腱板(けんばん)」は、肩を安定させるための重要な筋群です。
腱板は次の4つの筋肉から成ります。
腱板は「肩のブレーキ」とも言える存在で、三角筋のように強い力で
動かすのではなく、関節を支えて滑らかに動くように調整してくれます。

肩関節は、人体でも最大の可動域をもつ関節であり、その動きは非常に多様です。
これらの動きのどれをとっても、肩甲骨・鎖骨・上腕骨・肋骨が連携し、
周囲の筋肉が協調することでスムーズに実現されています。
肩は、ただ腕を動かすための関節ではなく、多くの
骨・筋肉・関節・靭帯が組み合わさった複合的な構造体です。
これらが揃うことで、私たちの日常生活に欠かせない
「腕の自由な動き」
が実現しています。
肩の理解が深まれば、スポーツ動作やトレーニング、
肩の不調の原因の理解にも大いに役立ちます。